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トヨタが排ガス規制に反対? “エコ”という利権と矛盾(後編)

ecoaidears.jpg松下電器の環境活動をアピールするサイト

前編はこちら

 こうした矛盾は、すべての企業が抱えるジレンマと言えるだろう。そこで現在、欧米企業を中心に積極的に採用されているのが、「社会貢献型マーケティング」と呼ばれる手法だ。

「昨年、フランスのダノン社が行った『1リットル for 10リットル』キャンペーンは、まさにその成功例のひとつ。これは、消費者が通常より高額に設定された同社のミネラルウォーター『ボルヴィック』を購入することで、売り上げの一部を途上国に寄付し、井戸を掘るというもの。日本国内では、キャンペーン期間中の7~8月の売り上げが前年同期比34%増という結果になりましたが、数字だけではなく、ブランド価値も大きく高めました」(前出の黒川氏)


 同商品のホームページによると、この寄付によりアフリカのマリ共和国に7億1224万リットルの清潔で安全な水がもたらされたという。この『1ℓ for 10ℓ』は、万事がうまくいったケースだが、当然失敗例も見られる。

「昨年、アップルやギャップ、アルマーニといった企業が賛同して行われた、アフリカの貧困救済を目的とした『Product Red キャンペーン』では、賛同企業がキャンペーン用に限定商品を販売し、その売り上げの一部を寄付するという企画で、映画監督のスティーブン・スピルバーグといった、多数の大物有名人がCMに出演するなど、当初より大きな話題にはなりました。しかし、キャンペーン全体で100億円以上もの広告費が投じられたにもかかわらず、チャリティ収益は20億円程度だったといわれています。また、『賛同企業は〝チャリティ〟を利用して、自社の商品を売りたかっただけ』という非難も上がり、反対運動も展開されました。とても費用対効果の高いものとは言えません」(流通専門紙記者)

 こうした「社会貢献型マーケティング」を採用する企業は増えているが、企業単独による環境活動には限界がある。そこで、企業に急接近しているのが環境NGO団体だ。

「現在、アメリカでは、環境NGO団体との提携によって、事業を行う企業も増えています。環境活動によってイメージアップを図りたい企業と活動資金が欲しいNGO団体──。両者の思惑は一致し、これまでにマクドナルドでは、ミツバチの生息地を保護するために売り上げの一部を寄附する見返りとして、ミツバチが主人公の冒険映画『ビー・ムービー』のおもちゃ付きセットを販売。また、以前にはコーヒー農園に対する搾取が問題視されたスターバックスも、有機栽培を行う農園などと契約を結び、支援を行っています。NGO団体は、こうした企業による活動の仲介役となっていますが、やはり両者は目指す方向性が根本的には異なるため、そのバランスを取るのは難しく、対立や衝突も少なくはないようです。欧米系の企業に倣って、日本企業も『社会貢献型マーケティング』による環境活動は増えていくはずですが、そこには解決すべき問題が散乱しています」(同)

巨大商社が跋扈する排出権ビジネスの旨味

 諸刃の剣という側面も見られる環境活動。だが、前述の通り、企業にとって必須となっているのは疑いない。
 そんな中、ビジネスとして肥大化していることも手伝ってか、各企業が最も力を入れているのがCO2やメタンガスなどの温室効果ガスの削減だ。中でもひときわ注目を集めているのが、排出量取引である。
 このビジネスモデルの概要について、前出の諸富氏は、次のように説明する。

「温室効果ガスの各国の削減目標を定めた『京都議定書』に批准した国は、2010年までにそれぞれの削減数値が決められています。しかし、『京都議定書』では、国内のみでの削減が困難な場合、他国において温室効果ガスの削減に貢献すれば、国内分に換算できる特例『京都メカニズム』が設けられています。他国での成果は実績に応じて排出権として代替され、国や企業間などで排出量の売買が行われています」

 現在、この排出量ビジネスの市場規模は約20兆円ともいわれており、中でも積極的なのが丸紅や三井物産などの総合商社だという。

「国内の大手商社は、中国やインドといった途上国に進出し、風力発電やゴミ処理事業などに協力することで、巨額の排出権を得ています。さらに、手に入れた排出権を政府や石油・鉄鋼系の企業に転売することで、十数億円近くの利益を上げているといわれています。最近では、メガバンクを介して、排出権を信託商品として企業に販売しています」(前出の全国紙経済部記者)

 これらの例は賛否両論あるものの、真っ当なビジネスである。だが一方、市井レベルに目を向けると、世の中のエコ・ブームを利用した詐欺まがいの行為も後を絶たない。

「環境省が主導する地球温暖化防止に向けての国民プロジェクト『チームマイナス6%』には多数の有名企業が参加していますが、個人、法人、団体問わず、簡単な申請を行えば、誰もがすぐにチームメンバーになることができます。そこで、『チームマイナス6%』を看板にして、高齢者などをだまして、高額の家電製品を売りつけたり、リフォーム工事の契約を取りつける悪徳業者が急増しています」(同)

 だが、エコで金儲けを企てているのは、決して企業だけではない。地球に優しい商品の証明として、家電製品や文房具などに付けられる「エコマーク」の事務局でもある財団法人日本環境協会は、認定事業により巨額の収益を得ているという。

「企業および団体がエコマークを取得するには、まず2万1000円の審査料がかかります。さらに、取得者側は、商品の売り上げに応じて年間最高100万円のマーク使用料を支払わなければならない。こうしたエコマーク商法により、同協会は年間約3億円もの収入を得ているようです。もちろん、エコマークは、消費者にとって商品を購入する際の一つの目安になっている場合もあるでしょう。しかし、今年1月にも日本製紙や王子製紙など製紙各社が製造していたエコマーク認定用紙の偽装が発覚するなど、審査における基準やチェック、また認定後の監理体制など、決して十分とは言えません。そのため、エコマークの信頼性を疑問視する声も」(同)

 さまざまな組織と思惑が絡み合う環境活動──。はたして、その活動は、本当に地球のために役立っているのだろうか?
(大崎量平/「サイゾー」6月号より)

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最終更新:2008/06/17 15:59
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