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『破戒』間宮祥太朗が見せる“芯”と“間” 島崎藤村の名作が今、映画化される理由

文=バフィー吉川(映画ライター・インド映画研究家)

『破戒』間宮祥太朗が見せる芯と間 島崎藤村の名作が今、映画化される理由の画像1
©全国水平社創立 100 周年記念映画製作委員会

 1948年に木下恵介監督、1962年に市川崑監督によって映画化されてきた、明治の文豪・島崎藤村の不朽の名作『破戒』。その、およそ60年ぶりの映画化作品が、7月8日に公開される。

 人類平等といえども、生まれや育ち、生活環境も対照的な2人の女性が、現代の東京で交わるストーリーを描いた映画『あのこは貴族』(2020)のように、見えない格差というものは確実に存在している。

『破戒』間宮祥太朗が見せる芯と間 島崎藤村の名作が今、映画化される理由の画像2
主人公・丑松(間宮祥太朗)©全国水平社創立 100 周年記念映画製作委員会

 “平等”など、存在しないのだ。

 島崎藤村の『破戒』が出版されたのは1906年。1世紀以上も前の作品であるし、時代背景は少し調べておいたほうがいい部分もある。でも、本作が訴えかけることは、実にシンプルでありながら、今も昔も人間にとっての最大のテーマともいえる“差別”についてだ。

『破戒』は今よりも酷い格差と差別、インドにおけるアウト・カーストのような、日本の被差別部落の「穢多(えた)」に対して行われていた差別が描かれている。それは、現在でも世界中で起こっている“差別”の構造そのものだ。

 だからこそ、今観るべき作品であり、この先も語り継がれるべき作品といえるだろう。

【ストーリー】
瀬川丑松(間宮祥太朗)は、自分が被差別部落出身ということを隠して、地元を離れ、ある小学校の教員として奉職する。彼は、その出自を隠し通すよう、亡くなった父からの強い戒めを受けていた。彼は生徒に慕われる良い教師だったが、出自を隠していることに悩み、また、差別の現状を体験することで心を乱しつつも、下宿先の士族出身の女性・志保(⽯井杏奈)との恋に心を焦がしていた。友人の同僚教師・銀之助(矢本悠馬)の支えはあったが、学校では丑松の出自についての疑念も抱かれ始め、丑松の立場は危ういものになっていく。苦しみのなか丑松は、被差別部落出身の思想家・猪子蓮太郎(眞島秀和)に傾倒していく。猪子宛に手紙を書いたところ、思いがけず猪子と対面する機会を得るが、丑松は猪子にすら、自分の出自を告白することができなかった。そんな中、猪子の演説会が開かれる。丑松は、「人間はみな等しく尊厳をもつものだ」という猪子の言葉に強い感動を覚えるが、猪子は演説後、政敵の放った暴漢に襲われる。この事件がきっかけとなり、丑松はある決意を胸に、教え子たちが待つ最後の教壇へ立とうとする……。

※次のページから作品の内容を含みます。

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