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コロナ禍で変化する音楽ビジネス

山下達郎は違っても…ベテランアーティストがサブスク解禁する裏事情──音楽業界の現在地

“ベテランアーティストは事務所が原盤権を管理しているのがほとんど”

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「何このビーズとかいうおっさんデュオ!? 超イケてんじゃん!」と、若者の間でレジェンドたるスタイルを(ようやく)サブスク解禁によって見せつけたB’z(写真:Daniel Boczarski/Redferns via Getty Images)

 ここで視点を変え、サブスク時代ならではの作品リリース形態の変化について見てみよう。レコードやCDが中心であった時代は、アルバムこそが絶対的な存在であったが、サブスクではシングルリリースが中心となり、“アルバム”の定義も変化してきたという。A氏が語る。

「昔は『8曲以上を収録して、分数は60分以上』といった暗黙のルールのようなものがアルバムには設けられていて、それ以下はミニアルバム、EP、マキシシングルといった形で分けられてきました。しかし、今では4曲入りのアルバムもリリースされていて、一昔前とはまったく異なる代物になってきている。CD全盛期は、いかに収録曲を多くし、お得感を打ち出すかが課題でしたが、今ではシングルに2曲収録することすら避ける時代です。1曲ずつリリースしたほうがユーザーに発見される確率が上がり、有力なプレイリストに選ばれる可能性も高まる。究極をいえば、12曲収録のアルバムを発売するより、12曲のシングルを1年かけてリリースするほうが賢明です」

 さらにA氏は「アーティストがリリースしたいときに曲を発表できる」こともサブスクの大きなメリットと話す。「曲が完成したら即リリース」というスピード感が今の時代ならではだが、B氏は「若手アーティストの深刻なCD離れ」の理由がそこにあると考えている。

「流通に乗せて大手CDショップに卸すとなると、3~4カ月前から進行し、受注作業の準備をしておかなければならない。今の若い子たちは出来上がったらすぐに出す(配信)というスタイルだから、曲をリリースするために要する3~4カ月の準備期間に意義を見いだせないんです。その結果、『CDで出さなくていいです』という思考になるのも当然です」

 ベテランと若年層の考え方の違いが如実に表れるエピソードだが、そんなCDに固執していた世代も冒頭で述べた通り、サブスクでの配信を解禁した。2020年から2021年にかけてはB’z以外にも松田聖子、小泉今日子、久保田利伸、大瀧詠一などが話題となったが、その解禁の裏事情をD氏は次のように語る。

「彼らのようなベテランアーティストは事務所が原盤権を管理しているのがほとんどなので、ようやく重い腰を上げたということでしょう。すでに数万単位のファンベースが出来上がっているアーティストは、CDをリリースすれば一定数は確実に売れるので、もしサブスクを解禁すればCDの収益が入ってこないという危惧があった。さらには『ファンはCDを購入したいはず』という幻想をいまだに抱いている。しかし、コンスタントに作品をリリースできているわけでもないし、ファンは過去にリリースしたシングルやアルバムをすでに所有しています。であれば、過去のカタログだけでもサブスクで解禁し、再生回数で利益を得たほうが得策だと判断したのでしょう。

 今回のB’zの解禁は、サザンオールスターズや松任谷由実さんのときよりも、旧態依然とした業界に与えた衝撃はとてつもなく大きかったように思います。これはジャニーズに限らず、いまだに配信を拒絶しているアーティストや事務所にもいえることですが、このままの姿勢を貫いていたら、ネットネイティブの若者たちからは“存在しないアーティスト”と思われてしまいます」

 一方で、一部のベテランアーティストが配信に抵抗している理由のひとつに“音質問題”が挙げられている。現在のサブスクの音質クオリティについてD氏が話す。

「2021年6月からApple Musicがロスレスオーディオ【編註:レーベル、もしくはアーティスト自身が納品するオリジナルの音源と、ほぼ遜色ない品質で聴くことができる】での配信を開始しました。素人耳ではどこまで違いを感じられるか未知数ではありますが、こうしたロスレス化に対応となれば、現在は一部のみ解禁となっている山下達郎さんのすべて音源が解禁となる可能性もある。山下さんは奥さんである竹内まりやさんの作品がサブスク解禁となった際、カリフォルニアにあるアップル本社にて『Apple Digital Mastersが目指していることには、基本的には賛同しています。こういう形(音質改善)のクリエイティビティは未来に向けての重要な作業。ただ欲を言えば、生まれて以来ずっとアナログで育ってきて、この35年間はCDの音質をアナログに近づけるために格闘してきた自分としては、よりガッツのあるロックンロール的グルーヴを実現していただきたい』とコメントを発表しています。ロスレス化を機に全作品が配信されれば、国内のファンだけではなく、世界中のヤマタツフリークが大騒ぎすることになるでしょう。Spotifyも追随すべく、〈Spotify HiFi〉と冠したロスレス配信を今年中にスタートする予定みたいですしね」(3/4 P4はこちら

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