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綾野剛の“どん底アラフォー”演技が胸に刺さる『オールドルーキー』

綾野剛の“どん底アラフォー”演技が胸に刺さる『オールドルーキー』の画像
Paravi配信ページより

 綾野剛主演のTBS日曜劇場『オールドルーキー』の第1話が6月26日に放送された。「現役を引退した元サッカー日本代表のセカンドキャリア」というテーマに少々マニアックな印象を受けたが、綾野の好演もあり、社会で奮闘する現役世代にこそ響く充実の内容だった。

 綾野演じる元サッカー日本代表の新町亮太郎は、J3の所属チーム「ジェンマ八王子」解散にともない、37歳にして未所属選手となってしまう。チームメイトが移籍先を見つけるなか、亮太郎は持ち前のポジティブな性格で気長に誘いを待つものの連絡は来ない。住宅ローンや娘2人の教育費など、将来を案ずる妻・果奈子(榮倉奈々)の助言もあり、亮太郎は移籍を取り持ってくれる代理人を探すことに。

 亮太郎はスポーツマネージメント会社「ビクトリー」を見つけ、社長の高柳雅史(反町隆史)と深沢塔子(芳根京子)と面談し、理想の移籍先を伝える。しかし、「とりあえずJ1ならどこでも」「子どもを転校させたくないので関東のチーム」「希望年俸は自身の全盛期クラス」といった、現実をまるで理解していない亮太郎の要望に、呆れる高柳と深沢。誘導されるがままに、「ホントになければJ3でも」「金額にはこだわりません」と譲歩するが、その10日後、高柳と深沢から「新町さんを獲得したいというところはない」「どこもピークの過ぎた選手をとる気はない」という結果が伝えられた。一回り近く離れた深沢の「現実を受け止めてください」が亮太郎の胸に刺さるワンシーンだ。ここで亮太郎は「現役引退」という自分がまったく想像していなかった現実を突きつけられた。

 一般市民からするとJリーグは華やかなプロスポーツの世界であり、元日本代表という肩書きでスポーツ界やバラエティ番組で活躍する引退選手も次々に思い浮かぶ。しかし、それはほんの一部だということをまざまざと見せつけられた。多くの選手が、志し半ばで現役引退をせざるを得ない、引退後の人生を描く前に幕が下ろされる非情な世界だということを気付かされるシーンだった。興味深いのは、本作品の制作にJリーグと日本サッカー協会が協力している点だ。悲喜こもごも入り混じる“リアル”なプロスポーツの世界を描きたい制作サイドの熱意と、それに応えるJリーグと日本サッカー協会の懐の深さを感じる。

 多くの視聴者を惹きつけたのは、夢破れた亮太郎のどん底生活ではないだろうか。ハローワークを通じて就職先を見つけるものの、「5歳からサッカーしかやってない」亮太郎は、健康食品会社の営業やタクシー会社の仕事もうまくできず、厄介者に。「全然熱くなれない、ゴールを決めたときのアドレナリンが出るような感じがまったくない」と愚痴をこぼし、かつてのチームメイトに「そんな仕事どこにもないですよ!」と一喝される始末。『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)などのドキュメンタリーを見ているかのような感覚に陥った。それも、キラキラとした人気選手から、世間の波にさらされ弱音を吐きまくる37歳の社会人1年生までを演じ分ける綾野の演技力があってのことだろう。

 今後の見どころは、亮太郎のセカンドライフの行く末と、亮太郎をビクトリーの一員として迎え入れた高柳の真意だろう。高柳が亮太郎に声をかけたのは、ドイツで活躍する人気サッカー選手・矢崎十志也(横浜流星)のサポート契約をつかみ取るための“ワンポイントリリーフ”として、亮太郎が矢崎にとって高校の先輩にあたる点が利用できると踏んだからだ。見事矢崎を獲得すると高柳は「もう必要ない」と言うなど打算的な性格が強く打ち出されていたが、一方で、矢崎獲得のための真摯な仕事ぶりを見た深沢が説得すると、契約社員として亮太郎を雇い続ける判断を下した。「すべてのアスリートにリスペクトを」と真っ当な企業理念を掲げ、見た目にも誠実さがみなぎっている。屈強な体格という点でも、スポーツに携わっていた経歴も考えられる。

 亮太郎がプロサッカー選手としての夢を後輩・矢崎に託すかのようなラストシーンは、ネット上で「ラスト亮太郎の足元にボール来てから 『矢崎行けーー!!』までの綾野剛がやばい(泣)」と感動を呼んだ。7月3日放送の第2話でも、夢に向かって頑張る人、家族や自身のために社会で奮闘する人にとっての“明日への活力”を与えていくに違いない。

■番組情報
日曜劇場『オールドルーキー
TBS系毎週日曜21時~
出演:綾野剛、芳根京子、中川大志、岡崎紗英、増田貴久、生田絵梨花、稲垣来泉、泉谷星奈、高橋克実、榮倉奈々、反町隆史 ほか
脚本:福田靖
音楽:木村秀彬
主題歌:King Gnu「雨燦々」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
協力:Jリーグ、公益財団法人 日本サッカー協会
サッカー監修:大久保嘉人
料理監修:Mizuki
編成:東仲恵吾、高橋秀光
プロデュース:関川友理、松本明子
演出:石井康晴
製作著作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/OLDROOKIE_tbs/

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2022/07/07 18:31
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