日刊サイゾー トップ > エンタメ > ドラマ  > 『リバオケ』も評価上げ…日テレドラマ強し

今期は日テレドラマ大勝利? 門脇麦×田中圭『リバーサルオーケストラ』も評価上昇中

今期は日テレドラマ大勝利? 門脇麦×田中圭『リバーサルオーケストラ』も評価上昇中の画像
ドラマ公式サイトより

 冬ドラマもそろそろ多くの作品が最終回を迎えつつあるが、今期もっとも好調だったとの声が上がっているのが日本テレビのドラマだ。

 安藤サクラ主演・バカリズム脚本の『ブラッシュアップライフ』(日曜22:30~)はスタート当初から評判がよく、冬ドラマのベストに挙げる関係者も多かった。これは視聴者も同じところで、オリコンによる「ドラマ満足度ランキング」では放送開始当初から高い水準を維持し、第2話目以降は90ポイント以上(100ポイント満点)で2位をキープ。第6話目で99ポイントにまで上昇し、首位(『罠の戦争』と同率1位)となり、3月3日発表の最新ランキングでは引き続き99ポイント(第7話)を維持して単独首位となっている。見逃し配信のTVerでも好調で、ほぼ連日、TVer総合ランキングのトップ10内にいる状態だ。お気に入り登録者数では今期ドラマで唯一の100万人超え(3月7日時点で116万人以上)となっている。

 嵐・櫻井翔主演の『大病院占拠』(土曜22:00~)はたびたび指摘されているとおり、コア視聴率が絶好調で、今期ドラマでは唯一4%台をキープ。ツッコミどころのある演出・展開を軸に、「鬼を演じているキャストは誰か」「警察内の裏切り者は誰か」といった考察要素を織り交ぜることで、たびたびトレンド入りするSNSとの相性の良さもある。なお、コア視聴率では『ブラッシュアップライフ』も2月26日放送の第8話で3.8%を記録しており、『大病院占拠』と『ブラッシュアップライフ』で冬ドラマのコア視聴率1位と2位という並びが固定化しつつある。

 そして、日テレドラマのゴールデン・プライム帯ドラマはもうひとつ、門脇麦が主演する『リバーサルオーケストラ』(水曜22:00~)があるが、あまり指摘されないものの『リバオケ』も実は好調だ。コア視聴率では2月22日放送の第7話で2.5%を記録しており、『罠の戦争』(カンテレ制作・フジテレビ系)の第6話(2月20日放送)の2.4%を上回る水準だ。また、「T層」と呼ばれる13~19歳の視聴率では、2%台がひしめく中で『大病院占拠』が5%を記録するなどずば抜けているが、『リバオケ』は『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)を上回って2位になることもある。

 加えて注目なのが、オリコンのドラマ満足度ランキング。第4話では68ポイントで9位とあまり目立たなかったが、第5話で88ポイントに急上昇し、3位へと大ジャンプ。最新ランキングでも、『リバオケ』第6話は、『大奥』(NHK総合)第6話の追い上げによって4位にダウンしたものの、87ポイントと前話とほぼ同水準で推移しており、作品への満足度が高まっていることがうかがえるのだ。

 実際、視聴者からは「最近毎回泣いてる」「登場人物に愛着が湧いてきたからこのままずっと続けてほしい」といったような声も聞こえる。なぜ『リバオケ』はここにきて評価を上げているのか。ポイントは「安心して見られるストーリー」「丁寧な演出と俳優の演技」と音楽の掛け合わせだろう。

 元天才ヴァイオリニストと変人マエストロが地元のポンコツオーケストラを立て直すという“一発逆転の音楽エンターテインメント”という設定に、放送前は、『のだめカンタービレ』(2006年)や韓国ドラマ『ベートーベン・ウィルス』(2008年)といった作品のパクリではないかとのあらぬ疑いがかけられた。また序盤の時点では、「表舞台から姿を去り、市役所職員として働いている元天才ヴァイオリニストが、傲岸不遜な指揮者と、その父親の市長によって半ば強引に地元オーケストラで演奏することになり、演奏の喜びを再確認して表舞台に戻る」「のほほんとしたポンコツオーケストラが、冷血漢のようでいて実は熱血系で優しい面もある指揮者の指導によって生まれ変わる」「ライバルの邪魔が毎回のように入るが、うまく逆転する」といったストーリーは既視感が強く、“ありふれた音楽ドラマ”の印象は否めなかった。

