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『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』第5話 これまでやってきたことがすべて無駄になる話

第5話 12月24日12時03分~13時10分 | TVer

 見せたいシーンがあるんだろうな、ということは、ようやくわかってきました。心あるジャーナリストが無実の逃亡犯を匿って、テレビの生放送で公開インタビューをする。それはもうホントにドラマチックなシーンであって、ドラマを作る仕事をしている人だったら、一生に一度くらい撮ってみたいものでしょう。おそらく『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』(フジテレビ系)という作品は、そんな感じのクライマックスに向けて作られてる。第5話まで来て、ようやく物語を推進し始めました。

 このドラマは、逃亡者・キャスター・シェフの3つのパートに分かれています。そのうちの逃亡者とキャスターのパートは今回をもって完全に合流しました。

 このパートは、細かいことを気にしないで薄目を開けて眺めてるだけなら、面白くなってきたと言えると思います。こっちがメインストリームであることは明らかなので『ONE DAY』は面白くなってきた、と言っていいと思う。今回の、逃亡者ニノを着ぐるみに押し込んで警察の前に連れて行ったり、生放送のリハーサルをしているアイドルグループと一緒に踊らせてみたり、目に楽しいシーンもたくさんありました。前回までは話がつまんない上に目が楽しいシーンも全然なかったので(たぶんニノのパルクールとかがそういう見せ場だったんだろうけど)しんどい思いをしましたが、なんとかこのパートはストレス少な目で最後まで見ることができました。

 とはいえ、登場人物の心の動きを追うことは、もうできません。シーンをつなぎ合わせることに比重を置き始めた脚本は、人物たちを単なる記号として都合のいい場所に配置しているだけになりました。

 逃亡者を描くドラマは、その移動を描くドラマです。すべての移動に対して制約がある、補足される危険がある、これを緩めてはドラマが成立しない。ここに至って舞台である横浜の街は、警察による包囲網と、組織による徹底的な追跡によって、ニノが容易に移動できる状況であってはならない。しかも1日を1クールかけて描くというコンセプトがあるのだから、ニノをみなとみらいのテレビ局から高台の墓地に瞬間移動させたらダメなんです。まるで神の手を伸ばしてニノをつまみ上げるように、テレビ局から墓地まで配置だけ変えたらダメなんです。これまでやってきたことが、すべて無駄になるんです。

「これまでやってきたことが、すべて無駄になる」

 今回、主人公のうち2人がこの同じセリフを言いました。キャスターのほうは、取材を重ねて事件の真相に迫りつつあって、ニノが警察に捕まったら、すべて無駄になる。こちらはまあ、それなりにセリフに体重が乗るようになってきました。

 で、やっぱり問題になってくるのが、大沢たかおのシェフパートです。ニノと中谷美紀のパートが面白くなってきただけに、シェフパートが挟まることが明確に邪魔になってきました。少なくともニノと中谷美紀は真面目に事態に取り組んでいて、ドラマも緊張感を演出するようになってきた。ここに、相変わらずダラダラダラダラダラダラダラダラ無駄話ばかりしている不真面目な洋食屋の連中のシーンが挟まることで、ドラマを楽しもうという意思が削がれていく。

 寸胴鍋いっぱいのデミグラスソースの代わりに、小鍋にちょこっとウチワエビのソースを作って、鶏肉や豚肉やコロッケにちょこっとかけて試食して「これがメインでいいんじゃない?」「ダメだ、デミを使ったビーフシチューには敵わない」「こんなものをクリスマスディナーのメインで出してしまったら、これまでやってきたことが、すべて無駄になる」。1話から、ずっと同じところを堂々巡りしている。ディナーの時間は迫っているのに、仕事の手を止めて、まるでそれこそコロッケ屋のパートのおばちゃんたちみたいに(令和の時代にそぐわない比喩ですね、すみません)、他愛もない痴話に花を咲かせている。そうかと思ったら急にシェフが「時間がないんだ」とか言って、シェフぶって威張ってる。まったく、この人物を愛せない。

 もちろん、このシェフの時間帯は今のところコメディリリーフであって、緊張と緩和を演出する基本的な手法であることは理解します。この後の展開で重要な役割を持ってくるんだろうなという予想もします。でもね、そんな緩和するほど緊張してないのよ。テレビを見ていて、「あ、緊張させようとしてる。緊張したほうが楽しそうだから緊張しよう」とこちらで心を決めて、なんとかドラマに寄り添おうとしてるのよ。それが、大沢たかおが登場するたびに、引きずり下ろされるのよ。勘弁してよ。

 なんだか辻褄が合わなくなってきた脚本を、どうにかそれっぽく見せる作業。どう考えても矛盾して人格破綻しているセリフを、どうにかそれっぽくしゃべる作業。お察しいたします。がんばれ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

どらまっ子AKIちゃん

どらまっ子です。

最終更新:2024/01/31 12:13
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