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『君は永遠にそいつらより若い』誰かの悩みに真剣に向き合い続けられるか?

『君は永遠にそいつらより若い』誰かの悩みに真剣に向き合い続けられるか?の画像1
写真:Kyogo Hidaka

 昔好きだった人に、「白米みたいだよね」と言われたことがある。

 白米。ご飯や米という言い方ではなく、玄米でも雑穀米でもなく白米。……なくてはならない存在ってこと!? いや、当たり前にあるもので存在価値に気付けないってこと? 無難で普通すぎるってこと? 色がないってこと? それとも体型のこと?

 その場で聞き返しそびれた当時の私は、1人になってから悶々と頭を捻らせた。が、数年後真相を聞いてみたら、特に深い意味はなく適当に言ってみただけだったらしい。はぁ、あんなに考えた私、馬鹿みたい。

 白米は可愛い前置き話として。私は普段から人が放つ言葉を敏感に受け取りやすく、かなり根に持つタイプで、考えすぎて自分が嫌になることがしょっちゅうある。

 これは最近の話だが、私の中では結構深刻な悩みを相手に相談したら「人って案外他人のことなんて見てなくて、自分のことで頭いっぱいだから、気にしなくて大丈夫だよ」とアドバイスされた。

 確かに自分が気にしすぎていただけだったな~と思うことって沢山あるし、そんな悩みちっぽけだよ! って、気持ちを軽くしてくれるためのポジティブな言葉だったのだとは思う。きっとそういう意味なんだけど。それはわかっているんだけど。でもなんだかこの言葉が引っかかっていて、ふと思い出しては頭の中でずっと繰り返している。

 誰もが自分のことしか見えていない世の中と言い切ってしまうのは、なんだか寂しい。人は誰かに必要とされることで、自分がここにいる意味を見出して、生きる選択をしているのだと思うけど、その言葉を聞いたら、自分がそこに必要ないような気がしてしまったのだ。

 言いたいことはわかるけれど、〝他人は見ていないよ〟という言葉は、何だか素直に受け入れたくなかった。

 腑に落ちずにモヤモヤしていた時、お芝居の参考にと偶然鑑賞した吉野竜平監督の『君は永遠にそいつらより若い』が、今考えていることにぴったりはまった。昨年(2021年)秋に公開した作品で、主演は佐久間由依さん、続いて奈緒さん。

 佐久間由依さん演じる主人公ホリガイは、児童福祉士の職に内定が決まった大学4年生。他人のことが放っておけなくて、でも不気用。佐久間さんご自身の曇りのない素直な人間性、ボーイッシュなラフさと無邪気な笑顔が役とベストマッチ。そんなホリガイと偶然知り合う奈緒さん演じるイノギは、過去体験した出来事に傷を負い、その傷を隠すよう生きている同大学生。いつも奈緒さんを観ていると、相手を受け入れる包容力が役を通して感じられるのだが、そのお人柄が役に活きているシーンが沢山あって、とても魅力的だった。

 お二人の息の合った空気感が伝わってきた。

 2人を含め、登場人物達はそれぞれ悩みを抱えていて。それを孤独に抱え込んでいたり、理解されなかったり、寄り添えなかったり、寄り添えなかったことを悔やんだり、ぶつかったり、それぞれの悩みと向き合う形が描かれている。

 その中でホリガイが、バイト先の後輩ヤスダに「巨根すぎて未だ童貞であること」を打ち明けられるも、受け止めきれずに後から胸を痛めるシーンが今の自分に刺さった。巨根すぎると言われたら、確かに私も笑ってしまうかもしれないけど、ヤスダにとってはすごく深刻な悩みで。

 私は普段、目の前にいる相手に、きちんと寄り添えているのだろうか? と考えさせられた。相手の価値観を真に理解することって、本当に難しい。

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