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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.714

唐田えりか主演 男と女の本音がクロスする街歩き『の方へ、流れる』

唐田えりかがオーディションで選ばれた経緯

唐田えりか主演 男と女の本音がクロスする街歩き『の方へ、流れる』の画像2
竹馬監督いわく「唐田えりかさんは、里美役のイメージを広げてくれた」

 本作を撮ったのは、1983年生まれの竹馬靖具監督。ダルデンヌ兄弟の『ある子供』(05)を観たことがきっかけで、自主映画づくりを始めた。引きこもりの主人公を竹馬監督自身が演じた『今、僕は』(09)、貧困ビジネスをモチーフにした『蜃気楼の舟』(15)などが劇場公開されている。ももいろクローバーが出演した、真利子哲也監督の『NINIFUNI』(11)では脚本を担当した。本作の企画や唐田えりかをキャスティングした経緯などを、竹馬監督に語ってもらった。

竹馬「前作『蜃気楼の舟』は自主映画にもかかわらず、膨大な制作費を費やしてしまったので、新作はあまり予算が掛からないものをと考えていました。それでワンシチュエーションで、登場人数も少なくて済む、恋愛ものを企画しました。3本の脚本を書き、そのうちの1本は中編映画『ふたつのシルエット』(20)としてすでに公開しましたが、『の方へ、流れる』はいちばん最初に書いた脚本です。脚本執筆時の僕にとっては、恋愛が最も切実なテーマでした」

 どこまでが本心でどこまでが嘘なのか、里美が投げ掛ける言葉は判別しにくい。会話を続けるうちに、里美は「男はただのセックスアニマル」など際どい台詞も口にするようになる。撮影現場でのアドリブではなく、すべて竹馬監督の脚本にあったものだそうだ。

竹馬「恋人と口論するときって、思いがけないような言葉がお互いから出てきたりするもの。恋人との別れはつらい体験ですが、落ち着いて振り返ると、そうした言葉のやりとりがとても興味深く思えるものです。人間をより深く知りたい。そんな想いで書き始めたのが今回の脚本です。どんな結末になるかを決めずに、ひと晩で書き上げ、推敲に数日を費やしましたが、1週間くらいで完成させた脚本です。ラストを少し変えましたが、ほぼ初稿のままです」

 主演の唐田えりかは、オーディションで決めた。書類選考で10数人に絞り込み、事前に渡した脚本を、候補者たちには同じ台詞をパターンを変えて読み上げてもらったという。

竹馬「台本をまず自由に読んでもらい、その次に感情を入れずに読んでもらいました。自由に読んでもらうと、予測しているものとそれほど変わらないものですが、感情を入れずに読むと違いが大きく出るんです。唐田さんに読んでもらったときも、ただフラットに脚本を読んでもらっているだけなのに、彼女の声と体を通して、いろんなものが降りてくるように感じられたんです。唐田さんが巫女っぽく思えました。他の候補者も魅力的な方たちでしたが、唐田さんが演じる里美が観てみたいと思い、彼女に決めました」

 ニュアンスを抜く「本読み」は、濱口監督の『ドライブ・マイ・カー』(21)の舞台稽古シーンで有名になったが、ジャン・ルノワール監督が晩年に行なっていた「イタリア式本読み」がベースとしてある。俳優に脚本を深く理解させることに加え、台詞をフラットに読み上げることで観客にいろんなもの想像させる喚起力ももたらすとも言われている。

 唐田が口にする台詞から、所在なさげな人生を歩む里美の男性観や恋愛観、ひいては世界観が浮かび上がってくる。

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