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【シリーズ】令和北海道開拓使

『ゴールデンカムイ』作者・野田サトル氏の次作に苫小牧市が異例の要請

『ゴールデンカムイ』作者のデビュー作再開に苫小牧市が異例の要請の画像1
『スピナマラダ!』集英社 公式サイトより

 擦り切れたロングコートと軍靴、口には年代物のパイプ。年明け連休の混雑気味の新千歳空に一見、風変わりな出で立ちの若者が佇んでいた。しばらく考え込んで気づいた。その若者は人気マンガ『ゴールデンカムイ』(集英社)の主人公・杉元佐一のコスプレヤ―だった。

 2022年4月に連載終了したゴールデンカムイは、マンガ家・野田サトルが手掛け、人気作に。北海道を舞台とした作品で、連載が終わった現在でも熱烈なファンが多い。数年前まで、網走刑務所など作品に所縁のある北海道の名所に“聖地巡礼”するファンも多かった。

「地元の青年団体と一緒になって、網走刑務所でイベントをやったこともある。網走にあるオホーツク流氷館という場所には、作品をリスペクトするファンたちの書置きがたくさん残っている」(地元観光業界関係者)

『ゴールデンカムイ』は北海道の歴史やカルチャーを広く知らしめる名作となったが、連載終了後、作者の野田氏は次のプロジェクトに取り組み始めているという。2011年に連載開始し1年で打ち切りとなってしまった『スピナマラダ!』(集英社)の連載再開だ。

『スピナマラダ!』は高校ホッケーを題材としたスポーツマンガ。題名はホッケーの技と北海道弁の「なまら」をもじった造語だ。なお「なまら」には、「とても」や「すごい」という意味がある。

 野田氏は2022年下旬、作品の取材のために北海道・苫小牧市を訪れたという。どうやら『ゴールデンカムイ』連載開始前から連載デビュー作『スピナマラダ!』の再連載を渇望していたようで、晴れてそのために取材活動に動き出したということだ。

 ではなぜ苫小牧なのか。あまり知られていないが、新千歳空港から車で20~30分ほどの距離にある苫小牧は、ホッケーがとても盛んな地域だ。国技スポーツならぬ“市技スポーツ”になっていると言っても差し支えない。

 積雪量が比較的少なく、沼地が多い苫小牧には、冬になると自然と氷が張り天然のリンクが出来上がる環境があった。1925年には市内にスケート協会が設立され、1931年には苫小牧市に拠点を構える王子製紙苫小牧工場のアイスホッケー部も誕生している。平昌五輪の女子代表23人のうち、苫小牧出身や同市チーム所属選手は10人もいた。なお、苫小牧市は日本におけるカーリング発祥の地だともされている。同市のアイスホッケー選手が、カナダ遠征の際にその面白さに惹かれて、用具を持ち帰って普及させたという。

 興味深いのは、野田氏が作品連載を開始するかもしれないという情報を聞きつけて、苫小牧観光協会が市と協働し、集英社に連携を提案したことだ。集英社側は「連載前に自治体から声がかかったのは初めてだ」と地方メディアの取材に答えている。

 地方の魅力は“生のまま”だとなかなかに伝わりにくく、そのモノ・コト・場所の魅力は作家が描くストーリーとして描写されてこそ人々の心に深く刻み込まれる。マンガ作品はその貴重な媒介だ。『スピナマラダ!』は今春の連載再開を目指しているとのこと。野田氏の作品の復活はもちろん、地域ホッケー文化のさらなる飛躍が楽しみだ。

 

 

河 鐘基(ジャーナリスト)

リサーチャー&記者として、中国やアジア各国の大学教育・就職事情などをメディアで発信。中国有名大学と日本の大学間の新しい留学制度の設置などに業務として取り組む。「ロボティア」「BeautyTech.jp」「Forbes JAPAN」など、多数のメディアで執筆中。著書に「ドローンの衝撃 」(扶桑社新書) 「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」 (扶桑社新書)、共著に「ヤバいLINE 日本人が知らない不都合な真実」 (光文社新書)など。

Twitter:@Roboteer_Tokyo

はじょんぎ

最終更新:2023/01/15 20:00
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