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松本人志を『ワイドナショー』卒業に追い込んだ深刻な問題を元芸人目線で分析

松本人志を『ワイドナショー』卒業に追い込んだ深刻な問題を元芸人目線で分析の画像1
フジテレビ『ワイドナショー』公式サイトより

 ダウンタウンの松本人志さんが3月19日の放送をもって、約9年半にわたりレギュラーとして出演してきた「ワイドナショー」(フジテレビ系)を卒業することとなった。卒業の理由としては事前に憶測も含めていろいろな理由が飛び交ったが、今回の松本さんの卒業スペシャル回の後半に、卒業の理由と心境を松本さん自身の口で語ってくれたのだ。

 松本さんが語った卒業の理由は「最初はストレス発散になる番組だったのだが、それがいつの間にかストレスを溜める番組になっていった」ということだった。松本さんは「ネットにおける切り取り記事問題」をストレスが溜まる主な理由として取り上げた。

 番組内で語られた松本さんの発言が事実とは違った切り取られ方をし、本意が伝わらない形でネットニュースとして報じられることでストレスが蓄積されていったらしい。しかも番組自体を見ずに、ネット記事のタイトルや切り取り記事を読んだネットユーザーから心ないコメントを浴びせられることにも、心が疲弊していったそうだ。松本さんはこの切り取り記事問題に対し「ネットニュースが何とかなれば、戻ってきたい」と吐露し、どれだけこの問題が深刻であったのかが伺える。

 さらにもうひとつ、裏番組として放送されていた「サンデージャポン」(TBS系)と視聴率を比較され「負けている」とニュースにされ続けていたことも心が疲弊した理由だったそうだ。視聴率というのは、大きなくくりで視聴率を発表しているわけではなく、年代別や性別、地域などに分けて視聴率を発表しており、全体的に見ると「ワイドナショー」の方が視聴率が低いかもしれないが、「コア視聴率」と言われている13歳から49歳の購買意欲の高い層の視聴率は「ワイドナショー」の方がダブルスコアで勝っており、松本さんのように時代を見据えて、流行り廃りを意識してきた人間にとっては、一番重要な「コア視聴率」で勝っているにも関わらず、「負けている」と報道されることが悔しくてたまらなかったのだろう。

 そもそもこの「ワイドナショー」という番組は「普段スクープされる側の芸能人が、個人の見解を話しに集まるワイドショー番組」というコンセプトを持っており、さらに番組の公式サイトには「さまざまなテーマで徹底討論。普段、コメンテーターとして出演することのない有名人たちが、持論を展開していく」などと記載されており、スクープされる側の人間がスクープされない立場から自由に見解を述べる番組だったのが、番組自体が報じられることにより、コンセプト自体が覆されてしまったのだ。

 この番組の醍醐味は上記のように普段はコメンテーターとして出演しない有名人の意見や持論を聞けるという点であり、その意見や持論に対して意見を述べるのはナンセンスな話なのだ。

 外野からの誹謗中傷、心ないコメントを出演している有名人たちが気にすると、番組のコンセプトである個人の見解を話しづらくなってしまう。そうなると有名人たちは自身の心や立場を守る為に、出来る限り世間に叩かれないように心がける。すると個人的な見解は影を潜め、世の中と同じ意見を言ったり、平和的な見解しか述べなくなるのだ。そんな番組、誰が見たいというのだ。

 テレビ番組というのは多かれ少なかれ刺激的でなければいけない。もちろんこのワイドナショーも松本さんをはじめとする有名人たちが、普段は見せない真面目な姿や、偏った見解を発言するところに魅力と刺激がある。

 ましてや現代のようにコンプライアンスが厳しくなり、バラエティ番組の制限が増えている世の中で、時代に逆らうわけでもなく、コンプライアンスを違反するわけでもなく、他のバラエティ番組とは違う形で刺激を与えてくれるという画期的な番組だということは視聴者の誰もがわかっていたはずなのだ。

 それが約9年半という歳月が経つにつれて、有名人だけではなく、視聴者側も個人の意見を発信しやすい世の中になり「自分の見解と違う」「発言が時代に合っていない」などという極端な個人的思想で有名人に牙を剥き、超個人的見解や間違った正義感を対象者にぶつけてしまうのだ。

 個人的な見解は有名人だからこそ需要があるわけで、我々一般人の見解などほぼ需要は無い。もちろん一般人は個人的な見解をしてはいけないと言っているわけではない。

 このコラムもそうなのだが、我々一般人は、不特定多数に見られる媒体で、特に対象者を決めず、個人的見解を述べるのなら何も問題はない。見たい人が見て、見たくない人は見ないという取捨選択ができるからだ。よっぽどのことがない限り攻撃する人間も出現しない。

 さらに根本的な話、個人的見解は有名人だろうが、一般人だろうが誰かに押し付けてはいけない。よく考えて欲しいのだが、「ワイドナショー」に出演している人達は押し付けではなく述べているだけで押し付けてはいない。しかし、松本さんなどに対して個人的にコメントを送るユーザーは個人的な見解の押し付けでしかないのだ。ましてや否定的な意見や見解の押し付けならなおさら辛い。

 ちなみに「否定的な意見」というのは、最も頭を使わずに出てくる“意見”なのだ。誰かが発信した意見を否定するのは本当に楽で、しかも優越感に浸りやすい。だからネット上ではさも頭が良いと言わんばかりに誰でも思いつきそうな否定的意見を気持ちよさそうに述べている輩が多いのだ。

 否定されることが嬉しい人なんていない。それは否定的な意見を述べている人も同じだ。否定するのが好きな人達よ、先ほども書いたが、自分の意見が本当に正しいと思うのなら、特定の人間に個人的に述べるのではなく、関係ない所でその個人的見解を披露していただきたい。

 そして出来ることなら、否定する対象にはその意見が届かないようにしてほしい。誰も傷つきたくないし、人間はそんなに強くない。医学的にも叱られるより褒められた方が人間は成長するのだ。

 ということで、手始めにこのコラムを褒めるところから始めようではないか。よろしくお願いします。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/03/28 07:00
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