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『最高の教師』松岡茉優“九条”以外にも「人生2周目」の人物は存在する?

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ドラマ公式サイトより

 松岡茉優主演の日本テレビ系土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』の第3話が7月29日に放送された。高校教師・九条里奈(松岡茉優)が自身に殺意を抱く生徒を見つけ出す趣向の作品でありながら、『最高の教師』と名付けられていることに筆者は当初違和感を抱いていたが、悪事が蔓延するクラスを変えるべく、穏やかで、賢く、他者の心情を汲み取れる優しさがのあまり犠牲となってきた“弱者たち”を救う第3話の九条の姿に、タイトルの意味を理解できた思いだ。

 鳳来高校3年D組の担任教師・九条が卒業式にD組の何者かに突き落とされ、「死にたくない」と願った瞬間、1年前の始業式に時間が巻き戻るというところから始まる『最高の教師』。第2話のラストでは、「九条里奈を殺害する」との脅迫文句が黒板に書かれるという1周目の人生にはなかったイベントが発生したところで幕が閉じたが、第3話ではさらに相楽琉偉(加藤清史郎)や西野美月(茅島みずき)ら反九条派の主導によって「担任変更の嘆願書」がまとめられ、九条がD組から追放される危機に。

 だが、九条が教室に仕掛けた監視カメラの動体検知を手際よく止めた首尾のよさから、九条はすぐに工学研究会の眉村紘一(福崎那由他)と日暮有河(萩原護)が殺害予告の犯人だと見抜く。2人は、九条がいじめに遭っていた鵜久森叶(芦田愛菜)を教室内で堂々と救ってみせたことで、自分たちが迷惑を被っていると理由を述べる。そんな2人に、九条は相楽たちから受ける同調圧力から脱する手助けを持ちかけた。

 2人は九条が追放されれば、相楽たちに占拠された研究会の部室が取り戻せると甘い見通しを立てていたが、相楽に譲る気はゼロ。それどころか「ネクスト鵜久森」と次のいじめのターゲット候補に名指しされる始末だった。九条の言葉どおり、行動を起こさなければ相楽たちの横暴さに踏みにじられる一方だとようやく気づいた眉村と日暮は、九条を信じて相楽たちとの断交に踏み切る。その勇気を生み出したのは、彼らの工学研究への純粋な愛であり、その研究を共にする仲間がいるということだった。2人は「しっかりハブいてほしい」と相楽に懇願し、関わり合いになりたくないのでむしろ無視してほしいと願ったが、同調圧力でクラスを支配してきた相楽にとって、この明確な拒絶は相当なダメージになったはずだ。

 そして「ただ変わるのを待つんじゃなくて、自分で変えていかなくちゃいけない」と信じる鵜久森もまた、優等生であるという立場から九条追放の嘆願書をとりまとめる役を押し付けられた阿久津由利(藤﨑ゆみあ)と東風谷葵(當真あみ)を説得する。そして「友達になりに来た」という鵜久森の言葉を受け、阿久津と東風谷は嘆願書を撤回し、2人も反九条派と一線を引く。

 第3話は、見て見ぬフリをする事なかれ主義に疑義を呈するとともに、仲良くしたいと思ってもいない人間に無理に合わせる必要はないし、傷つけられる必要もない、大切にしたいと思っている人との関係を大事にすればいいというメッセージの回だった。それは、九条とちゃんと向き合うことを決め、離婚を撤回したいと伝えた夫の蓮(松下洸平)との関係にも現れていただろう。

 第3話では、D組の生徒が一枚岩ではなく、むしろ大半の生徒が相楽たちを疎んじながら、同調圧力に流されている様子も確認できた。今後、鵜久森のいじめを傍観していた“中立派”の取り込みが加速するかもしれない。九条派が主流となったとき、教室はどのように変貌するのだろうか。

 1周目の人生で九条を突き落とした犯人はいまだ手がかりはない。ただ、3年後に生徒たちがインタビューに応じるというスピンオフドラマ『3年後の僕たちは』(YouTubeやTVerで公開)では、眉村と日暮、そして第2話で九条派となった瓜生陽介(山時聡真)と向坂俊二(浅野竣哉)の4人が九条の教えを振り返っており、この4人は容疑者候補からは消えるだろう。第3話で一転怪しさを見せたのは、九条がどう打って出るか「楽しみ」という理由だけで担任変更の嘆願書に進んでサインした星崎透(奥平大兼)。学校生活を退屈だと感じていた星崎は九条を「ヤバい」と称え、九条の映画を撮りたいとすり寄ってきたが、それはつまり、九条の行動が星崎の満足するものでなかったら……という可能性もある。

 さらに、第3話ラストでは九条が蓮に「2周目の人生」であることを伝える場面があったが、九条が2周目の人生を歩んでいることはつまり、他のキャラクターに同様の人間がいた可能性もあるということだ。そして、九条を突き落とした犯人が「2周目」だった可能性もあるということでもある。九条は眉村と日暮を気にかける理由を説明する際、「恨まれたくないからです。振り返った時に『青春を無駄にさせられた』と」と話していたが、相楽たちの傍若無人な振る舞いの犠牲者が「2周目の人生」を歩み、1周目で我関せずだった九条に怒りの矛先を向けて突き落とした……ということも本作ではありうる設定だろう。いずれにせよ、現段階では特定する情報はまだまだ少なすぎる。

 もうひとつ注視したいのが、九条の同僚にあたる鳳来高等学校教師陣の動向だ。公式サイトの相関図では、3年D組の生徒と並んで6名の教師が名を連ねているが、第3話まで誰ひとり存在感を示していない。さらに、担任を持っていない英語教師の巡渉(粟大和)と数学教師の宮崎彰(黄地裕樹)の2人だけ詳細情報が公開されていないのも気になる。九条の数奇な人生は生徒によるものなのか、それとも……。変わりつつある3年D組だけでなく、九条の周囲にも意識を巡らせながら成り行きを見守りたい。

■番組情報
土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された
日本テレビ系毎週土曜22時~
出演:松岡茉優、芦田愛菜、奥平大兼、加藤清史郎、當真あみ、茅島みずき、山時聡真、本田仁美(AKB48)、窪塚愛流、福崎那由他、田牧そら、山下幸輝、寺本莉緒、萩原護、詩羽、田中美久(HKT48)、浅野竣哉、丈太郎、柿原りんか、橘優輝、莉子、田鍋梨々花、夏生大湖、藤嶋花音、岩瀬洋志、阪本颯希、岡井みおん、藤﨑ゆみあ、のせりん、細田善彦、長井短、サーヤ(ラランド)、犬飼貴丈、荒川良々、松下洸平
脚本:ツバキマサタカ
音楽:松本晃彦
主題歌:菅田将暉「ユアーズ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
演出:鈴木勇馬、二宮崇
チーフプロデューサー:田中宏史
プロデューサー:福井雄太、鈴木努、秋元孝之
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
公式サイト:ntv.co.jp/saikyo

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2023/08/05 12:00
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