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朝ドラWATCHコラム『ちむどんどん』第18週

『ちむどんどん』ヒロインの結婚という見せ場がまるでホラー展開…(第18週)

『ちむどんどん』ヒロインの結婚という見せ場がまるでホラー展開…(第18週)の画像
イラスト/渡辺裕子

 夏の猛暑を耐える人々の背筋を凍らせるためのホラードラマ。みなさんはお好きでしょうか。私は怖い話は全然ダメで、特に「身近な何かが実は」系の話が苦手です。テレビから何かが這い出てくるとか、ビデオテープが呪われてるとか、絶対無理。でも最近、毎朝見ている『ちむどんどん』に、うっすらとホラーの香りを感じるんです、そんなはずはないのに。もしホラードラマだとすると、主人公は、銀座のレストランで健気に修業する暢子(黒島結菜)……ではなく、ひとり暮らしの未亡人・重子(鈴木保奈美)です。

 すでに独立している息子・和彦(宮沢氷魚)の結婚話がまとまり一安心、しかし和彦は婚約者と別れ、すぐに違う女性・暢子と結婚すると言い出した。何事かと暢子の身元を調べても不安が増すばかり。そのうちに暢子から何が入っているかわからない手作り弁当が毎日届くようになり、息子からは暴言と優しい言葉を交互に繰り返し受け、彼女の静かな時間は失われつつある。信用していた使用人もいつのまにか暢子側につき、使用人の手引きで暢子の兄・賢秀(竜星涼)と姉・良子(川口春奈)が家に入り、結婚を許せと騒いで彼女の大切なオルゴールを破壊、謎のカセットテープや瓶詰めが部屋に残される。和彦と暢子は同居まで要求、「またみんなで楽しく暮らせるよ!」と笑顔で迫ってくる。

 ほらなんだか「身近な何かが実は、系ホラー」に思えてきた。信頼していた身近な人たちが皆「彼ら側」につき、不安を口にしても取り合ってくれず、話が通じず、そのうちに「彼ら」が自分の大事なエリアを侵食してくる。そして最後には主人公も取り込まれ「しーちゃんと呼んで」と、彼らの一部となる幸せを受け入れる……きゃー!

 もうひとつ、「悪夢系ホラー」はいかがでしょう。こちらの主人公は、幼なじみにプロポーズして断られた直後、友人と結婚すると聞かされた男・智(前田公輝)。さすがに披露宴への招待は断ったのに、嘘をつかれて無理やり参加させられ、準備もしてないのにお祝いのスピーチをしろと強要される。それも自分の恋をずっと応援してくれていると思っていた人たちの目の前で……こんな夢を見たら汗びっしょりで目が覚めそう。

 いや、この週は真の主人公・暢子の結婚という一大イベントを祝うはずだったんですが……「もし自分がこんな目にあったらどうしよう、怖い……」「なぜこんなことになっているの?」と思う回数が多くて。呪いの、じゃなくて歌のカセットテープではあんなに下手だった歌子が(なぜ巻き戻して最初から録り直さなかったの?)披露宴では大勢の前で見事に歌えるようになってるとか。「昔の女は今でも俺のことを好きで、会う前に口紅直しちゃうような可愛いところもあって、でも俺には妻がいるからなあ、ふふふ」という誰かの夢を見せられているような、三郎・多江・房子の絡みとか。銀座の一流店なのに、テーブルに皿が次々のせられて、居酒屋で頼んだ料理が続けて来ちゃった時みたいに客が自ら皿を動かして場所を空けるとか。おいしくない思い出の料理で重子がしーちゃんへとレベルアップしちゃうとか。なんでそうなるの?とテレビ画面に向かってついツッコミを入れてしまう、連続不条理系ホラー小説。

 でも、賢秀が、披露宴よりも勤め先の豚の出産を優先したところはよかったですね。彼が誰かをだましたり一攫千金を狙ったりせずストレートに努力するのは、裸足で走った運動会以来では。しかしその反対に、今度は歌子(上白石萌歌)が仮病という嘘を。ずっと心配し続けてくれた智の優しさにつけこんで、自らの原因不明の病を使ってだますなんて、歌子はそんな人じゃないと思っていたのにどこで変わってしまったの。

 そしてさすがの暢子。ずっと勤めてきたイタリアンの店での披露宴で「沖縄料理の店を開きます!」宣言。今までの修業はなんだったの? あなたに押し出される形で消えた矢作(井之脇海)のこと覚えてる? 披露宴に呼ばなかった賢吉おじさん(石丸謙二郎)たちは元気? お金がかかった披露宴に見えたけど、借金は今どうなってる?などの疑問はあるんですが、美しい花嫁姿と笑顔の力で「まあいいか」と思っちゃいました。本当に美しかった、おめでとうございます。

■番組情報
NHK連続テレビ小説『ちむどんどん
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:黒島結菜、仲間由紀恵、大森南朋、竜星涼、川口春奈、上白石萌歌ほか
作:羽原大介
音楽:岡部啓一、高田龍一、帆足圭吾
主題歌:三浦大知「燦燦」
語り:ジョン・カビラ
制作統括:小林大児、藤並英樹
プロデューサー:高橋優香子、松田恭典
広報プロデューサー:川口俊介、鈴木 葵
演出:木村隆文、松園武大、中野亮平ほか
制作:NHK
公式サイト:nhk.or.jp/chimudondon

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

わたなべひろこ

最終更新:2023/02/04 23:39
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