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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.700

高橋ヨシキ初監督『激怒』 相互監視社会への違和感が生んだバイオレンス作

文=長野辰次(ながの・たつじ)

高橋ヨシキ初監督『激怒』 相互監視社会への違和感が生んだバイオレンス作の画像1
川瀬陽太が主演&初プロデューサーを務めたR15映画『激怒』

 誰もが暮らしやすい平和なユートピアを目指していたはずが、いつの間にか街は息苦しいディストピアと化していた。トム・クルーズ主演作『マイノリティ・リポート』(02)やフランソワ・トリュフォー監督作『華氏451』(66)といったSF映画では、そんな近未来の恐怖が描かれてきた。高橋ヨシキ監督の長編映画デビュー作となる『激怒』も、一般市民同士が相互監視するようになった不穏な社会を風刺する、ブラックユーモアたっぷりなバイオレンス作品となっている。

 クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』(03)の公開前にフェイクポスターを制作したところ、タランティーノ監督がこれを気に入り自宅に飾るなど、高橋ヨシキ監督は熱烈な映画マニアとして知られている。グラフィックデザイナーとして、また鋭い映画評論でコアなファンから支持されている高橋ヨシキ監督が、長年の映画制作の夢を叶えたのが『激怒』だ。2020年2月に撮影を済ませていた『激怒』が、いよいよ劇場公開される。

 高橋ヨシキ監督とがっちりとタッグを組んだのは、インディーズ映画界の超売れっ子俳優・川瀬陽太。温厚な人柄で親しまれている川瀬だが、本作では「日本映画プロフェッショナル大賞」主演男優賞に選ばれた『犯る男』(15)の殺人鬼役ばりの、振り切った演技を久々に見せている。

 また、川瀬は主演俳優を務めただけでなく、プロデューサーも兼任し、キャスティングに大いに腕を振るった。『SR サイタマノラッパー』シリーズの奥野瑛太や水澤紳吾、『岬の兄妹』(19)の松浦祐也と和田光沙、ピンク映画界の名優・森羅万象のほか、井浦新や渋川清彦といったインディーズ映画界のオールスターが集結。ヒロインには新人・彩木あやを抜擢。また音楽には、三島由紀夫賞作家でもある中原昌也、世界的に活躍するミュージシャンの渡邊琢磨が参加するなど、ぜいたくな作品となっている。

 物語の舞台となるのは、日本のどこにでもある「富士見町」。深間(川瀬陽太)は暴力刑事として知られていたが、社会からドロップアウトした人たちには優しい人情派の一面も併せ持っていた。ところが、深間のヒロイックな行動が原因で、立てこもり犯の家族のひとりが亡くなるという事故が起きてしまう。世間やマスコミからバッシングを浴びた深間は、米国で薬物治療を受けるはめになる。

 それから3年が経ち、深間は「富士見町」へと帰ってきた。警察署に復職する深間だったが、町はすっかり変わっていた。「安心、安全な町」というポスターがあちこちに貼られ、表面的には平穏に映っていたが、不良やホームレスは姿を消し、町内会が厳しくパトロールする息苦しい町に変わりつつあった。

 パトロール隊は自分たちの意に沿わない者を捕まえてはボコボコにし、警察はそのことを容認している。隠れるようにして生き延びていた不良やホームレスも、容赦なく排斥されていく。深間の怒りがついに大爆発する。(1/3 P2はこちら

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