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台風被害の関空対応を批判され……台湾領事を自殺に追い詰めたのは、中国発・フェイクニュースだった!

蘇氏の自殺を報じる台湾メディア

 9月4日、日本に上陸した台風21号は、死者13名を出す大きな被害をもたらした。関西国際空港では、台風の影響による高潮の被害で、滑走路をはじめターミナルビルの浸水、停電、空港連絡橋へのタンカー衝突など、人々の移動や物流に、引き続き現在も甚大な影響を与えている。

 災害発生当時、関空には多くの外国人客も取り残されていたのだが、各国大使館は自国民保護のため、情報収集などの対応に追われていた。

 こうした中、大阪にある台北弁事処(台湾領事館)で処長を務める蘇啓誠氏(61)が自殺していたことがわかった。

 台湾メディア「自由時報」(9月14日付)によると同日早朝、蘇氏が官舎の中で首を吊って死んでいるのを職員が発見した。蘇氏はすでに死亡しており、今回の関空での災害対応をめぐり批判の的となっていた蘇氏が、責任を感じ、自殺したのではないかと報じている。

 台湾外交部によると、蘇氏は外交官として優秀な人物で、台湾の大学を卒業後、大阪府内の大学に留学し学位を取得するなど、知日派であったという。2013年12月から今年6月まで、東京の台北弁事処で代表を務め、7月に大阪へ赴任したばかりだった。

 当時、中国メディアには「空港に閉じ込められている人民のために、中国領事館が15台のバスを手配して脱出させるなど、自国民の保護をどの国よりも円滑に行った」と言った記事が掲載されるなど、中国総領事館の対応を褒めちぎる報道がなされていた。中には「中国領事館は同胞である台湾出身の観光客の保護まで行った」などという内容のものまであった。こうした報道に、台湾のネット上では「台湾の外交部は何をやっているんだ! 中国領事館が台湾人の保護まで行っているなんて、完全に負けている!」と、台湾外交部や大阪の台北弁事処を批判するコメントが相次いだのだ。

 ところが、実際には中国領事館がバスをチャーターしたという事実はなく、空港内にいた外国人たちは日本人同様、空港側が用意したバスで脱出していたことがわかった。つまり、メディアがフェイクニュースを報じ、それを信じたネットユーザーが、台北弁事処の対応や代表である蘇氏個人を批判していたという事実が明らかになったのだ。

 亡くなった蘇氏は、メディアやネットユーザーからの個人攻撃に追い詰められ耐えられなくなって、突発的に自殺を選んでしまった可能性が強い。いわば、中国発のフェイクニュースに殺されたと言っても過言ではない。

 災害時には必ずと言っていいほど、多くのフェイクニュースやデマなどが出回る。今回もそうした状況下で、人が亡くなってしまったのである。こうした事件が再び起こらないことを祈るばかりだ。
(文=青山大樹)

最終更新:2018/09/21 21:00
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