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阿部サダヲ“佐伯”の正体とは? 違和感と謎が深まる『空白を満たしなさい』

文=東海林かな(しょうじ・かな)

 阿部サダヲ“佐伯”の正体とは? 違和感と謎が深まる『空白を満たしなさい』の画像
ドラマ公式ブログより

 NHK総合の土曜ドラマ『空白を満たしなさい』の第3話が7月16日に放送された。第3話では謎に満ちた「復生者」という存在について多くのことが明らかに。しかし復生者に対する世間の反応が見えてくるたびに、作品全体にただよう“違和感”も鮮明になっていくようにも感じられた。

 このドラマは、2011年から2012年に『モーニング』(講談社)で連載されていた平野啓一郎による同名の長編小説を原作とした作品。死んだはずの人間が生き返る「復生者」のニュースが世間を騒がせる中、3年前に亡くなった主人公・土屋徹生(柄本佑)が復活し、死の直前の記憶を失っている徹生は自分が自殺したとされていることに違和感を覚え、身に覚えのない自らの死の真相を探っていくというストーリーとなっている。

佐伯が明かした衝撃の“真相”

 第3話では徹生のもとに、復生者が今後生活していく上での諸問題を法律の専門家と共に解決することを目指す「復生者の会」から招待状が届き、集まりに参加することになる。バスの中で徹生に声をかけた木下(藤森慎吾)など、死んだ時のことをしっかり記憶している復生者も少なくないようだ。ホテルの部屋で一旦休む徹生のもとに、何者かがDVDを置いていく。会社の工場の屋上から飛び降りたとされる徹生だが、このDVDは当日の監視カメラの映像だった。屋上へと続くドアの前でしばし逡巡したあと、亡くなる時刻に屋上へと消える徹生の様子が映し出されており、自分以外には誰の姿もないことに徹生はショックを受ける。生前の徹生に付きまとっていた佐伯(阿部サダヲ)に殺された、という徹生の考えは間違っていたのか。

 集まりでは親睦会も開かれ、復生者たちの口から、死の間際の記憶や“復生”した現在の苦悩が語られていく。なぜか佐伯もこの場に来ていた。ほかの復生者たちに「教えてほしいんですよ、私は。生きる意味を」「自分の意志で命の始末をつける人間はけしからんというのは、どんなさもしい価値観なんですか?」「生きることが義務なんて誰が決めたんですか?」などと問いかけ、煙たがられる佐伯。佐伯が自殺を図ろうとしているのに気づき、「死ぬな」と説得する徹生に、佐伯は「お前はまだ気付かないのか。お前を殺したのは俺だよ。俺は、お前が1歳の時に死んで復生したお前の父親だよ」と衝撃の告白をする。そして呆然とする徹生の目の前で、佐伯はテラスから飛び降りるのだった。

復生者を取り巻く“違和感”の数々

 第1話・第2話では徹生の周辺の話が中心となっていたが、第3話では多くの復生者が登場したことで作中の世界観が一気に視聴者に伝わることとなった。しかし、復生者を取り巻く状況が明らかとなるにつれ、謎や違和感も増していく。「復生者の会」のバスがホテルに到着した際には、入口で「復生者は戻ってくるな」「復生者の特権を許すな」と抗議する団体が集結していた。しかし、徹生は彼らの言う“特権”が何を意味するかわからず、木下も「税金払ってないからですかね? 前年の収入がないから」と推測を述べる程度だった。これまでも、復生者に対する抗議運動の様子が劇中のテレビニュースで報じられていたが、収入のなかった復生者が税金を支払っていない程度のことでここまで大々的な抗議活動を行うものだろうか……。それとも徹生がまだ認識していない優遇措置が存在するのだろうか。

 また「復生者の会」の総会では、前財務大臣によるスピーチがあったが、「皆様が復生された意味がはっきりと分かった」などと言って、少子高齢化社会における労働力の確保の問題を語り、「皆様、是非ともまた社会に復帰してバリバリ働いていただきたい!」とエールを送っていた。つまるところ「働くために生き返った」という発想であり、復生者を一人の人間としてみなさず、単なる労働力としてしか捉えていないこの発言にも、違和感を覚えざるを得ない。

 これまでも、徹生の周囲では“復生者差別”といえるような状況はチラホラ見受けられた。再就職を目指す徹生が復生者だとわかるなり強引に面接を終了する企業。徹生が友人の秋吉(萩原聖人)が経営する店で働くことになった時には、徹生にやたらキツくあたる若い店員が、徹生を雇うために2人の店員が退職させられたと主張していた。復生者を取り巻く社会状況については、まだまだ描かれていない部分は多くありそうだ。

 第2話では、徹生が生き返ってしまったため、妻の千佳(鈴木杏)が受け取った生命保険を返還するよう求められるという問題にぶつかっていたが、「復生者の会」が開いた弁護士相談会では「最悪、自己破産しろ」という役に立たないアドバイスしか得られなかったようだ。ここで「返金を国が肩代わりする」「国の働きかけで返金期限を延長させる」などの選択肢があるのならば、“復生者の特権”が問題視されていても多少は納得がいくのだが……。彼らが言う特権とは一体何なのだろうか。

 復生者たちの言動にも違和感があった。幼くして事故で命を落とした復生者・野本こいし(禾本珠彩)が死ぬ間際に見た体験を語る際には、母親が何度も証言を誘導する姿が見られた。テレビ出演なども多い「有名人」と木下が言っていたが、両親が復生者である娘を“利用”している、と感じた視聴者も多かったのではないだろうか。また、海で溺死した記憶を持っている木下は、バスの中で「テレビに海が映るだけでパニックになったりします」と語っていたのだが、その会話中、バスはずっと海沿いを走行しており、窓の向こうには海が広がっていたのも気になる。気鋭の作り手が集まった本ドラマだけに、単なる演出上のミスとは考えづらい。そこには一体どのような理由が隠されているのだろうか……。

 全5話の折り返し地点を過ぎた同作だが、第3話ではむしろ作中の謎が深まっていったようにも感じられる。復生者とは何なのか。佐伯は本当に徹生の父なのか。徹生は佐伯に殺されたのか。これから先の展開も見逃せない。

■番組情報
土曜ドラマ『空白を満たしなさい
NHK総合 毎週土曜22時~ / 再放送:翌週火曜25:15~ / 配信:NHKプラス
出演:柄本佑、鈴木杏、萩原聖人、渡辺いっけい、うじきつよし、藤森慎吾、ブレーク・クロフォード、田村たがめ、斉藤拓弥/風吹ジュン、阿部サダヲ、井之脇海、本田博太郎、野間口徹、木野花、国広富之、滝藤賢一 ほか
原作:平野啓一郎『空白を満たしなさい』(講談社)
脚本:高田亮
音楽:清水靖晃
制作統括:勝田夏子(NHKエンタープライズ)、落合将(NHK)
演出:柴田岳志(NHKエンタープライズ)、黛りんたろう
公式サイト:https://www.nhk.jp/p/ts/P89L596WL7/

東海林かな(しょうじ・かな)

東海林かな(しょうじ・かな)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

最終更新:2022/07/23 12:00

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