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朝ドラWATCHコラム『らんまん』第21週

『らんまん』お互いを尊重し合う槙野夫婦と、誰ひとりおろそかにしない物語(第21週)

『らんまん』お互いを尊重し合う槙野夫婦と、誰ひとりおろそかにしない物語(第21週)の画像
イラスト/渡辺裕子

 図鑑を自費で発行し続ける万太郎(神木隆之介)のせいで、槙野家の借金は積もり積もって500円。この状況で「実は我が家、ギリッギリなんです」と寿恵子(浜辺美波)に告げられても採集旅行を計画する万太郎、本当にいくつになってもマイペースだな!としか言いようがない。日本中に植物学仲間もでき、植物のことだけ考えていられる生活はそりゃあ楽しいだろうけれど、寿恵子に負担がかかりすぎじゃないですか。

 働かずにお金を使う夫を横目にコツコツと内職、同時に幼い子ども3人の世話なんて、よくできるなあ、私ならとっくにぶち切れてる。忙しい家事の最中、やんちゃな子どもたちに洗濯の邪魔をされた時は笑っていた寿恵子が、火のそばでいたずらした子は厳しく叱りつけていたの、とても「お母ちゃん」だなと思いました。子どもの怪我が何より心配なんですよね。お母ちゃんは何がこわいの?と尋ねる子どもたちに「あなたたちに何かあること」と答える視線の先には、もうひとりの娘の思い出の品がある。寿恵子が外で働かずに、わずかな金額にしかならない内職をし続けたのは、子どもたちから目を離して何かあったら……と、恐れていたからなのかな。

 しかしいよいよ借金でどうにもならなくなった寿恵子が訪れたのは、叔母のみえ(宮澤エマ)が営む料亭。寿恵子が、今週も名前が出てきた高藤(伊礼彼方)を、こっぴどく振った時以来らしい。あの件は彼女の顔をつぶして、料亭にも少なからず影響があっただろうし、激怒されても仕方ない……でも叔母さんは、会わない間もまつ(牧瀬里穂)から寿恵子たちの様子を聞いて、心を痛めていたんでしょうね。料亭で仲居として働くことを提案したのも、「もし寿恵子が頼って来たら」と、ずっと考えていたんだろうな。「園ちゃん」と、亡くした子どもの名前をちゃんと覚えていてくれるほど、寿恵子の気持ちを思って、一緒に悲しんでいたんだろうな。短いシーンと言葉だけれど、しばらく物語に出ていなかったみえの、見えなかった時間まで伝わりました。

 この、料亭を寿恵子が訪ねる回では、万太郎は数秒しか出番がなかったんですが、物語上、全然違和感がなかった。万太郎が主役ではあるけれど、意を決してみえに会いに来た寿恵子も、それを温かく迎えたみえも、様子をのぞいていた料亭の人々も、客も、みんながそれぞれの人生の主役として生き生きしているから、気にならない。誰ひとりおろそかにしない、とても丁寧に作られているドラマだとつくづく思います。

 すべての人が主役なのは、普通のドラマなら万太郎の敵として描かれそうな田邊教授(要潤)についても同じ。海で亡くなるという衝撃的な最期を迎えた彼も、ただの敵ではなく、ちゃんと自分の人生を生きていた、だからいなくなったことがとても悲しい。そして、深い悲しみを人には見せず、愛する旦那様に頼まれたからと彼の蔵書を持って長屋へやってきた聡子(中田青渚)、今まででいちばん美しく見えました。これから自分の人生を生きていくと、覚悟を決めた人の美しさ。いつかみんなで、浅草でおいしい雷おこしを食べられますように。

 田邊と聡子が、世間から誤解されながらも愛しあう夫婦だったのと同じく、外から見たら「万太郎ひどすぎ」な槙野夫婦もしあわせそう。万太郎が、寿恵子が質屋に預けた八犬伝を引き取りにいったの、よかった。寿恵子が、万太郎に菊を採集してほしくて「こんなことお願いしていいのか」とためらうのも、よかった。相手の好きなものを尊重しあえるの、大切なことですよね。草花が好きな万太郎と、物語が好きな寿恵子、ふたりの「好き」が結晶してうまれたノジギク物語の語り、すばらしかったなあ。そして万太郎は徳永教授(田中哲司)に請われ、7年ぶりに植物学教室に戻ることに。これで給料が入る、借金も返せる、よかったよかった……とは思うけれど、あのどろどろとした大学の人間関係の中で、うまくやっていけるの? 大丈夫、マイペース万太郎?

■番組情報
NHK連続テレビ小説『らんまん
[NHK総合] 月~金 8:00-8:15 / 月~金 12:45-13:00(再放送)
[BSプレミアム・BS4K] 月~金 7:30-7:45 / 土 9:45-11:00(再放送)
[見逃し配信] NHKプラス

出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、笠松将、中村里帆、島崎和歌子、寺脇康文、広末涼子、松坂慶子、牧瀬里穂、宮澤エマ、池内万作、大東駿介、成海璃子、池田鉄洋、安藤玉恵、山谷花純、中村蒼、田辺誠一、いとうせいこうほか
作:長田育恵
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん「愛の花」
語り:宮﨑あおい
制作統括:松川博敬
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
植物監修:田中伸幸
制作:NHK
公式サイト:nhk.jp/ranman

渡辺裕子(イラストレーター/コラムニスト)

テレビ大好きイラストレーター。
テレビや映画について書いてるnote → http://note.mu/satohi11

わたなべひろこ

最終更新:2023/08/28 06:00
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