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“虐待”を軸にしたドラマ版『ミスなか』、「当事者への配慮」は十分だったのか?

文=東海林かな(しょうじ・かな)

“虐待”を軸にしたドラマ版『ミスなか』、「当事者への配慮」は十分だったのか?の画像
ドラマ公式サイトより

 当事者にとってショッキングな描写は、もっと慎重に配慮されるべきだろう。

 菅田将暉主演のフジテレビ系月曜ドラマ『ミステリと言う勿(なか)れ』の第10話が3月14日に放送された。「ファイナルエピソード(episode final)」と銘打たれていた第10話を終えて、今夜放送の第11話では、初回終盤から第3話まで登場していた犬堂我路(永山瑛太)の物語が再び動き出す。我路は妹の愛珠(白石麻衣)がなぜ死んだのか、その真相を求めて「ジュート」という人物を追っていた……。

 視聴者のなかには「最終回でないにもかかわらず、第10話はなぜ『ファイナルエピソード』なのか」と疑問に思っていた人もいたが、第11話の予告動画を見るに、これまで整が紐解いてきた『ミスなか』のストーリーとは雰囲気がガラリと異なっていた。猟奇的な連続殺人が絡み、活躍するのは原作でも人気の我路に加え、大隣警察署の青砥成昭(筒井道隆)や風呂光聖子(伊藤沙莉)ら。「スピンオフ」のようなストーリーになりそうで、つまり整自身の物語は先週で完結したということなのだろう。第11話は「episode 2.5」と銘打たれているように、時系列上では、我路が登場した第3話までの「episode 2」(バスジャック事件)と、第4話の「episode 3」(記憶喪失の男)の間にあたる話だ。第3話で整(菅田将暉)の前から姿を消した我路はその後こんなことをしていた、という見せ方になるのではないか。

 10話を区切りに振り返ってみれば、ドラマ版『ミスなか』は虐待を軸にストーリーが構成されていたように思う。第1話で整の首もとにのぞいた傷にはじまり、第5~6話では元虐待児である井原香音人(早乙女太一)と下戸陸太(岡山天音)の「炎の天使」編が取り上げられた。この事件と同時期に整は病院でライカと名乗る女性(門脇麦)と出会うが、第10話では、ライカが実は幼少期に父親から性的虐待を受けていた音無千夜子という女性が生んだ別人格のひとりであること、千夜子が井原香音人に「親殺し」を依頼した虐待児のひとりだったことが明らかになり、さらに主人公の整も過去に虐待に遭っていたらしいことが示唆された。

 残念なことに、虐待はニュースでも頻繁に報じられる話題であり、ドラマでも描かれたように、暴力が去ったからといって簡単に苦しみが終わるというものではなく、その後も苦しみ続けているという人は多い。ドラマの展開について大多数の視聴者からは「つらすぎる」「整くんとライカちゃんの別れが切なかった」「ボロ泣きした」と受け入れられていたようだが、一部では「せめて冒頭にだけでも『性的虐待についての描写があります』の一文くらい入れてもいいんじゃないのか」「やめてくれ、せっかく忘れたいのに思い出す」といった声も上がった。センシティブな内容なだけに、配慮が足りなかったのでは、という意見だ。

 例えば東日本大震災以来、津波の映像が流れる直前には注意書きがされるようになった。当事者にとってショッキングな映像、トラウマを思い起こさせるような描写を入れる際には、ワンクッションあってしかるべきという配慮だ。昨今、映画やドラマでそういった対応を取ることは珍しくない。日本では3月11日に全国公開となった映画『THE BATMAN-ザ・バットマン-』について公開前に配給会社が「水害のシーンが一部含まれております」とSNSで注意を促したことも記憶に新しい。また、アロマンティック・アセクシュアル(恋愛的・性的に他者に惹かれないこと)の男女が主人公の今期ドラマ『恋せぬふたり』(NHK総合)では、性行為を思わせるシーンが登場する回の冒頭に「ドラマの中で性的接触の描写があります。あらかじめご留意ください」との注意書きが提示されていた。創作とはいえ、単にエンタメとして消費してはいけない問題を扱うならば、当事者が目にすることも意識した、こうした誠実な対応は求められるところだろう。

 他人はフィクションとして捉えられても、当事者にとっては辛い記憶を呼び起こすものとなりかねない。虐待という重いテーマを扱うのであれば、そしてそれがドラマの軸となっているのならば、もっと慎重になるべきではなかっただろうか。

■番組情報
月曜ドラマ『ミステリと言う勿れ』
フジテレビ系毎週月曜21時~
出演:菅田将暉、伊藤沙莉、尾上松也、門脇麦、白石麻衣、鈴木浩介、筒井道隆、遠藤憲一 ほか
音楽:Ken Arai
脚本:相沢友子
プロデュース:草ヶ谷大輔、熊谷理恵(大映テレビ)
演出:松山博昭、品田俊介、相沢秀幸
主題歌:King Gnu 「カメレオン」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作・著作:フジテレビ 第一制作部
公式サイト:fujitv.co.jp/mystery

東海林かな(しょうじ・かな)

東海林かな(しょうじ・かな)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

最終更新:2022/05/17 15:02

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