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お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第7回

爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」

bakushoumondainotsu-shotto.jpg2008 漫才 爆笑問題のツーショット
20周年記念エディション
/ビクターエンタテインメント

 『太田光の私が総理大臣になったら…秘書田中。』(日本テレビ)で政治家たちを転がして、『爆笑問題のニッポンの教養』(NHK)で大学教授を相手に議論をふっかける。爆笑問題の太田光は、いつのまにか「社会派芸人」として独特のポジションを確立してしまった感がある。テレビ界では、ちょっと知的なイメージを出したい番組には爆笑問題を司会に起用する、というのが一種のセオリーになっているほどだ。

 だが、そもそも、太田はいかなる意味で「社会派芸人」と呼ばれているのだろうか? 自ら社会問題に関心を持ち、自分の手で世の中を変えたいという密かな野望を抱いていたりするのだろうか。世間のイメージと彼の実像との間には、微妙なずれがあるような気がする。

 爆笑問題はもともと、時事ネタを題材にした「社会派漫才」で人気を呼んだコンビであった。政治から芸能まで、最新のニュースを取り上げてそれを面白おかしくネタにして笑いを取っていた。これにより、爆笑問題には「世相を斬っている」とか「社会風刺をしている」というイメージが定着していった。

 だが、太田自身は著書やインタビューなどで、これが誤解であると繰り返し述べている。社会問題をお笑いのネタとして扱っているだけで、何らかの政治的なメッセージを送っているつもりはない、と。

 その意味で、彼の正体はインテリのふりをした「なんちゃってインテリ」だと言えるだろう。太田はもともと何か具体的な主張をしたくてテレビに出ているわけではない。彼には本物の学者や言論人のように積み上げた理論もなければ、深い教養もない。ただ、それらをネタにしてテレビという場で戯れているだけなのだ。

 これは決して、太田が物事に対して真面目に取り組まずにジョークで逃げている、という意味ではない。むしろ、太田光ほどあらゆる事柄に向き合い、その場その場で真剣に自分が考えたことだけを誠実に語る芸人も珍しい。彼は、相手がタレントでも政治家でも大学教授でも、まったく態度を変えることなく本気でぶつかっていく。自分の言葉で自分の考えを述べる。そして、そういう自分そのものをネタとしてさらけ出していく。これこそが、太田光の切り開いた独自の方法論であった。

 この点では、彼のことを「社会派芸人」としてやたら持ち上げるインテリ中年たちも、「あいつの言っていることは薄っぺらい」などと真正面から非難する一部の視聴者たちも、同じ種類の誤解をしているのだと思う。それは、太田が何かしら真面目なことを語っている、という誤解だ。

 太田は真面目なことを語っているのではなく、滑稽なほど真面目な態度で、自分が思ったことを好き勝手に述べているだけなのだ。彼は自分の見せ方に関して、不器用で雑な一面がある。そうした一面が誤解を招いているわけだが、彼はその分、誠実であり、真剣でもあるのだ。その真剣さが人の心を動かし、賛否両論問わず世間に波風を立たせる。トリックスターとしての太田の役割はそういう部分にあるのだろう。

 『爆笑問題のツーショット 20周年記念エディション』は、そんな爆笑問題が年に一度リリースしている時事ネタ漫才をまとめたDVDの2008年版である。今年は従来と変わって、スタジオ収録ではなく観客を入れてライブ収録にしている。その分だけ臨場感が高く、太田のテンションもやや高い。福田首相の辞意表明から北京五輪の話題まで、時事ネタを縦横無尽にもて遊んでいる。

 テレビでは司会進行の役回りが多い彼らだが、漫才の技術やネタ作りのセンスは全く古びていない。しっかりとした芸が土台にあるからこそ、テレビでのびのびと弾けることができるのだろう。爆笑問題の太田光は、単なる社会派芸人の枠を超えた、一流の「なんちゃってインテリ」だと言えるのではないか。
(お笑い評論家/ラリー遠田)

2008 漫才 爆笑問題のツーショット 20周年記念エディション

田中さんのことも忘れないでください。

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●連載「この芸人を見よ!」INDEX
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ラジオキング伊集院光が磨き上げた「空気を形にする力」
鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」
くりぃむしちゅー有田哲平が見せる「引き芸の境地」
オリエンタルラジオ「華やかな挫折の先に」
有吉弘行が手にした「毒舌の免罪符」

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最終更新:2013/02/07 12:05
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