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アレのどこが面白いの?~企画倉庫管理人のエンタメ自由研究~

サンドウィッチマン「病気」をフラットに捉える『病院ラジオ』の企画力

文=深田憲作(ふかだ・けんさく)

サンドウィッチマン「病気」をフラットに捉える『病院ラジオ』の企画力の画像1
NHK『病院ラジオ』公式サイトより

 放送作家の深田憲作です。

企画倉庫」というサイトを運営している私が「あの企画はどこが面白いのか?」を分析し、「面白さの正体」を突き止めるための勉強の場としてこの連載をやらせてもらっています。

 今回のテーマは「サンドウィッチマンMCの病院ラジオについて」です。

『病院ラジオ』とは、NHKで不定期に放送されている番組で、1つの病院を舞台に、病院の患者さんや家族をゲストとして迎えて、MCのサンドウィッチマンとトークをしていくという内容。最新回は8月17日に放送されていました。

 第1回が放送されたのは2018年8月。その放送が『ギャラクシー賞』を受賞して、テレビマンの間でも話題となりました。私も話題になってから追っかけで番組を見て「バラエティの企画は出し尽くされていたと思っていたけど、まだこんな企画が残っていたのか!」と衝撃を受けました。(調べたところベルギーの番組のフォーマットを買い付けして制作されているようです)

 番組を見たことがない方は、先述した内容説明ではそこまで面白そうなイメージが出来なかったのではないでしょうか?それもそのはず、シンプルに言うと“名前も顔も知らない一般の方がゲストのトーク番組”ですから、賞を獲るほどの面白さは想像できないでしょう。

 それが見てみると面白いんです。この番組の面白さは『アメトーーク!』(テレビ朝日系)『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)といった番組の面白さとは種類が異なります。私が『病院ラジオ』に近い感覚を抱いた番組でいうと、終電を逃した一般の方の自宅についていく『家、ついて行ってイイですか?』を初めて見た時です。名前も顔も知らない市井の人の話なのに、なぜか聞き入ってしまい、なんとも言えない読後感が強く残る。そんな感じです。

 なぜここまで胸を打つのか? 『病院ラジオ』の面白さを説明するのは、非常に難しいです。でも、だからこそこの番組の面白さを少しでも分解できれば、今後のエンタメ制作の糧になるのではないかと思って、本記事を書いてみようと思いました。

 まずバラエティ番組の中で、一般の人を招いて芸能人とトークをする企画は珍しいことではありません。その中で『病院ラジオ』の特性は、ゲストが“病院の患者である”ということ。ゲストの全員が何かしらの病気か怪我を抱えています。そして、番組ではそのトーク(ラジオ)を、舞台となっている病院内で放送して、それを病院内の至る所で聴く患者さんたちのリアクションも映し出しています。

 つまり、ゲストもリスナー(観客)もほぼ、全員が患者であるということです。当然、トークもゲストの病気にまつわることがメインとなるのですが、それは決してネガティブな内容ばかりではありません。むしろ、前向きに生きようとする姿勢や自分を支えてくれる家族との関係性などを、ポジティブに語る場面が多く見受けられます。

「病気」という一見ネガティブな状況にある人たちの口から発せられるポジティブな言葉を聞いていると、胸を打たれる感覚があります。表現が非常に難しいのですが、なんというか……「みんな頑張って生きてるんだな」と。決してこれは上から目線の感情ではありません。

 おそらく99%の人が、人生のどこかに不安を抱えて生きていると思います。仕事の不安、経済的な不安、人間関係の不安、家族の不安、そして健康面の不安。『病院ラジオ』に出てくるのは、健康面に不安、または不便を抱えた人たち。そんな人たちが、家族と協力して、前向きに生きている姿を見ると、勇気をもらえるのかもしれません。

 そして、私が番組を見て感じたのは“押し付け感がない”ということ。これが「病気でもポジティブに生きている人がいるよ!」「みんな頑張って生きようよ!」というポジティブなメッセージ性が強すぎる番組だと、見ていてこんな感情にはならない気がします。

 この番組、並びにMCのサンドウィッチマンは、ただただフラットに患者さんの現実を描いているような気がします。ネガティブにも、ポジティブにも演出の負荷をかけている感じがありません。ただ、ありのままを見せている感じというか……。

「ポジティブの押し付け」、または「ネガティブのデフォルメ」になっている番組は数多あると思うのですが、『病院ラジオ』にはその感じがありません。目先の視聴率を重視してしまうと、どうしてもこのどちらかの演出をしてしまいがちだと思うのですが、これはNHKだからこそ作れた番組の空気感なのかもしれません。奥深い番組だけに、なかなか奥深くまで分析しきれませんでした(笑)。それでは今日はこの辺で。

深田憲作(ふかだ・けんさく)

放送作家。松本人志・高須光聖がパーソナリティを務めた東京FMのラジオ「放送室」で行われたオーディションをきっかけに放送作家の高須光聖に師事。以降、テレビやYouTubeでさまざまな番組を担当。主な歴代担当番組は『くりぃむナントカ』『シルシルミシル』『めちゃ×2イケてるッ‼』『ガキの使い 笑ってはいけないシリーズ』『得する人損する人』『激レアさんを連れてきた。』『新しい波24』『1周回って知らない話』『ゴン中山&ザキヤマのキリトルTV』『GET SPORTS』『ヨロシクご検討ください』『青春高校3年C組』『今田×東野のカリギュラ』など。

Twitter:@kikakusouko

企画倉庫

最終更新:2022/08/22 13:59

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