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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.291

変態だっていいじゃないの、だって人間だもの。怒濤のセックス大河ドラマ『ニンフォマニアック』

nymphomaniac01.jpgニンフォマニア(色情狂)であることを自認するジョー(シャルロット・ゲンズブール)は、あらゆるSEXプレイに果敢に挑んでいく。

 快楽のためにセックスするのは、どうやら人間と一部の霊長類に限られているらしい。だとすると、快楽目的のセックスを追求するということは、非常に人間らしい(もしくは一部の霊長類らしい)行為ではないのか。ニンフォマニアとは“色情狂”のこと。快楽としてのセックスを常に欲している女性のことを指す。デンマーク出身の鬼才ラース・フォン・トリアー監督の『ニンフォマニアック』は、ひとりの女性の半生を男性遍歴を通して物語るというセックス大河ドラマだ。自他ともに色情狂であることを認める女主人公ジョーの性の大饗宴がVol.1(1時間57分)とVol.2(2時間3分)の合計4時間にわたって繰り広げられる。

 物語は路上で行き倒れている中年女性ジョー(シャルロット・ゲンズブール)が親切な銀髪の紳士セリグマン(ステラン・スカルスガルド)に介抱される場面から始まる。お礼代わりにジョーは、自分が行き倒れになるまでの経緯をベッド上で語り始める。現代版『アラビアンナイト』といった趣きだ。Vol.1では若き日のジョー(ステイシー・マーティン)が性に目覚めていく様子が語られる。いわば、ヰタ・セクスアリス的世界。2歳にして浴室でカエルごっこをして、濡れた床に下半身を押し付けることで快感を覚えるジョー。学校にあった様々な備品は、どれも魅惑的なオナニーグッズだった。初体験は15歳のとき。バイク好きな青年J(シャイア・ラブーフ)にバージンを奪ってほしいと自分から頼んだ。Jはジョーを正常位で3回、バックで5回突いて果ててしまった。3+5=ロストバージン。痛みと屈辱しか残らなかった処女喪失だった。

 そんな苦い思い出を払拭するかのように、高校生になったジョーは親友のBと共に列車内でのボーイハントに熱中する。思わせぶりな台詞と目くばせで、どちらが多くの男とエッチできるかを競い合う。すくすくとビッチに育っていくジョー。性に対する貞操観はその人の人格形成に大きな影響を与えるようだ。奔放なセックスで彩られた青春時代を過ごしたジョーは、高校卒業後も奔放な性生活を送る。Vol.1のラスト、ジョーに優しかった最愛の父親(クリスチャン・スレイター)が心の病で入院する。病院のベッドに付き添うジョーだが、意識の混濁した父と妄想の世界で禁断の関係を結ぶ。父が息を引き取った瞬間、ジョーの股間はびしょびしょになる。ジョーは肉親との永遠の別れと引き換えに最高のエクスタシーを感じた。タブーこそ、人類にとって最大の媚薬だった。

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