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映画『ファミリア』が「当事者」キャスティングで伝える、在日ブラジル人の事情と「脱獄」の意志

文=ヒナタカ

映画『ファミリア』が「当事者」キャスティングで伝える、在日ブラジル人の事情と「脱獄」の意志の画像1
C) 2022「ファミリア」製作委員会

 1月6日より『ファミリア』が公開されている。

 実際に起きた事件などをヒントにした、いながききよたかによるオリジナル脚本を映画化したのは、『八日目の蟬』の成島出監督。共演は役所広司と吉沢亮という布陣で送り出される、骨太であるとともに共感しやすいサスペンスドラマ映画に仕上がっていた。

 本作で何よりも重要なのは、現在日本に約280万人いる外国人、中でも在日ブラジル人たちの事情にスポットライトを当てたことだろう。舞台のモデルかつロケ地になっているのは、実際に在日ブラジル人が多く住む愛知県の保見団地で、そのことが後述もする「まるでドキュメンタリー」のようなリアリティにつながっていた。

 物語そのものはフィクションであり、だからこその劇的な展開もあるが、同時に現実の「当事者」の姿を想像することにも本作の意義がある。さらなる魅力を記していこう。

苦しい日常の中で、尊い関係が築かれていく物語

映画『ファミリア』が「当事者」キャスティングで伝える、在日ブラジル人の事情と「脱獄」の意志の画像2
C) 2022「ファミリア」製作委員会

 あらすじはこうだ。早くに妻を亡くし山里にひとりで暮らしていた陶器職人の誠治(役所広司)の元に、アルジェリアに赴任中のはずの一人息子の学(吉沢亮)が帰ってくる。彼は難民出身のナディアと結婚したことを機に会社を辞め、焼き物の仕事を継ぎたいと言うのだ。同じ頃、隣町の団地に住む在日ブラジル人青年・マルコスは半グレたちに追われ、たまたま誠治の住まいに転がり込むのだが……。

 本作の何よりの特徴は、日本人の親子の物語と、在日ブラジル人の青年を中心にした若者たちの日常を並行して描いていることだろう。経済的な困難を抱えていることは共通していて、後者はさらに過去と現在進行形の重苦しい事情ものしかかる。難民や差別だけでなく、ヘイトクライム、さらにはテロリズムも描かれており、現実の今にコロナ禍やロシアによるウクライナ侵略があるからこそ、それらがより切実に感じられる。

 それでも、在日ブラジル人たちは楽しく過ごしていることもあるし、彼ら彼女は昔は荒くれ者だった役所広司演じる誠治に親近感を抱く場面もある。困難な問題が積み重なる世界で、単純な利害の一致ではない、国籍や育った環境を超えた無償の愛情や尊い関係、いや「家族」が築かれていく。それでもなお、知るよしもなかった悲劇が起こることが苦しく辛く思えるが、だからこその希望も得られる物語にもなっていた。

役所広司と吉沢亮と渡り合う、演技初挑戦の若手俳優

映画『ファミリア』が「当事者」キャスティングで伝える、在日ブラジル人の事情と「脱獄」の意志の画像3
C) 2022「ファミリア」製作委員会

 本作の目玉はやはり俳優陣の演技。堅物のようで弱々しさも見せる役所広司と、朗らかで時には全身全霊で喜びを表現する吉沢亮が、本当に固い絆で結ばれた親子のように映ることが大きな見所だ。

 さらなる注目はオーディションで選ばれた在日ブラジル人たちを演じる若手俳優で、吉沢亮の妻を演じるまらい果、鬼気迫る表情をするサガエルカスを筆頭に、それぞれが演技初挑戦とは思えないほどに達者だ。あまりに自然な存在感のため、それもまた「まるでドキュメンタリー」のように錯覚さえする理由だったのだ。

 さらに、登場するだけでホッと安心できるような役柄の佐藤浩一、怖すぎて一周回ってブラックコメディ的で笑えてくる松重豊、凶暴な悪役ながら複雑な内面を想像させるMIYAVIと、脇を固める俳優も豪華かつ完璧なキャスティング。それぞれが演じる役柄がどのように交錯し、物語に関わっていくのかも、楽しみにしてほしい。

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