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松本人志「誰も損しない大会だった」──『THE SECOND』の“楽しさ”と東野幸治の司会術

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(左)アンバサダーを務めた松本人志/(右)司会の東野幸治

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週(5月14~20日)に見たテレビの気になる発言をピックアップします。

松本人志「誰も損しない大会だったんじゃないかなと思います」

 とても楽しい大会だった。21日に放送された『THE SECOND』(フジテレビ系)。結成16年以上の漫才師のナンバーワンを決める賞レースである。

 漫才の賞レースといえば『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)だが、現在、同大会にエントリーできるのは結成15年までの芸人だ。M-1では芸人たちの漫才に挑む姿がしばしばエモーショナルに演出されるが、15年目の芸人は「ラストイヤー」と呼ばれ、ある種の“悲劇性”が強調されたりする。

 なので、結成16年以上の漫才師が出場できる大会がはじまると最初に聞いたときは、そんな“悲劇性”をさらに強調した大会になるのだろうかと思った。一度敗退した芸人たちが、改めて勝ち星をつかむためのセカンドチャンス。そんなM-1ストーリーの続きが紡がれるのだろうかと感じた。

 が、放送された『THE SECOND』を見終わって残ったのは、楽しかったという印象だった。

 もちろん、番組はこの大会が漫才師たちにとってのセカンドチャンスであることをしばしば強調していた。オープニングのVTRでは、最終決戦に残った芸人たちの声でこれまでの不遇が語られた。各組の紹介VTRでは、これからネタをする芸人たちが過去に掴み損ねたファーストチャンスを語っていた。

 その意味で、悲劇の物語のようなものはたしかに『THE SECOND』という番組を枠付けている。そういうフレーミングは行われているのだけれど、では、実際の中身はどうだったかというと、あまり悲劇性は感じなかった。むしろ、楽しかった。敗れた漫才師が悔しさで目元をうるませているようなシーンもあったし、優勝したギャロップの林健が「くすぶってるみんな、夢むちゃくちゃあるよ!」とトロフィーを掲げて呼びかけたりもした。そういった個々のシーンにグッときたりもしたし、もちろん出場している芸人たちにとっては楽しめない状況もあったりするのだろうけれど、テレビを見ている側としては全体として楽しかった。

 そんな感覚は、今大会にアンバサダーとして関わっていた松本人志(ダウンタウン)の、エンディングでのひと言とも関係しているはずだ。

「誰も損しない大会だったんじゃないかなと思います」

 誰も損をしなかった。それぞれが持ち味を見せ、今後のさらなる活動につながるような活躍を見せていた。そんな印象が、楽しい大会だったという感覚を視聴後に残したひとつの理由だろう。

 では、そんな誰も損をしない楽しい大会になったのはなぜか。さまざまな要因があるはずだ。もちろん、漫才師たちのネタが面白かったのは言うまでもない。ネタ時間が6分とM-1より長めなことで、少し余裕をもったネタの構成が多かったのも理由かもしれない。ネタだけでなく、中堅の芸人たちの“平場”の強さみたいなのも番組をずっと面白くし続けた。

 漫才師たちのイメージを左右しかねない強めのネガティブなコメントが出にくかったという点で、審査員が観客だった点も大きいだろう。難しい顔でネタを見るベテラン漫才師はネタの途中でカメラに抜かれないし、そもそもその場にいない。ネタ中のカメラワークはほぼ漫才師だけを映していたため、笑う松本の表情を見て「これは面白いネタなんだ」みたいな確認をしなくてもすむ。

 そのうえで、『THE SECOND』が楽しい大会になった理由として、やはり彼らの存在は欠かせなかったと思う。アンバサダーの松本人志と、司会の東野幸治だ。

松本人志「アンバサダーって何?」

 松本人志は、アンバサダーとして今大会にかかわっていた。番組のオープニングで自ら「アンバサダーって何?」とツッコんでいたけれど、番組の象徴的な存在ということだろうか。賞レース時代の『THE MANZAI』(フジテレビ系)のビートたけしが近いのかもしれない。あのときもたけしは番組の象徴的存在として出演し、審査員ではないもののMCの横にいた。

 ただ、今回の『THE SECOND』での松本の立ち回りは、『THE MANZAI』のたけし以上に抑制的だったように思う。トーナメント方式の今大会。各対戦がはじまる前に松本は東野からコメントを振られるが、そのとき松本は審査に影響することはまったく言わない。

 たとえば、初戦の金属バットとマシンガンズの対戦の前には、「武器としてはマシンガンズでしょうけど、武器ではないので。番組としてのトップバッターということもふまえ、どんな戦いになるのでしょうか。めちゃめちゃ楽しみですねぇ」と笑いも交えつつコメント。同じ大阪の吉本興業所属のギャロップとテンダラーの対戦前には、「これも熾烈だね。どっちが勝っても負けても悔しいね」と語った。

 観客の視点を左右するようなことは言わず、しかし見どころは的確に伝える。何を言っても「あの松本人志の言葉」として受け止められる立場にありながら、非常に抑制的なコメントを丁寧にしていたのが印象的だ。やはり、審査員を観客が務めていた状況、芸人の審査員以上に自分の言葉で審査が左右されやすい状況が、そんな抑制的なスタンスにつながったのだろう(ただ1点、準決勝のマシンガンズのネタ後のコメント「プロの審査員なら、ちょっと、うん……っていうところもあるかもしれない」などについては、決勝の審査に影響しなかっただろうかとは思う)。

 さらに、ネタを終えた漫才師たちへのフォローもする。超新塾には「これから仕事結構増えるんじゃないかな」と言い、マシンガンズに対しては「たぶん、平場強いやろなと思ったよ」とコメントする。いずれも、今後の彼らの仕事につながるようなひと言だっただろう。

 そしてもちろん、番組を面白く盛り上げていく。たとえば、今年の『R-1グランプリ』(フジテレビ系)でのモニターのトラブルが“やらせ疑惑”を招いたことを受け、今大会の中で何度もそれをイジった。オープニングで「(この大会は)R-1みたいにやらせではないわけですから」と言い、金属バットとマシンガンズが僅差の戦いだったことに対しては「2点差でしょ? やらせでしょ」と触れる。マシンガンズと囲碁将棋とギャロップが同点になったときには「3組が同点になるってさ、絶対にやらせだよね。わかりやす~。バレバレやん」とコメントする。

 いわば、やらせイジりが“縦軸”になっていた。ここでも、ネタや芸人の評価に結びつかないようなコメントで番組を盛り上げていくといった配慮があったのかもしれない。

 アンバサダーとは、番組の象徴とは、どういう立ち位置だったのか。松本が示したのは、審査員を務める観客のジャッジをできるだけ左右しないように、番組を盛り上げることだった。なるほど、観客審査という特徴をもつ今大会において、それはたしかに番組を象徴するような振る舞いだったのかもしれない。

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