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『オオカミは嘘をつく』公開記念インタビュー

タランティーノも大絶賛! いま注目のユダヤ人監督コンビに聞く「イスラエルと映画と、アラブ人」

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――貴重な体験をされたようですね。それでは早速、映画の話に入りましょう。作中、刑事が容疑者を殴りつけて、自供を迫るシーンがありますよね。イスラエルでは国家機関などに対する表現の規制はないんですか?

ナヴォット イスラエルという国は、言論の自由、表現の自由が非常に強く守られている国なんです。映画の場合、審査というものがありますけど、それは日本と同じように「R18」などのレイティングのためのもの。観客に何を見せて、何を見せてはいけないという一定のルールはあっても、アーティスト自身が表現したいことは、なんでも自由に表現できますよ。

 『オオカミは嘘をつく』の中で、僕らはあるメッセージを送っています。それは、イスラエル政府に対して、「信頼が損なわれた」もしくは「失われてきている」という危機感です。政府だけではないかもしれない。教育、体制、それから警察という機関、そして徴兵制度がありますから、軍に対しての“不信”というものも表現しています。イスラエルの警察の現状を言えば、実際に汚職が非常に多いですし、かなり誤捜査や失態をやらかしてしまっている。問題は、それを正そうとする人たちがいないということ。僕たちは、それが以前からとても気になっていた。そういったことを含めて、今回の映画では、あのような描写になっていると思ってもらって結構です。いつの日か、僕たちの目の前にパトカーが止まって、「あの映画を作ったのは君たちか?」と言われるのかもしれないけれど(笑)。

――「軍に対しての不信」という言葉がありましたが、お二人も兵役を終えているわけですよね。最近、イスラエルの若者の中で、兵役を拒否する人が増えていると聞きますが。

アハロン 人によっていろいろな理由があるから、一概にこうだとは言えません。個人的な理由があるのでしょう。ただ、私たちも軍隊を経験して思うのは、「軍はすべての人間に向いているわけではない」ということ。厳しい場所でもあるし、男性の場合は3年間もある。私は18歳のときに兵役について就いて、実際に火器を使うなど、普通の18歳の生活では絶対にしないような経験をたくさんしました。メンタル面の強さがないと、深い傷を負ってしまう場所だと思います。男女問わず、非常にストレスがかかる厳しい環境なので、すべての人に向いているわけではないんです。個人的には、軍隊は向いている人間をリクルートしていくべきではないかと考えている。本当は、市民たちが良識に基づいて、軍に行くかどうかを選択すべきではないでしょうか。それが我々の権利なのではないかと思います。

 一方で、徴兵を拒否する人は、戦争に対しての意義を見いだせないのではないかと感じます。そのあたりのメンタルというのは、やっぱり20年前とは違ってきている。以前は、自分のアイデンティティとして、軍に入り、国のために戦うという人が多かった。それは、かつての日本やベトナムのように。「良い国民であるためには、国のために命を捧げて戦わねば」と本気で思っていたわけで、そうできない人は“足りない人”という思想ですね。しかし、そんなエートス(精神)自体が変わってきていて、私たちの世代や、さらに下の世代の人たちにとっては、国のために戦うことが自分のアイデンティティにはなりません。国のために貢献できることなら、ほかにもいろんな形があるという考え方ですね。軍が自分のアイデンティティとつながっていないから、兵役を拒否するという選択をしているのではないでしょうか。

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