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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.684

広瀬すず&松坂桃李『流浪の月』 恋愛とは異なる感情で結ばれた男女の新しい関係

広瀬すず&松坂桃李『流浪の月』 恋愛とは異なる感情で結ばれた男女の新しい関係の画像1
女児誘拐事件から15年、”被害者”の更紗(広瀬すず)は逮捕された文(松坂桃李)と再会する

 暗い夜空を、月は優しく照らしてくれる。いつも一定の距離を保ちながら、地球を見守り続けている。だが、そんな月の裏側は、まだ誰も見たことがない。2020年の「本屋大賞」を受賞した凪良ゆうの小説『流浪の月』(東京創元社)は、他人には知られたくない過去、見られたくない顔を持つ2人の男女を主人公にした繊細な物語だ。広瀬すず、松坂桃李が主人公を演じる映画『流浪の月』が、5月13日(金)より劇場公開される。

 更紗(広瀬すず)はファミレスでアルバイトをしながら、サラリーマンの亮(横浜流星)と平穏な同棲生活を送っている。そんな更紗を苦しめているのが、デジタルタトゥーだった。更紗は10歳のときに誘拐事件に遭い、犯人逮捕の瞬間を撮った映像がネット上で拡散され、消えることなく流され続けていた。事件のことを覚えている人たちからは「かわいそうな被害者」として更紗は見られ、大人になった今も更紗は息苦しさを感じている。

 15年前の事件で、女児誘拐犯として逮捕されたのは大学生の文(松坂桃李)だった。「ロリコン誘拐犯」と世間から大バッシングされた文だが、真相は異なる。当時の更紗(白鳥玉季)は親の都合で親戚宅に預けられ、中学生の従兄弟から毎晩のように性的虐待を受けていた。親戚宅に帰りたくなかった更紗は、公園で知り合った文がひとり暮らししている部屋に匿ってもらっていたのだ。

 更紗は何度も本当のことを説明しようとしたが、その度に「犯人に洗脳されてしまったんだね」と同情されてしまう。ストックホルム症候群に陥っていると思われていた。善意の持ち主である周囲の人々の優しさが、更紗をいっそう苦しめる。結婚を迫る亮とのセックスも、つらい性体験を持つ更紗には苦痛だった。無力だった少女時代と変わらず、大人になっても更紗は心が安らぐ場所を見つけることができずにいる。

 ある日、職場の同僚・佳菜子(趣里)に誘われ、更紗は隠れ家的なカフェ「calico」に立ち寄る。こだわりのコーヒーを淹れる口数の少ないマスターは、あの文だった。文の人生をめちゃくちゃにしてしまったという自責の念に囚われていた更紗だが、文の店に通わずにはいられなくなってしまう。

 世間を騒がせた「ロリコン誘拐犯」と、大人になった元被害女児の禁断の再会だった。

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