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現役ディレクターが吼える「テレビバラエティは死んだか」(前編)

makkoi.jpg奇才・マッコイ斉藤がお笑い界に吠えた!

 ここ数年のお笑いブーム、いざ立ち止まって考えてみると、きわめて空虚な笑いしかない。かつて存在していたような、作り込まれたバラエティ番組はこのまま消えてしまうのだろうか? 笑いの限界に挑戦しつづけるマッコイ斉藤氏にバラエティ界の現状について聞いた。

マッコイ斉藤(以下、斉藤) で、今日は何の取材でしょう?

──「テレビはなぜ死んだのか?」というテーマでお話をお願いします。


斉藤 アハハハ!(苦々しい表情で爆笑)。死んでないっすよ。

──でも、死ぬほどつまらないバラエティ番組が増えましたよね。

斉藤 ……。右を見ても左を見てもクイズ番組ばっかりの現状には僕もウンザリですけど。「あってもいいけどありすぎだろ、雑学をそんなに知ってどうすんだ!」って思いますね。

──なぜそういう状態になっちゃったんでしょう?

斉藤 今は視聴者からの苦情電話1本で、番組内容が変わっちゃう時代なんですよ。視聴者も過敏だし、作り手も過剰にビビってる。だからクイズ番組みたいな安パイなコンテンツが人気になると、右へならえで、誰も彼もがそれを模倣しちゃっている状況です。

──具体的に、どんな苦情電話があるのでしょうか?

斉藤 たとえば、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんがおでんを熱がる芸。あれを放送すると、「なぜ食べ物を粗末にするんだ!」「イジメだろ!」なんて苦情が入る。だから最近では「このおでんはあとでスタッフがおいしく食べました」とか「このおでんは常温です」と興醒めなテロップが入ったりするわけです。テロップのせいで、せっかくの面白さが台なしですよ。

──そんなクレームは取り合わない、ってワケにはいかないんでしょうか?

斉藤 僕が『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』のADやっていた頃は、電話でしょっちゅうクレーマーと喧嘩しましたけどねぇ。「なんで朝からバズーカなんか撃つんだ! うるさくて近所迷惑だろ!」と言われたら、「お前のほうがうるせーよ!」と言い返したり。

──今、そんな対応をしたら……?

斉藤 すぐ局の上層部に連絡が入って怒られるか、YouTubeでその音声が流されて、スポンサーを巻き込んだ大問題になるでしょうね(笑)。ただ、僕自身は今現在も、作る前からクレームを恐れて自主規制することはないですね。だって、最初から腰が引けていたら、新しい笑いなんか生まれっこないじゃないですか。とりあえず怒られるまでやりたいことをやって、怒られてから対策を練る、というスレスレの領域を行ったり来たりしています。

──まるで校則に挑む不良ですね。

斉藤 まさにそう。優等生じゃなく、いつまでも学校のイジメっ子の感覚ですね(笑)。僕が今やってる深夜番組の『おねがい!マスカット』(テレ東)でも、セクシーアイドル20人をどこまでくだらない領域までもっていけるか、そしてエロに対する規制も厳しい中、どこまでパンチラを映せるか、ということに挑戦中です。

泥臭くて面白い芸人がテレビから消える!?

──そういう心意気を持った制作者は、はたして今のバラエティの世界にどれぐらいいるのでしょう? クイズ番組に限らず、安易なパクリが蔓延しているような気がするのですが。

斉藤 『めちゃ2イケてるッ!』の手法をパクる番組が目立ちますね。テロップの遊び方や音の付け方ひとつとっても、めちゃイケが「ピンポーン!」という効果音を使ったら、他番組もすぐに「ピンポーン!」と真似する。きっと制作者が自分の笑いに自信がないから、人気のパターンを模倣しちゃうんでしょうね。でもクイズ番組ばっかりで、バラエティの若いディレクターが育ちにくい環境を考えると、無理もないのかなぁとも思うけど……。

後編に続く

マッコイ斉藤(まっこい・さいとう)
1970年、山形県生まれ。 ビートたけしに憧れてテレビ業界に入る。『極楽とんぼのとび蹴りゴッデス』(テレビ朝日)、『すれすれガレッジセール』(TBS)など、多くの人気番組を世に送り“深夜番組のカリスマ”と呼ばれるように。常識にとらわれないぶっ飛んだ制作スタイルが多くのコアなファンを魅了。芸人からの信頼も厚い。

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最終更新:2013/02/07 13:15
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