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【深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.502

昼は救命医、夜は処刑人という2つの顔を持つ男!! 人間の内面に渦巻く矛盾性『デス・ウィッシュ』

イーライ・ロス監督、ブルース・ウィリス主演映画『デス・ウィッシュ』。簡単に銃が手に入る米国社会を皮肉った内容となっている。

 もしも街で評判の名医が実は連続殺人鬼という裏の顔を持っていると知ったら、あなたはそれでも受診するだろうか? ブルース・ウィリス主演作『デス・ウィッシュ』は、そんな二面性を持った外科医を主人公にしたクライムアクション・ムービーだ。主人公ポール・カージーは、昼は病院で人命救助に奔走する温厚な人物。だが、夜は自警団となって拳銃を手にストリートギャングを次々と血祭りに挙げていく。一体、どちらが本当の彼の素顔なのだろうか。

 ポール・カージーという名前に、聞き覚えのある映画ファンもいるに違いない。往年のアクション俳優チャールズ・ブロンソンが主演した人気作『狼よさらば』(74)の主人公の名前がポール・カージーだった。『狼よさらば』と『デス・ウィッシュ』は、米国の作家ブライアン・ガーフィールドの小説『Death Wish』がどちらも原作となっている。原作小説では主人公ポール・ベンジャミンの職業は会計士だったが、ブロンソン主演作では建築家ポール・カージーとなり、そしてイーライ・ロス監督によるリメイク版となる本作ではポール・カージーの名前は引き継いだものの外科医という設定になった。今回、主人公の職業が変更されたことで、作品の持つテーマ性が大きく変わっている。

妻と娘に囲まれて、幸せいっぱいだった頃のポール・カージー(ブルース・ウィリス)。家族を奪った悪人どもの処刑に生き甲斐を見出す。

 ポール・カージー(ブルース・ウィリス)はシカゴの救急病院に勤務するベテラン外科医だ。事故や犯罪に巻き込まれた重傷患者たちの治療で忙しい。手術室に運び込まれた患者は、事件を起こした犯罪者でも全力で救命にあたる人道主義者だった。そして自宅に戻れば、妻ルーシー(エリザベス・シュー)とひとり娘ジョーダン(カミラ・モローネ)と過ごす時間を大切にするよき夫であり、よき父親でもあった。そんなポール・カージーの充足した生活は一瞬にして崩壊することになる。

 その日はポールの誕生日だった。家族水入らずで誕生日ディナーを楽しむつもりだったが、非情にも病院から呼び出され自宅を留守にしてしまう。そんなポール不在の隙に、富裕層を狙った強盗団が自宅に押し込んできた。年頃の娘を庇って妻ルーシーは絶命、大学進学が決まって幸せいっぱいだった娘ジョーダンも頭部を撃たれて意識不明の重体に。愛する家族が自分の病院に運ばれ、ポールはパニック状態に陥ってしまう。

 一刻も早く、強盗団を逮捕してほしい。事件を担当する刑事レインズ(ディーン・ノリス)に懇願するポールだが、警察は他にも多くの事件を抱えており、捜査は遅々として進まない。絶望のさなかにいた彼の目に映ったのは、テレビで流れる銃砲店の能天気なCMだった。警察が犯人を逮捕できないのなら、自分の手で捕まえて罪を償わせよう。医者であるポールの頭の中に、むくむくと危険な考えが膨らみ始める。

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