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『鎌倉殿』大姫の衣装は季節外れ? 丹後局が指摘した以上に厳しい朝廷の“お約束”

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

『鎌倉殿』大姫の衣装は季節外れ? 丹後局が指摘した以上に厳しい朝廷の“お約束”の画像1
関智一演じる土御門通親(ドラマ公式サイトより)

 『鎌倉殿の13人』第24回は、本当に見どころたくさんでしたね。これまでのコラムでお話していたけれど映像化されていなかったエピソードが折り重なるようにして出てきたので、個人的にかなり楽しんでしまいました。

 今回は、頼朝一家が関西で手厳しい扱いを受けていましたね。建久6年(1195年)2月、頼朝は彼が多額の寄進を行なった東大寺の再建供養に出席するべく、一家総出で、鎌倉から上方に旅行しました。彼の最大の目的は長女・大姫を後鳥羽天皇に入内させること。しかし、東大寺への寄進でも朝廷に大きな恩を売ったつもりの頼朝でしたが、ドラマでも描かれたように、土御門通親(つちみかど・みちちか)や丹後局の対応は冷たく、入内の計画はふたたび失敗してしまうのです。

 ドラマでは土御門役で人気声優の関智一さんが初登場しましたが、あの部分の脚本はお見事でした。九条兼実(田中直樹さん)は「(東大寺再建の)一番の貢献をしたのが頼朝卿である」とし、大仏再建を担当した中国から来た工人=職人である陳和卿(ちんなけい/テイ龍進さん)に「功徳をたたえていただく」と頼朝を歓迎する手順を話しますが、陳和卿は「聞いておりませぬ」と却下。すると最初は「頼朝卿」と言っていた通親は「陳和卿は頼朝には会いたくないと申されるか」と呼び捨てにし、陳和卿は通親に同調するように「頼朝は殺生を重ねた大悪人」「そのような者に会うことはできぬ」と突き放します。梯子を外された格好の兼実は「もう手はずは整っておる!」と抗議するも、通親は「頼朝など放っておけばよい!」と一喝。うろたえる兼実を見て通親が不敵な笑みを浮かべる……というシーンでした。

 史実においても、東大寺における大仏殿再建式典において、陳和卿には頼朝から直々に対面要請があったのですが、「頼朝は多くの人を殺した、血で汚れた人物だから会えない」などといって面会を拒みました。頼朝はここで怒れば大姫の入内計画に差し障ると我慢したのでしょう。おそらくは悔し涙だったのでしょうが、陳和卿の言葉に「感涙」してみせ、多くの貢物を贈りますが、しかしそのほとんどは受け取りまで拒絶されるという、かなりの“塩対応”を受けています。

 京都でも頼朝はなかなかハードな“歓待”を受けました。ドラマのように丹後局(鈴木京香さん)から「厚かましいにも程がある!」などとドスの利いた言葉のパンチを直接食らわせられるようなことはさすがになかったと思われますが、大姫の入内計画で世話を焼いてくれるはずだった丹後局(そして土御門通親ら)が真正面から立ちふさがり、入内が失敗してしまったのは事実です。

 『吾妻鏡』などで見る限り、大姫のわずか二十歳での死と入内失敗はどこまで関係しているかはわかりませんが、少なからず影響はあったと考えてもよいでしょうね。ドラマの頼朝は、大姫の亡骸の前で今度は次女の三幡(乙姫)の入内計画を推し進めると息巻いていましたが、前にこの連載でも触れたとおり、乙姫は入内が決定したというタイミングで急死しています。しかも、土御門通親が派遣してきた名医に見せた直後のことでした。このエピソードもドラマでは出てくるかもしれませんね。

 さて、前回の放送の中で一番気になったのは、朝廷の装束をドラマでは「着物」と表現していたことです。視聴者にとっての「わかりやすさ」を重視した結果でしょうが、大姫らがまとっていたあの衣服の名称は「着物」ではなく「装束」であり、両者は、厳密には区別されるべきものなのです。(1/3 P2はこちら

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