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東野幸治に学ぶ――吉本芸人が“会社でのし上がる方法”

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東野幸治(Getty Images)

 東野幸治と平成ノブシコブシ・吉村崇によるYouTubeチャンネル『東野・吉村のVTuberはじめました!』が5月29日に開設された。東野と吉村は、美少女アバターのモーションキャプチャーを担当する。

 吉本興業が展開するメタバース事業の一環として誕生した同チャンネル。地上波ではできないようなリアクション芸を、VTuberとして披露するというコンセプトだ。ここに登用された吉本芸人について、あるメディア関係者はこう言う。

「吉本が新メディアやデジタル系の新事業を始める際の第一弾コンテンツに、東野さんが起用されるケースは多いんです」

 たとえば、2019年にAmazonの音声配信サービス「Audible」に吉本興業が参入した際には、東野は『よしもと芸人音声データ』というさまざまな芸人にインタビューするコンテンツを担当している。また、ゲーム配信プラットフォーム「mildom」に参入した際も、東野は『吉本自宅ゲーム部』という配信番組に出演した。

さらに、22年に吉本興業系列の放送局「BSよしもと」が開局した際も、東野は開局記念特番『Cheeky’s a GoGoGo!6時間生放送スペシャル』のMCを担当。さらに、開局1周年特番のMCも担当し、同局の“宣伝局長”に就任した。

 とかく、吉本の新規事業における“スターター”を任せられることが多い東野。一体どういう事情があるのだろうか?

「まず、東野さんが地上波の複数の番組でMCを務めるほどの知名度があるということが大前提ですが、そのうえで基本的に仕事をあまり選んでいないというのがあります。さらには、あらゆるエンタメに興味関心を持っており、積極的にいろいろなコンテンツに触れているというのも大きいですね。

自身のラジオ番組『東野幸治のホンモノラジオ』(ABC)では、毎週のように鑑賞したネット配信番組や映画、ドラマなどの感想を話していますし、リスナーからおすすめのエンタメを募集して、インプットへの貪欲な姿勢も見せている。新しいメディアを始める際などは、東野さんはまさに最適な人材なんです。

 東野さんに近いMC系の芸人として、たとえば今田耕司さんもいますが、今田さんの場合は、自分の興味があるものがハッキリしていて、それ以外のエンタメに関する番組にはほとんど出ない。一方、東野さんはよくも悪くもこだわりがなく、だからこそフレキシブルにいろいろなものを吸収できるので、吉本としても新事業のスターターとして重宝しているわけです」(同)

 数千人の芸人が所属する吉本興業だが、新事業立ち上げ時に毎回のように東野ばかりを起用するというのは、あまりにも偏りすぎていると見ることもできるだろう。裏を返せば、東野のようなスタンスで仕事をすれば、ほかの芸人にも多くのチャンスが訪れるはずだ。

「もちろん東野さんほどの知名度を得るのは大変なことですが、中堅芸人クラスであれば、東野さんのようなエンタメへの貪欲な姿勢を見せることで、仕事がどんどん増えていくのは間違いないでしょう。それこそ、今回VTuberとして東野さんの相方となったノブコブ吉村さんなどは、東野さんに近いスタンスだと思います。

 つまり、現時点では吉村さんこそが“ポスト東野”最右翼ということですね。平成ノブシコブシのように劇場出番がほとんどなく、メディア仕事が軸となっている芸人にとっては、生き残りのための正しい戦略と言えるでしょう。

 今後もデジタル系の新規メディア参入は続くでしょうし、そのスターター役を東野さんだけではまかなえなくなってくる可能性も高い。そういう意味では、吉村さんが仕事を増やしていくことは間違いないでしょうし、ほかの中堅芸人にもチャンスが回ってくるはず。普段から、さまざまなエンタメや新規メディアへの興味を示していくことで、吉本に重宝される芸人になっていくのではないでしょうか」(同)

 ネタに力を入れている芸人であれば、結成16年以上を対象とした『THE SCOND』や、芸歴制限のない『キングオブコント』に打ち込むことで、ブレイクのチャンスを掴むことができる。一方で、ネタをやっていない芸人たちがチャンスを掴むには、東野幸治になることが一つの道となる。今後、東野幸治を目指す中堅芸人が、次々と出てくることとなりそうだ。

 

浜松貴憲(ライター)

1980年生まれ、東京都出身。大学卒業後、出版社に入社。その後、いくつかの出版社を渡り歩いた末に、現在はフリーライターとして、テレビ番組、お笑い、YouTubeなど、エンターテインメント全般について執筆している。

はままつたかのり

最終更新:2023/06/01 11:00
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