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蛭子能収と、全然気を使わない有吉弘行の距離感とらしさ「じゃあ渋谷辺りで、夏に」「ありがとう、本当に」

蛭子の絵を見て爆笑する有吉

 庭の縁側で2人はお茶を飲むことに。日に当たって休憩を取るのだ。

有吉 「俺、蛭子さんぐらいの歳になると、落ち着いてみんなに尊敬されるようなおじいさんになれるかなと思ったけど、無理でしょうね。子どものまんまでしょうね」
蛭子 「でも、そっちはわかりません。俺はそうなるかもわかりませんけど」
有吉 「蛭子さん、尊敬はできないけど、気軽に付き合えていいなとは思います」
蛭子 「ああ、そうそう。気軽なおじさんがいいね。それが1番いいなあと思います、本当に。気軽なおじさん、それが1番だよ」
有吉 「1番気軽な70代ですね、僕の中で」
蛭子 「そのほうが本当いいと思いますよ」

 前回のロケより有吉が蛭子に気を使っていないように見える。「尊敬できない」と言ったり、池に落とす振りをしたり、こんなにぞんざいに接することができる70代は、確かに他にいないだろう。

有吉 「蛭子さん認知症になっちゃったけど、でも全然、なんか僕普通、いつも」
蛭子 「俺も全然なったっていう感じしませんね。たぶん、なってないと思う」
有吉 「ハッハッハ! そうだね、本人はそうですよね(笑)。僕らもまったく、そんな感じは」

 もともと、蛭子のキャラクターはこんな感じだったし、言葉が出ずに詰まることなんて70代ならよくある。意識もしっかりしているし、認知症っぽくは感じない。

有吉 「前回、僕、結婚したばっかりで蛭子さんに夫婦の似顔絵描いてもらったんですよ。(前回の似顔絵は)似てないし、下書きも消してないし(笑)。でも、嬉しくて、額のお店に行っていい額に入れて今、家に飾ってます」
蛭子 「あ、本当ですか? ああ、良かった」

 絵を贈ったことを蛭子が覚えているかは、わからない。「覚えてますか?」とは確認せずに、有吉は蛭子に提案した。

「僕、また蛭子さんの絵を見たいし、僕も下手なんですけど絵を描くのが好きだから、お互い似顔絵でも描きませんか? たまにはペン持ってくださいよ。嫌じゃなければ」(有吉)

「嫌じゃなければ」「たまにはペン持ってください」という背中の押し方で、蛭子に絵と向き合ってもらおうとする有吉。蛭子の返答は「いいですよ」だった。

蛭子 「ただ、似てない……」
有吉 「似てないのは知ってます(笑)」

 気軽に描けるよう、ハードルを下げる有吉。年上と絡むときのほうが、有吉はらしさが全開となる。

 2人は真剣な表情でペンを握り、画用紙に絵を描き込んでいった。2月28日放送の同番組にて有吉は漫画家・甘詰留太の元を訪れ、漫画の描き方を指導してもらっている。もしかして、このロケのための修業だった? 一方の蛭子を見ると、筆の持ち方はまだそれっぽい。ガロで名を馳せた頃、素性が知られる以前の蛭子には「シュールで突飛な発想をする、狂気の天才肌」というイメージがあった。

 最初に絵を公開したのは有吉のほうである。これが思った以上にうまいのだ。というか、うまくなっている。芸人として売れない頃、漫画家を目指したこともある有吉。漫画家への敬意を少なからず抱いているのだろうか?

 続いては、蛭子が絵を公開する番だ。彼が描いた有吉の似顔絵は、うまくなかった。半年前は蛭子独特のタッチがまだ残っていたが、それも完全になくなっていた。絵を描くために必要なのは観察力、認知機能だ。散歩中は「前回よりも調子は良さそう」と思っていたけれど、絵を見た瞬間に胸が締め付けられた。

「めちゃめちゃ可愛い、ハハハハ! 作風変わりましたね。なんか、今っぽいっすよ。昔より細かいです。丁寧になってます。まったく似てないですけど。ハッハッハッハ!」(有吉)

 もし自分があの場にいたら、どう反応していただろうか? 絶句して、言葉を返せなかったかもしれない。有吉は本当にうまくイジっていた。蛭子の絵からいいポイントをちゃんと気付けていたところも、素敵だった。

遠くない未来の再会を約束する

「有吉と蛭子さん2022春」は、これにて終了。別れの間際に交わすのは、次回の約束だ。

有吉 「今は3月ですけど、次はどうですか? 夏は暑いですけど、1回またお会いできたらいいなと。ギャラ払いますんで」
蛭子 「(満面の笑み)」
有吉 「笑いが止まんないじゃないですか、本当に(笑)」
蛭子 「ありがたい、本当にそれはもう」

 ギャラと聞き、ニマニマ顔で喜ぶ蛭子。まだまだお金は大好きである。そんな蛭子に、夏という短いスパンで目的を与えてあげる有吉。次の約束、未来の予定があるとお年寄りは嬉しいらしい。「だから、元気でいてくださいね」というメッセージを込めていたのかもしれない。

有吉 「なんかないですか? (次のロケで)やってみたいとか、食べてみたいとか」
蛭子 「あの、うるさいようなところが好きです」
有吉 「そうですか! やっぱり、街がいいんですね。新宿、渋谷、六本木?」
蛭子 「やっぱり、渋谷かなあ」
有吉 「ハッハッハ! じゃあ、渋谷辺りで、夏に」
蛭子 「ありがとう、本当に」

 有吉は蛭子が現場で仕事できるようにさせてあげたがっている。「本人が仕事をしたいのなら、元気でやってほしい」と有吉は言っていた。この日、蛭子の口から有吉に「有吉君」と呼びかけることは1度もなかった。テレビに出なくなったら、病気は進行しかねない。だから、シーズン毎に会う。次の渋谷編は今までとは違った内容になりそうなので期待大だ。

「女性自身」2020年8月18日・25日合併号のインタビューで、蛭子は有吉について言及している。

「有吉さんは、テレビの世界での昔からの仲間。オレが認知症になる前からオレを取り上げて、無料で宣伝してくれます。きっとオレのことが好きなんでしょうね。本当は会ってお礼をしたほうがいいでしょうけど、オレは話すのが苦手だから。有吉さんが勝手に話してくれて、オレは黙ってるだけでいいんなら別に会ってもいいですけど……、やっぱり、『また会いたいな』ということにしてください」

 ロケの最中、事あるごとに蛭子は「ありがとう」と口にしていた。

 VTRが終わり、スタジオの出演者たちからは「心が洗われました」「2本目のギャラクシー賞、あるんじゃないですか?」というコメントが続出した。そういう番組として大団円を迎えてもいい流れだ。

「蛭子さんの笑顔を引き出す俺の人柄もいじゃない?」
「普段は結構キツいこと言ってんだけど、ああいうのを見るといい人だなって思うだろ?」

 自分から言うことでその流れを潰し、プラマイゼロに戻す有吉のらしさが好きだ。

「有吉と蛭子さん」のロケは、あとどれくらい見られるだろうか? 次回も「都会が好き」と蛭子は言うだろうか? 回を重ねる毎に認知症は進み、いつか有吉のことがわからなくなるかもしれない。でも、本人と家族が出たいと言うのなら、そのときまで有吉は企画を続けようとしている気がする。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/06/02 13:24
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