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川島明・スピードワゴン小沢が明かした『M-1グランプリ2003』の原風景

川島明 そもそもの話 -TOKYO FM 80.0MHz

 7日から始まったラジオの新番組『川島明 そもそもの話』(TOKYO FM)第1回のゲストにスピードワゴン・小沢一敬が登場。お笑い芸人になったきっかけや、スピードワゴン結成以前の名古屋NSC在籍中に出演した『オールザッツ漫才』(毎日放送)でスベリ倒し、西川のりおに「芸人辞めなあかん」とまで酷評されたこと、さらにはその収録現場に川島も居合わせていたことなど、さまざまなエピソードが明かされた。

 中でも2人の話に熱がこもったのは、それぞれが麒麟、スピードワゴンとして共に決勝に揃い踏みした2003年の第3回『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)の話題。スピードワゴンは2年連続、麒麟は第1回に続いて2回目の決勝進出だった。

「(出順が)1番・千鳥、2番・麒麟、3番・スピードワゴンだったんだよね」(小沢)

「伝説の3スベリね」(川島)

 川島は当時のスタジオの様子を「今の『M-1グランプリ』とは重力が違う」「普通の人は立っていられない」という。当時、審査員席に座る松本人志は、まだ40歳。現在の川島と小沢より年下である。審査員席の両端には、島田紳助と中田カウスが陣取っている。そういう時代の話だ。

 スタジオも出囃子も、今と比べれば格段に暗い。そこにトップバッターとして登場した千鳥・大悟の顔も格段に怖い。確かに、客席は終始ざわついているし、スベっているといえる状況だといって差し支えないだろう。審査員の得点は、今では考えられない70点台が連発する。だが、千鳥の漫才が最近のものより劣っているという印象はない。むしろ、スタイルは完成しているように見える。

 4組目にインディーズ時代からの千鳥の盟友・笑い飯が登場すると、お笑い史に残るネタ「奈良歴史民俗博物館」で千鳥より100点以上高い点数をマークし、千鳥は暫定席から消える。大悟は「これが最後のテレビになるのかな~」とおどけてピースサインをしていたが、その目はまるで笑っていなかった。

 千鳥に続いて登場した麒麟も、完成度の高い漫才を披露する。むしろ08~10年くらいの『M-1』で見られた手数重視時代のスタイルに見えるし、特にスベっているようにも見えない。だが、こちらも7人中4人が70点台をつけている。このとき、規定の4分に対してネタ尺が長すぎたことが話題になったが、川島がこの日のラジオで「(スベりすぎて)このまま終わったら死ぬと思ったので6分やった」と明かした。

 その後、当時は大井競馬場で行われていた敗者復活からの勝ち上がりが発表される。この1時間後、日本はアンタッチャブルという化け物漫才師を知ることになる。

 続くスピードワゴン。こちらも会場のウケはあるように見えるが、審査員の大竹まことから「千鳥もそうだけど、会場の空気を嫌ぁ~な方向にもっていきますよね、僕は気持ちいいですけどね」と指摘された通り、得点は伸びなかった。

「このまま全員すべればいいのにと思った」(川島)

「思ってたのよ、今日はこういう日にしようって」(小沢)

 前述のとおり、スピードワゴンの直後に笑い飯が大爆発を起こしてスタジオの空気が一転。結果、フットボールアワーが優勝を果たしている。

 小沢が大会終了後のエピソードを明かす。優勝したフットボールアワーの後藤輝基らと飲みに行ったのだという。「小沢さん今日のネタ、この1年で何回やった?」と聞かれた小沢が「まあ30回くらいやったんじゃない?」と答えると、後藤がこう言ったのだという。

「だったらやっぱ俺ら勝つかもね、このネタ、今年1年で300回やってるもん」

 * * *

 千鳥がいつか語っていたことを思い出す。自分たちの漫才のスタイルを変えないために、昼間のロケ番組や情報番組に望んで出演するようにした。自分たちの知名度を浸透させ、存在そのものをポップにしてしまえば、このスタイルの漫才でも受け入れられるようになる。その戦略はものの見事に成功し、『M-1』初出場最下位から20年かけて千鳥は天下を取った。

 麒麟は結果、03年は8位に沈んだが、この回を含めて5度決勝に進出し、04~06年には3年連続で3組のファイナルまで残っている。その川島も20年後には朝の帯番組のメインMCだ。

 小沢も「あま~い!」で自らの確固たるポジションを築きつつ、漫才ライブを主催して後進の育成にもあたっている。今年5月の『THE SECOND』(フジテレビ系)でベスト8まで勝ち抜き、プレイヤーとしてもバリバリの現役であることを示した。

 こうして時おりメディアで語られる出場者たちの過去の『M-1』エピソードには、いつも現在につながるドラマが詰まっている。

(文=新越谷ノリヲ)

新越谷ノリヲ(ライター)

東武伊勢崎線新越谷駅周辺をこよなく愛する中年ライター。お笑い、ドラマ、ボクシングなど。現在は23区内在住。

n.shinkoshigaya@gmail.com

最終更新:2023/10/09 11:52
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