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格闘技イベントRIZINが宿す『誇り』の正体【特別無料公開】

鳴神どもの矜恃──格闘技イベントRIZINが宿す「誇り」の正体 ②

2.記者会見でも不明だったいくつかの点

 実行委員諸氏を威嚇する意図はもとよりなかった。平均的な日本語のリテラシーを持つ格闘技ファンなら誰しも疑問に思う点を質したに過ぎない。だが、榊原はそうは受け取らなかった可能性がある。

 フジテレビはなぜ大会直前に放送を中止しなければならなかったのか。私の取材に対し、同社企業広報部の担当者は次のように回答している。

「諸般の事情を総合的に考慮した結果、契約に至らなかったということです」

「両論併記」は報道の基本原則の一つだ。榊原の言い分も聞いた上で記事に反映させる努力を最後まで怠ってはならない。

 本人もその点は理解していたようだ。5月31日の記者会見ではこう述べている。
「(5月)9日(発売)の(「週刊ポスト」の)記事は一方的に書かれた」
「普通であれば、取材を当てて、僕らに。反対の意見なり、事実を確認したあと、雑誌に載せる」
「(「週刊ポスト」記者による)インタビューの中で答えましたけど。『取材には応じます』と」

記事を止めようと500万円を支払う

「週刊ポスト」の記事とは何か。簡単に補足しておこう。

 5月9日、16日発売の「週刊ポスト」は榊原にまつわるスクープ記事を掲載した。発端は1本の音声データ。榊原の会話が収められている。格闘技業界の一部で出回っているといわれるものだ。

 このデータをジャーナリストのX氏が入手。記事の材料とするため、会話の内容について聞く目的で榊原と面会した。

 榊原は記事を止めるなら500万円を支払うと発言。X氏は現金で受け取ったその金を情報源に渡している。

 データの内容は榊原が知人と電話で交わした会話。知人はその中でRIZINの関係者「Y氏」について榊原に尋ねている。
〈「Y自身が例えばですよ、稲川会の○○(音声では実名)との付き合いがあるということも、榊原さん、ご存じなんでしょう?」
「そうです、知ってます」〉

「Y氏」はRIZINの業務の中で「トラブルシューティング」に立ち回っている「顧問」的な存在だという。

 記事の第2弾で榊原はポスト記者のインタビューに回答。音声は自分のものだと認めた。このデータの一部は後にポストのウェブサイトで公開されている。

言葉を濁し曖昧な説明に終始

 会見では明らかにならなかったことがいくつかある。

 ・「Y氏」の具体的な業務内容と記事が出たあとの処遇
 ・榊原が2度にわたって週刊誌の標的にされた理由
 ・「週刊ポスト」やフジテレビへの「法的アクション」の具体的な中身

 私の質問に対して榊原は言葉を濁すばかりだった。曖昧な説明に終始するのみで明確な回答は避け続けている。真相は依然として藪の中だ。

「本当のこと」が闇に葬られようとしていた。「週刊ポスト」記事の掲載前、格闘技界の現状を憂う複数の関係者から情報提供がなされる。私は取材を開始した。

 広報担当者からの返信を受け取ったその日のうちにDFWWに再度取材を申し入れる。

〈取材拒否とのご回答確かに賜りました。ありがとうございます。
 榊原実行委員のこの間の行状に関しまして調べた結果、いくつか把握できた事実がございます。取材にお応えいただけない以上、反論権の放棄とみなさざるを得ません。
 やむを得ず、一方的に書かせていただくことになる可能性もありますが、貴社としてはいかがお考えでしょうか。
 併せましてご検討いただけましたら幸いです。〉

 返事がないので、24日にさらにメールを送信した。

〈取材拒否の件、その後いかがお進みでしょうか。
 榊原実行委員が5月31日の記者会見で明言されている通り、週刊ポストさんの第1回目の記事のように「一方的に書かれた」ものにするつもりはありません。
「普通であれば、取材を当てて、僕らに。反対の意見なり、事実を確認したあと、雑誌に載せる」
 まさにおっしゃる通りです。「普通」のご対応をいただけますでしょうか。
「インタビューの中で答えましたけど。『取材には応じます』と」
 報道への深いご理解には感謝しかございません。
 大変お忙しいところ、誠に恐縮ですが、諾否だけでも本日中にお返事いただけませんでしょうか。万が一、再度拒否ということでしたら、貴社広報局長様のご名義でその旨文書にしていただけると助かります(データで添付していただければ結構です)。〉

RIZINの社会的責任と公益性

 24日に今度は笹原圭一から返事が届いた。再度拒否の回答。〈単純にRIZINの露出にとってプラスになるかどうかで判断〉した結果だという。笹原は格闘技イベント「DREAM」を運営するリアルエンターテインメントで代表を務めた。同社は2012年、8億4000万円ともいわれる負債を抱えて倒産。そんな笹原を要職で迎えたのが榊原だ。「再チャレンジ」
を具現化。経営者として懐の深さは筆舌に尽くし難いものがある。

 笹原の返信にはこちらから要請した取材拒否を通告する文書は添付されていなかった。この間のやり取りで判明した事実がある。同社の「広報局長」は既送のメールへの返信で私のアドレスをなぜか間違えた。〈申し訳けありません〉と複数回つづるのをはじめ誤字・脱字を繰り返す。通常の書式に準じたビジネス文書が書けなかったのか、書かなかったのか。その点は定かではない。

 笹原の「判断」に話を戻す。言うまでもなくDFWWは私企業である。営利を追求するのは当然のことだ。だが、一方で企業には社会的責任(CSR)や公益性も問われる。常日頃から「ファンのため」「子供たちのため」とうそぶいてきた代表が率いる会社なら、なおさらだろう。

 やむを得ず、私は榊原への質問状を作成することにした。この間の取材や調査でつかんだ榊原の行状、RIZINのガバナンスや運営企業の体質について14の項目を立ててまとめている。以下に示す通りだ。

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