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『鎌倉殿の13人』物語の転換点となった義経、八重、頼朝の死を振り返る

頼朝の死で“序章”終了となる『鎌倉殿』

『鎌倉殿の13人』物語の転換点となった義経、八重、頼朝の死を振り返るの画像2
八重(新垣結衣)|ドラマ公式サイトより

 第21回は「仏の眼差し」。運慶(相島一之)の阿弥陀如来像を見て、義時が妻の顔を思い返すとき、八重(新垣結衣)はかつて殺された我が子・千鶴丸と重ねて見ていた少年(千鶴)を助けるために川に入り、帰らぬ人となった……というなんとも皮肉な回だった。

 まるで千鶴丸を亡くしてからの八重は、千鶴を救うまでの間を生きながらえていただけだったかのようだ。実際、史実の八重姫(伊東祐親の娘で、頼朝の元妻だった女性)は、『曽我物語』では入水自殺したとされている。ドラマの八重の設定は、『鎌倉殿』の時代考証を担当する坂井孝一氏の独自の見解を採用したと見られ、頼朝の元妻・八重姫と、義時の側室で長男・金剛(のちの泰時/坂口健太郎)の母親となった女性(阿波局)を同一人物とみなして生まれたもののようだ。

 ちなみにドラマの八重といえば、第4回の山木館襲撃の時、対岸から矢文を放つ場面で見事な弓の腕前を披露していたが、第23回で坂口健太郎に成長した金剛(テロップでも「成長著しい金剛」)も“母親譲り”の弓の腕前で、万寿(のちの源頼家/金子大地)を嫉妬させていた。

 第22回「義時の生きる道」では義時の正室となる、比企家出身の「姫の前」(ドラマでは比奈/堀田真由)が登場。史実では頼朝の“お気に入り”だったようだが、劇中でも頼朝が言い寄ろうとして政子に目を付けられるという展開があった。ドラマでは八重を彷彿とさせる部分がある女性として描かれていたが、史実では義時がとにかく惚れ込み、アプローチし続けて結ばれたという。このエピソードはむしろ義時と八重の関係に反映されたのかもしれない。

 第23回は「狩りと獲物」。富士の巻狩り、そしてその裏で起こった「曽我兄弟の仇討ち」が描かれた。後者では、頼朝の暗殺を狙ったという説や、裏で北条時政が暗躍したという説も唱えられているというが、ドラマではこうした説をうまく取り入れつつ、比奈のもとへ行こうとすけべ心を出した頼朝が運良く助かるという展開が見事だった。

 実際にただの仇討ちと済ませるには不可解な点が多かったという「曽我兄弟の仇討ち」。『吾妻鏡』では、頼朝は捕らえられた曽我時致の話を直々に聞いたというエピソードがあるようだが、これもドラマでは表向き“謀反などなかった”として処理しようとする義時の策によるものだと説明された。

 第24回は「変わらぬ人」。前回、頼朝が死んだとの誤報を受けて比企能員(佐藤二朗)が源範頼(迫田孝也)に鎌倉殿を継ぐようにそそのかすが、この動きによって範頼は頼朝に疑われ、流刑に処されてしまう。それでもあくまでも穏やかな範頼と、身内にすら疑心暗鬼になってしまう頼朝、いずれも“変わらぬ人”ということだったのだろう。

 さらに悲運の大姫(南沙良)。婚約者だった源義高(市川染五郎)が父・頼朝の命によって殺されてしまい、一時は心を閉ざしていたが、第21回あたりから明るさを見せ、スピリチュアル系不思議ちゃんぶりも話題になった。史実では義高の死後10年は「魂が抜けた」ような状態だったという。

 義高の父・木曽義仲(青木崇高)を慕っていた巴御前(秋元才加)からの「生きてる限り前に進まなくてはならない」という言葉を受けて、頼朝が推し進める入内に前向きになった大姫だったが、母・政子とともに丹後局(鈴木京香)から厳しい洗礼を浴びる。傷心の大姫は、三浦義村(山本耕史)に「姫は悪くない。姫は、姫の生きたいように生きるべきです」「人は、己の幸せのために生きる。当たり前のことです」と声を掛けられる。だが大姫にとって「好きに生きるということは、好きに死ぬということ」だった――。空蝉を集めるのが好きだった義高のもとに、大姫は旅立っていった。空蝉は義高と大姫、ふたりの短い生涯の象徴だったのかもしれない。

 そして第25回「天が望んだ男」。天の加護が感じられなくなっていた頼朝は死の恐怖にかられ、疑心暗鬼にかられる。政子との語らいを経て、憑き物が取れたように「人の命は定められたもの。あらがってどうする。甘んじて受け入れようではないか」と悟ったかと思ったら、倒れてしまった。阿野全成(新納慎也)は兄・頼朝に請われるままに、適当に思いつきの助言を言っていたが、昔を振り返るのはよくないという戒めを破った途端に倒れてしまう…… というのはなんとも皮肉な展開だった。

 頼朝が倒れたのは脳卒中の発作のような描かれ方だったが、史料によれば糖尿病(による脳血栓)の可能性もあるようだ。しかし肝心の『吾妻鏡』には頼朝の死の数年前から欠落があり、はっきりしない部分でもある。暗殺説も唱えられているようだが、一方で、結果的に頼朝の息子・頼家を追い落とすことになる義時・政子が頼朝の遺志を裏切ったがゆえのこととする見方もあるという。

 第26回「悲しむ前に」では、頼朝の死が描かれていく一方で、これからの鎌倉を誰が主導するかをめぐってのゴタゴタも起こった。予告映像で「長い序曲(プロローグ)が終わる」とあったように第27回からは新たな章となり、ここから御家人たちの政治闘争へと発展していくのだろう。ひと筋縄ではいかない三谷幸喜流の“御家人たちの物語”がここからどう展開していくのか、楽しみだ。

新城優征(ライター)

ドラマ・映画好きの男性ライター。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

しんじょうゆうせい

最終更新:2022/07/15 15:07
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