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コリン・ファース×二コール・キッドマン×真田広之『レイルウェイ 運命の旅路』

railwaymenn.jpg(C)2013 Railway Man Pty Ltd, Railway Man Limited, Screen Queensland Pty Limited, Screen NSW and Screen Australia

 今週取り上げる最新映画2本の舞台は、昭和の雰囲気が残るさびれた地方都市と、第2次世界大戦で日本軍が連合軍と戦い占領した東南アジア。それぞれの作品が持つ生々しさ、真に迫る力が、私たちが暮らす今ここに地続きでつながっていることを実感させてくれる。


 『そこのみにて光輝く』(R15+/4月19日より全国ロードショー)は、『海炭市叙景』(10)で知られる函館市出身の小説家・佐藤泰志が自殺する1年前に発表した唯一の長編小説を、呉美保監督、綾野剛主演で映画化した作品。死亡事故が起きた採石場の仕事を辞め、海に近いある町で無為に過ごしていた達夫(綾野)は、仮釈放中の人懐こい若者・拓児(菅田将暉)とパチンコ屋で知り合う。ついて来るようせがまれ訪れた拓児の家には、寝たきりの父とその世話で疲弊する母、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。昼は塩辛の加工工場で働き、夜は体を売って一家を支える千夏に、達夫はひかれ、やがて互いを求め合う。だが、拓児に仕事を世話している植木農場の社長が、千夏に体の関係を続けるよう強要したことで、ある事件が起こる。

 芥川賞をはじめ多くの文学賞で候補になりながら、受賞がかなわず自ら命を絶った“不遇の作家”佐藤泰志による1989年の小説を、現代の物語に置き換えた。格差社会の底辺でもがき、傷つきながら生きる若者たちの姿を、残酷なほど切実で、しかしその中にあたたかな眼差しを感じさせる映像を通じて描き出す。池脇千鶴のほとんど諦めかけた表情、たるんだ肉体のリアリティーに女優魂を実感。暗闇のようなどん底の人生で、苦しみと痛みを経たからこそ輝く「光」は、生前評価されなかった原作者へのレクイエムであると同時に、今の時代に悩めるすべての人へのエールでもある。

 オーストラリア・イギリス合作の『レイルウェイ 運命の旅路』(4月19日公開)は、コリン・ファース、二コール・キッドマンという2人のオスカー俳優と、真田広之の共演で実話を映画化したヒューマンドラマ。第2次世界大戦時、英国軍兵士のエリックは、シンガポール陥落時に日本軍の捕虜になり、タイとビルマを結ぶ鉄道を建設現場で過酷な労働と拷問を体験。約50年後、当時の記憶に苦しめられながらも、愛する妻パティ(キッドマン)と静かに暮らしていたエリック(ファース)は、建設現場にいた日本人通訳・永瀬(真田)が今もタイで戦争体験を伝えていることを知る。トラウマに襲われ動揺するエリックだったが、過去と向き合うことを決意し、タイを訪れて永瀬に対面する。

 原作は、元英国兵士が実体験をつづったノンフィクション作品。『英国王のスピーチ』(10)でアカデミー主演男優賞を獲得したコリン・ファースの、緊張をはらんだ静と動の演技が味わい深い。地味な髪型と控え目なメイクで脇役に徹しているニコール・キッドマンに好感。後半でようやく登場する真田広之は、出演シーンこそ短いが、捕虜酷使と拷問に立ち会った男の苦悩と贖罪を確かな存在感で印象的に表現している。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『そこのみにて光輝く』作品情報
<http://eiga.com/movie/78908/>

『レイルウェイ 運命の旅路』作品情報
<http://eiga.com/movie/78220/>

最終更新:2014/04/18 21:00
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