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凶悪犯罪の真相

足利事件から24年 ジャーナリストが迫る、北関東連続幼女誘拐殺人事件の「真実」

51wDbzJguDL._SL500_AA300_.jpg『殺人犯はそこにいる: 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』(新潮社)

 2010年3月26日、パチンコ店から幼女が連れ去られ、遺体となって発見された「足利事件」の容疑者とされる菅家利和氏の無罪が言い渡された。検察官や裁判官が被告に対して謝罪を行うという異例の裁判は、菅家氏が警察に逮捕された91年から19年を経て、ようやく実現したものだった。

 『殺人犯はそこにいる』(新潮社)は、日本テレビ社会部記者の清水潔が、足利事件をはじめとする「北関東連続幼女誘拐事件」の真相に迫った一冊。それは、意地とプライドをかけて事件の真相を解明しようとするジャーナリストの足跡だ。

 「北関東連続幼女誘拐殺人事件」とは、79〜96年にかけて、5人の少女が殺害もしくは失踪している未解決事件の総称。菅家氏が犯人と疑われた足利事件は、そのうち90年に起こった松田真実ちゃん殺害事件のことを指している。清水は、日本テレビの報道番組『ACTION 日本を動かすプロジェクト』において、07年からこの未解決事件の取材に着手。当初、警察すらもこれらの事件に連続性を認めていなかったものの、栃木と群馬の県境地域半径10km以内で繰り返されてきた犯行に、清水は関連性を見いだしていく。

 しかし、リサーチを開始した当初、足利事件はすでに「終わった」事件であった。菅家氏本人による自供、さらにDNA型鑑定でもクロと出ており、最高裁判決で有罪が確定している。清水もまた、当初はその判決に疑問の余地はないと考えていた。そして、足利事件が菅家氏の起こした事件であれば、5件の事件が連続殺人事件である可能性は薄くなる。事実、警察やジャーナリストに取材を重ねても、清水の仮説に耳を貸す者はいなかった。

 だが、清水が現地調査を開始すると、警察の捜査記録や裁判記録からは浮かび上がってこなかった疑惑が噴出する。不自然なまでに近隣住人の目撃証言がないにもかかわらず、有力な目撃情報はいつの間にか闇に葬られていった。菅家氏が行ったとされる自供の信ぴょう性は薄く、「真実ちゃんを荷台に乗せて、自転車で土手を上がっていった」という供述に基づいて再現事件を行ったところ、かなり困難であることを確認。「隠れ家にロリコンビデオを大量に所持している」とされた菅家氏の押収物を確認すると、発見されたのは普通のアダルトビデオばかり。そもそも、この家も隠れ家ではなく、実家から独立するために借りたものだった。

 だんだんと、警察の捜査に対して疑念を募らせていく清水。しかし、目の前にはDNA型鑑定という難問が待ち構えていた。「1000人に1~2人」といわれるDNA型鑑定が、犯人は菅家氏であると証言している。マスコミに理解がある元警視庁の大幹部も、清水の話す事件の真相に興味を持ったものの、「あれは間違いなく殺ってます。証拠がDNA型鑑定ですから、絶対です」とにべもない。足利事件をきっかけに「指紋制度に並ぶ捜査革命」とはやし立てられ、全国の警察で導入が進められたDNA型鑑定。だが、清水は、そんなDNA型鑑定にも疑問点があることを見抜いていく。そして、清水の番組を通じてDNA型再鑑定の必要性が主張され、菅家氏が無罪であることを証明する一助となった。

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