 だが、ある種ベタにベタなストーリー展開は、見る者に安心感を抱かせる。特に『リバオケ』の場合、基本的に善人が中心で、嫌な気分にさせられるような悪意の持ち主が登場しない(に等しい)点も大きい。容赦ない物言いに周囲の反発を招く指揮者の朝陽(田中圭)は実際のところは「ツン」成分多めのツンデレ系キャラで、当初はややひねくれキャラだった蒼(坂東龍汰)もすっかり素直になってみんなのために率先して動くように。主人公の初音(門脇麦)に敵意をのぞかせ、ライバルキャラとして存在感を見せていた幼なじみの彰一郎(永山絢斗)も、初音の“トラウマ”になっていた「チャイコン」(チャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルト)を初音が見事克服して素晴らしい演奏を聴かせると、憑き物が落ちたように“いい子”に転身。恋のライバルになることもなく、初音のよき友人となった。初音、朝陽らの玉響(児玉交響楽団)をつぶそうと動く市議会議員の本宮(津田健次郎)も、あれこれと嫌がらせをするものの、一線は超えない。冷や冷やさせられることなく、ほっこり感を安心して楽しめるという意味では、今期は『ブラッシュアップライフ』以外は『リバオケ』くらいしかないのではないだろうか。

 また、第2話では蒼、第4話ではみどり(濱田マリ)、第6話では玲緒(瀧内公美)、第8話では穂刈(平田満)と、登場人物の抱える問題を丁寧に掘り下げながらストーリーを進め、それによって玉響の団員の絆がさらに深まっていき、よりよい演奏へとつながっていく……というところをじっくり描いているのも好評だ。かつて神童と謳われた初音も、過去のトラウマにぶつかり、それが原因で団員と対立する場面もあり、「天才と、天才ではなかった者」の対比も掬い上げながら、「音楽の楽しさ」という核で解決していく。丁寧にエピソードを積み重ねていったことで、視聴者の“満足度”も徐々に上昇していったのではないだろうか。

 物語をおおざっぱに説明してしまうと「ありきたり」なただの努力と仲間の物語のように聞こえてしまうが、丁寧な演出と、門脇麦を始めとした実力派ぞろいの俳優陣による演技によって、視聴者を、登場人物たちを応援したい気持ちにさせる作品なのだ。朝陽に「冷血漢、鉄仮面、バ~カ!」と子どものような悪態をつく初音の愛らしさ、認知症のために自分のことを穂刈と勘違いしている穂刈の妻のためにそっと手をつないでいた朝陽の繊細なやさしさ……細部にこそ、この作品の魅力が詰まっている。そして俳優陣が何カ月もの間にわたって楽器や指揮の練習を積んできたことが生きる演奏シーン。ベタで王道なドラマだからこそ、音楽のシーンが最大のカタルシスを生むという展開がばっちりハマる。

 最終回を目前に早くも“ロス”を心配する声が続出している『ブラッシュアップライフ』、10代を中心に支持を集めている『大病院占拠』、そして後半戦に入って評価を上げている『リバーサルオーケストラ』。今期は、タイプの異なる3作をいずれも成功させた日テレドラマのひとり勝ちとなりそうだ。

新城優征(ライター)

ドラマ・映画好きの男性ライター。俳優インタビュー、Netflix配信の海外ドラマの取材経験などもあり。

しんじょうゆうせい

最終更新:2023/03/08 12:00
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

水原解雇に間に合わなかった週刊誌スクープ

今週の注目記事・1「水原一平“賭博解雇”『疑...…
写真
イチオシ記事

さや香、今年の『M-1』への出場を示唆

 21日、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で「賞レース2本目やっちまった芸人」の完結編が放送された。この企画は、『M-1グランプリ』(同)、『キ...…
写真