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「自尊心を刺激されて、誇大妄想を信じた」元オウム・上祐史浩が麻原を捨てるまで

kikenshin.jpg『危険な宗教の見分け方』(ポプラ新書)

 地下鉄サリン事件、松本サリン事件、坂本弁護士一家殺害事件……など、さまざまな凶悪犯罪を起こし、90年代の日本を震撼させたオウム真理教。18年が過ぎた現在でも、多くの日本人にとって鮮明な記憶として刻まれていることだろう。『危険な宗教の見分け方』(ポプラ新書)は、かつてオウム真理教の幹部として「危険な宗教を見分けられなかった」上祐史浩と、ジャーナリストの田原総一朗による対談本だ。田原が繰り出す質問に対して、上祐が答えていく形で本書は進んでいく。

 早稲田大学大学院を卒業し、宇宙開発事業団(現JAXA)に就職するスーパーエリートであった上祐。しかし、当時「オウム神仙の会」を名乗っていた前身団体のヨガ講座に足を踏み入れ、麻原彰晃に出会ったことでその人生は変わっていく……。

 教団に魅せられた理由の一つに、彼は「承認欲求の充足」を挙げている。「特別な存在になりたい」という上祐青年の願望を、オウム神仙の会が行う修行やヨガ、そして麻原彰晃による寵愛が満たしていく。

上祐 自尊心を刺激されて、あとから思うと誇大妄想としかいえないようなことを信じたんです。

田原 自分はこの世の中で必要な存在になれるという自尊心。

上祐 そうです。重要な存在だと。

 麻原からマイトレーヤ(弥勒菩薩)という名前をもらい、「類まれな魂」と絶賛された上祐。承認の喜びを満たされた青年は、「第三次世界大戦」「ハルマゲドン」といった教義を疑いなく信じてしまう。ただし、理系のエリートコースを歩み、「ああ言えば上祐」の異名で呼ばれた彼は、決して「バカな」人間ではない。大阪大学理学部を卒業し、神戸製鋼に就職した村井秀夫や、大阪府立大学大学院を卒業し鴻池組に入社した早川紀代秀なども同様だ。彼らのような人間ですら、ほとんど自覚のないままに犯罪に手を染めていったところに、一連の事件の恐ろしさがある。

上祐 教祖に代わって教祖の未来予見を吟味して、科学的な批判精神を持つことは、教団の中での自分にとって意味を成さない。逆に、普通の人には従えない不合理な指示に対しても無思考に従える弟子が優れているとされる。結果的に、「思考停止状態」ということになるんです。

田原 思考停止することが信者として意味のあることだった。

上祐 そうですね、思考停止して理不尽なことにも従うことが、自己保全を捨てる修行として、価値があるとしたんです。

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