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お笑い評論家・ラリー遠田の緊急レビュー

『R-1ぐらんぷり2010』新王者あべこうじの「ちょいウザ漫談」の魅力とは?

abe.jpg「Yahoo!バラエティ あべこうじ的経済学」より

 2月23日、ピン芸人日本一を決める『R-1ぐらんぷり2010』(フジテレビ系)の決勝戦が行われた。過去最多となった出場者3,539名の頂点に立ったのは、「ちょいウザ漫談」を得意とする話芸のスペシャリスト・あべこうじ。6度目の決勝進出で悲願の優勝を果たした彼は、勝利の瞬間、普段のウザキャラも忘れて思わず号泣。あべの勝利に観衆は惜しみない拍手を送った。

 あべこうじの芸風は、「ウザい」と形容されることが多い。だが、冷静に見ると、彼のネタには、文字通りのうっとうしい部分や嫌われる要素があるわけではない。キャラクターは明るくて、しゃべりはよどみなく正確。それなのになぜ、彼には「ちょいウザ」のイメージが定着しているのだろうか? そこにこそ、彼の作る笑いの秘密を解く鍵がある。


 あべこうじの漫談の内容を分析してみると、そこには大きな特徴がある。それは、ネタの途中で、わざと話の腰を折ったり、流れを寸断するような話題を急に差し挟んだりする、ということだ。車の運転に例えるなら、急停止と急発進を繰り返すようなかなり危険な感じである。だが、「期待の裏切り」は、笑いをとるための鉄則でもある。あべは、そのテクニックを効果的に用いることで、聞き手を自分の世界に引き込んでいくのだ。

 彼の話をまともに聞いていると、突然「そんな話じゃなくない?」「それはない!」などと、期待は裏切られ、予測は外される。そうやって弄ばれて、もどかしい思いを抱えながらも、いつのまにか彼の間合いにハマってしまうのだ。いわば、彼が「ウザい」と思われているのは、意図的に予測不能な話の流れを作っていく芸風そのものに理由があるのだ。

 特に、決勝1本目のネタは、そんな彼の漫談の集大成とも言える圧巻の内容だった。ここであべは、自分が好きな昼ドラの世界を再現して、演技と地を自由に行き来して、観客を翻弄しながら爆笑をさらっていた。

 あべこうじの「ちょいウザ」な芸風は、いかなる手段を用いてでも観客を飽きさせたくない、という彼の徹底したサービス精神の現れでもある。あべは、行き先不明のスリリングなドライブに観客をいざない、ヘラヘラした態度で、急停止・急発進を繰り返しながら、誰も見たことのない景色を見せてくれる。小道具や音楽やキャラに頼らないしゃべり1本で優勝をもぎとったあべこうじは、「R-1王者」の称号にふさわしい超一流の話芸を持っていたと言えるだろう。
(文=ラリー遠田)

バカリズム案

最後に優勝してほしかった!

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最終更新:2018/12/10 19:18
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