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道枝くんもビックリの名推理

ドラマ『金田一少年の事件簿』最大の謎――あの“トラウマBGM”に隠された音楽的暗号「7」に迫る

ドラマ『金田一少年の事件簿』最大の謎――あのトラウマBGMに隠された音楽的暗号「7」に迫るの画像1
『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)公式サイトより

「チャララランランランランララン」とネットやTwitterで検索してみると、ひとつの楽曲がヒットする。ドラマシリーズ『金田一少年の事件簿』の有名なBGM曲「the mysterious mallets」(作曲:見岳章)だ。

 KinKi Kids・堂本剛が1995年から97年にかけて出演した初代版や、山田涼介が出演した『金田一少年の事件簿Neo』(2014年)で使用されている同楽曲。この不気味な曲調がドラマの内容とあいまって、トラウマBGMとして記憶に刻まれている人も多いだろう。

※道枝くんドラマ版の「the mysterious mallets」アレンジはこちら(00:07~)

 
 現在放送中の、なにわ男子・道枝駿佑が主人公の金田一一(きんだいち・はじめ)を演じる新シリーズでは、同BGMのアレンジを新たにしたバージョン――BPM(テンポ)が14ほど早かったり、ディストーションギターやストリングスに音色が置き換えられていたり――を聴くことができる。このまさかのアレンジによってそこはとない軽妙さが加わり(※1)、一部ファンの間では「恐怖が半減する」「前のほうが好きです」という意見もあるようだ。

 とはいえ、オリジナルのメロディーに根本的な転換はなく、安定の「チャララランランランランララン」である。今回は、このBGMに隠された“謎”について、音楽的な考察――ならぬ推理をしていきたい。

金田一一の「ひょうきんさ」と恐怖映画へのオマージュ

 
 作曲者は、美空ひばり「川の流れのように」を生み出したことでも知られる見岳章氏。彼はオリジナルサウンドトラック『金田一少年の事件簿 サウンドファイル』(1996年)に記している。

“恐怖の表現は実に多種多様だ。(中略)今回の仕事の面白さは、そんな恐怖の表現、そして主人公はじめ少年の持つ天才性とひょうきんさをいかに増幅させるかにあった”

 この「ひょうきんさ」(※2)は、「the mysterious mallets」にも見られるものだ。

 前提として、本楽曲が「エクソシストのテーマ」として日本で発売された、マイク・オールドフィールド「Tubular Bells」のオマージュであることを確認しておこう。音楽的な構成や展開の一致はなにより、チューブラー・ベルがNHK『のど自慢』でおなじみの打楽器の名称であり、それを叩くスティックがマレット(mallet)なのだから、タイトルからして冗談だと考えられる。

 
 誤解されがちだが、特定の音楽を下敷きにした作曲方法は昔から存在する。現在も商業音楽は「リファレンス」と呼ばれる元ネタありき、または数曲の掛け合わせで発注されることが多い。ヒップホップにおいては「タイプビート」と呼ばれる、何かの曲に似たビートがネットで購入できるよう流通しており、それにラップを乗せたヒット曲もある。もちろん取り入れ方によってはただのパクリだし、クリエイティブでなくなる側面もあるが、既存曲の参照による創造は、れっきとした音楽制作の手法だ。

 現在プログレッシブ・ロックの名盤とされるアルバム『Tubular Bells』は、1973年5月25日に発表された。収録曲は「Tubular Bells Pt.1」「Tubular Bells Pt.2」の2曲で、ともに20分を超える大曲である。映画『エクソシスト』のテーマは「Pt.1」の前半だけを大胆にトリミングしたものだ。しかも作曲者のマイク・オールドフィールドに無断で使用したため、発売当時は謎の集団The Mystic Sounds(!)によるカバー版として販売されている。

 オリジナル版「Pt.1」の全体を聴けば、曲調は壮大で、恐怖映画のサウンドトラックとは到底思えない。マイク・オールドフィールドも「ホラー映画のサウンドトラック」という意図とは異なる形の売れ方をしたことについて、苦い想いを抱いたようだ。しかし、結果的に編集は恐怖演出としては成功だったといえる。イントロ以外が明るいハウスミュージックになっているといえばHⅡH「feels like “HEAVEN”」(映画『リング』の主題歌)も同様だが、素材のどこを切り出すかによって、これほどにも楽曲の印象は反転してしまう。それがトリミングの魔法なのだ。

 さて「Tubular Bells」にインスパイアされて生まれたであろう音楽は数多い。それらが参照するのは主に繰り返されるミニマルミュージック的な旋律、ピアノやグロッケンによる楽器編成や音色で、リズムを露骨にトレースすることは少ない。このリズムはテクニカルに表現すると7/8+8/8(=15/8)が繰り返される交互拍子である。日常的に耳にする3や4ではない変拍子系なので、ぜひ7と8の周期を数えながら「Tubular Bells」を聴いてほしい。さすがにメロディに加え、ユニークなリズムまで拝借したら「まんまやん」となるに決まっているし、複雑になりすぎるので手を出しにくい気持ちは理解できる(そこにあえて挑んだ曲も存在するが)。

※「Tubular Bells」の持つミニマルミュージック的な旋律、サウンドや音色、リズムなどの構造からインスパイアされたと思しき音楽をまとめた、筆者作成のプレイリスト。 

 
 それに関しては「the mysterious mallets」も同様だ。元ネタからの引用はメロディやサウンドの質感がメインで、リズムに関して参照されているのは変拍子という点のみである。「the mysterious mallets」の拍子は7/8拍子。元ネタの7/8+8/8から8/8を削った形だが「Tubular Bells」インスパイア系で、この拍子を選択する作品はめずらしい。

 一体なぜ本楽曲は、このリズム設定に至ったのか。言い換えると、なぜこの曲は「チャララランランランランラランラン」などの4拍子系ではなく、「チャララランランランランララン」なのだろうか――?

 ここから先は、筆者による祖父の名をかけた一世一代の推理である。 (【1/2】 2ページ目はこちら

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