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朝ドラWATCHコラム『ちむどんどん』第2週

『ちむどんどん』お金の問題はどこへ? ツッコミも間に合わない急展開(第2週)

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イラスト/渡辺裕子

 土曜日の放送でジョン・カビラさんが「怒涛の展開! 振り落とされないでください!」と言っていたけど、本当に勢いよすぎな第2週。

 『あさイチ』のゲストに早めに出た人は早めに退場する法則が今回も発動、予想通りにお父ちゃん(大森南朋)は急死。先週金曜日のラストで倒れて月曜日にはお葬式という、もうここからスピード展開。臨終の床で家族それぞれに言葉を残したお父ちゃんが、暢子にだけは「うん」しか言わなかったことを、暢子はそのままでいいという意味だと説明してくれる良子ちゃん、優しい。

 しかし「頑張って、立派な先生になれな」と遺言された良子も、それはそれでつらいんではないかと、逆に心配になります。「頑張って、なれ」の言葉は、祈りでもあり、呪いにもなりうる気もする。だって、良子が先生になるために進学できるようなお金があの家にあるとは思えないし。新しい体操服を買うための1ドル40セントさえ出せないのに。

 外で働くことになったお母ちゃん(仲間由紀恵)の日給は1ドル。食卓に並ぶおかずは乏しく、PTA会費も給食費も滞納、叔父さんたちは金を返せと迫る。とうとう過労でお母ちゃんダウン。お父ちゃんがいなくなったことをきっかけに、次々訪れる不幸、ノンストップ不幸。あまりに不幸な様子を見かねて「あの時、変なバンドではなく、必要なズックを買っておけばよかったのに」「豚のアベベを売ったらどうか」「運動会でたくさんのお弁当を作ったり、家にお客さん呼んで食事会するのはやめたらどうか」とか、何か言いたくはなるんだけど、そういう「未来の安定」よりも「今の楽しみ」を最優先しているのがあの家族なので、それを無くしたら、彼らにとっては生きていると言えなくなってしまうんじゃないかと思う。「今」を大切に生きると「未来」は後回しになる。

 東京の親戚から「子どもをひとり預かる」という手紙がきて(東京生活を想像してちょっとの間浮かれて、そのあとおじけづく兄妹がリアル)そりゃいい話だと視聴者的には思うけれど、それは、あの美しい場所で大好きな家族と暮らす「今」を手放して「未来」を取るということで、子どもには選べないよね……と思ったところで「うちが行く!」と立候補する暢子の姿に、泣いてしまった。泥だらけで働くお母ちゃんの姿を見たのはたぶん彼女だけ。そしてお父ちゃんから「家族を守れ」「先生になれ」「幸せになれ」と言われなかった、ニュートラルな立場。あの中で行くのは自分しかいない……って思っちゃうよね、そうだよね。笑顔を作ってるんだけど、じわじわと瞳に涙があふれてきて、唇もふるふると震え出す。暢子役の稲垣来泉さん、すごい役者さんですね。 1週目、毎日のように「ちむどんどんするー!」と言っていた暢子が、2週目、お父ちゃんが死んでからは一度も言わないんですよね。唯一「でーじ、ちむどんどんする」と言ったのは、東京に行くのが楽しみだとみんなに別れを告げる時。嘘のちむどんどん。はあ、健気。

 ……だからこそ! これだけ暢子の健気さで泣かせておいて、金曜日に「暢子は行かさない!」「今までどおり、ここでみんなで幸せになろうね」と言われてしまうと、えええーという気持ちには、なってしまうわけで……。感動的なBGMを流されても、びっくりして涙がひっこんでしまった。

 暢子から「手を繋ごう」と言われて「恥ずかしい」と断った和彦くんが、バスの中から家族を見つめる暢子の手を自ら握り「僕がついてる」と言った姿に、「和彦くん、よくがんばったねー!」とキュンとしたのに、暢子はその手を離してバスから降りてしまうし。彼女の荷物まで降ろしてあげる彼の気持ちを思うと……あのあとバスの中で恥ずかしくなって落ち込んでそうな気がする。

 「今までどおり」にしてたら返せないであろう借金はどうなるの、叔父さんはそれでいいの、親戚の人は準備もしていただろうに、飛行機のチケット払い戻しはどうしたのとか、ツッコむ暇もなく、物語はあっという間に7年後! 暢子役は黒島結菜さんに変わり、どうやら高校にも行けているらしい……お金の問題はどうやって解決したのか、月曜日に全部教えてほしいー!

■番組情報
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:黒島結菜、仲間由紀恵、大森南朋、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌ほか
作:羽原大介
音楽:岡部啓一、高田龍一、帆足圭吾
主題歌:三浦大知「燦燦」
語り:ジョン・カビラ
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:高橋優香子、松田恭典
広報プロデューサー:川口俊介、鈴木 葵
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/chimudondon

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

わたなべひろこ

最終更新:2023/02/04 23:40
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