日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > 連載終了  > アコムCM出演で失望? タモリの既存イメージと「タモリ的なるもの」
お笑い評論家・ラリー遠田の【この芸人を見よ!】第25回

アコムCM出演で失望? タモリの既存イメージと「タモリ的なるもの」

tamori_acom.jpgアコムHPより

 今年3月から、タモリが消費者金融大手「アコム」のイメージキャラクターとしてCMや広告に露出していることに対して、世間では動揺と失望の声が広がっている。この件では、現在のタモリのイメージの良さと消費者金融のイメージの悪さが改めて浮き彫りになったと思う。

 タモリ好きを自認する多くの人にとって、サラ金の広告塔になるのは「タモさんらしくない」行為だと映ったということなのだろう。だが、そもそも「タモリらしさ」とは何なのか。サラ金のCMに出ただけでがっかりされてしまうくらい、タモリが聖人君子のような扱いを受けるようになったのはいつからだろう。むしろタモリは、そのような世間のタレントに対するレッテル貼りに逆らい続けて、そこから逃れながらキャリアを重ねてきたのではないだろうか。

 タモリはもともと、山下洋輔や赤塚不二夫らにその才能を見いだされるまでは、福岡出身のただのド素人だった。タモリが彼らを魅了したいわゆる「密室芸」は、イグアナの真似、4カ国語麻雀、寺山修司や昭和天皇の物真似といったマニアックなものばかり。もともとは日陰がお似合いのマイナー芸人だったのだ。

 だが、タモリはその地位にとどまらなかった。密室芸の使い手として知られる不気味な芸人だったタモリは、昼の帯番組『笑っていいとも!』(フジテレビ)にレギュラー出演を果たして、いつのまにか「お昼の顔」になってしまった。陰から陽へ、タモリはあっという間にタレントとしてのイメージを転換させていったのである。

 かといって、自分の信念を曲げて人気取りだけに走ったというわけでもない。『いいとも!』を続ける一方で、『タモリ倶楽部』(テレビ朝日)に代表される自身の趣味を生かした仕事にも積極的に取り組んでいた。

 タモリはビートたけし、明石家さんまと並んで「お笑いビッグ3」と呼ばれることがある。だが、漫才や漫談の経験があり、紛れもなく「お笑い芸人」としての確かな出自を持つたけしやさんまと違って、タモリには芸人であるというはっきりとした自覚やこだわりのようなものはあまり感じられない。むしろ、「芸人だからこうあるべきだ」とか「こうしなくてはいけない」といった暗黙のルールを公然と破っていくことに楽しみを見いだしているような印象を受ける。

 そんなタモリの特異性を改めて思い知らされることになったのが、昨年8月の故・赤塚不二夫の葬儀だ。タモリが赤塚に捧げた弔辞は、日本中の人々の感動を呼んだ。だが、あれさえもタモリにとっては一種のパフォーマンスにすぎなかったという説もある。

 タモリが『いいとも!』生みの親である元テレビプロデューサー横澤彪氏に語ったところによれば、何も書かれていない紙を見ながら朗読しているふりをしたのは、歌舞伎の「勧進帳」のパロディーだったのだという。自分の中でそのネタをネタとして成立させるためにも、タモリは感情を表に出さず、一滴の涙もこぼさずに淡々と言葉を捧げていた。見ている人を安易に泣かせることも笑わせることも拒否して、あの一世一代のパフォーマンスを成し遂げたのである。

 もちろん、「勧進帳」のパロディーだという本人の証言さえも、どこまでが本気なのかはわからない。本来の「タモリらしさ」とは、こういうつかみどころのなさ、お仕着せのイメージを常に拒否しようとする「タモリ的運動」の中にこそ見いだされるのではないだろうか。

 タモリは昔も今も、一定の型に収まらないタレントである。タモリとアコムの関係に違和感を覚える人は、頭の中で無意識のうちに「サラ金=悪」「タモリ=善」というレッテル貼りを行っているのではないだろうか。

 タモリの座右の銘は「適当」である。タモリが本当は何を考えているのかは、本人にさえもわからないのかもしれない。
(お笑い評論家/ラリー遠田)

●「この芸人を見よ!」書籍化のお知らせ

日刊サイゾーで連載されている、お笑い評論家・ラリー遠田の「この芸人を見よ!」が本になります。ビートたけし、明石家さんま、タモリら大御所から、オリエンタル・ラジオ、はんにゃ、ジャルジャルなどの超若手まで、鋭い批評眼と深すぎる”お笑い愛”で綴られたコラムを全編加筆修正。さらに、「ゼロ年代のお笑い史」を総決算したり、今年で9回目を迎える「M-1グランプリ」の進化を徹底的に分析したりと、盛りだくさんの内容になります。発売は2009年11月下旬予定。ご期待ください。

●連載「この芸人を見よ!」INDEX
【第24回】ケンドーコバヤシ 「時代が追いついてきた」彼がすべらない3つの理由
【第23回】カンニング竹山 「理由なき怒りの刃」を収めた先に見る未来
【第22回】ナイツ 「星を継ぐ者」古臭さを武器に変えた浅草最強の新世代
【第21回】立川談志 孤高の家元が歩み続ける「死にぞこないの夢」の中
【第20回】バカリズム 業界内も絶賛する「フォーマット」としての革新性
【第19回】劇団ひとり 結婚会見に垣間見た芸人の「フェイクとリアル」
【第18回】オードリー 挫折の末に磨き上げた「春日」その比類なき存在
【第17回】千原兄弟 東京進出13年目 「真のブレイク」とは
【第16回】狩野英孝 「レッドカーペットの申し子」の進化するスベリキャラ
【第15回】サンドウィッチマン 「ドラマとしてのM-1」を体現した前王者
【第14回】小島よしお 「キング・オブ・一発屋」のキャラクター戦略
【第13回】U字工事 M-1決勝出場「北関東の星」が急成長を遂げた理由
【第12回】江頭2:50 空気を読んで無茶をやる「笑いの求道者」
【第11回】バナナマン 実力派を変革に導いた「ブサイク顔面芸」の衝撃
【第10回】山本高広 「偶像は死んだ」ものまね芸人の破壊力
【第09回】東京03 三者三様のキャラクターが描き出す「日常のリアル」
【第08回】ジャルジャル 「コント冬の時代」に生れ落ちた寵児
【第07回】爆笑問題・太田光 誤解を恐れない「なんちゃってインテリ」
【第06回】世界のナベアツ 「アホを突き詰める」究極のオリジナリティ
【第05回】伊集院光 ラジオキングが磨き上げた「空気を形にする力」
【第04回】鳥居みゆき 強靭な妄想キャラを支える「比類なき覚悟」
【第03回】くりぃむしちゅー有田哲平 が見せる「引き芸の境地」
【第02回】オリエンタルラジオ 「華やかな挫折の先に」
【第01回】有吉弘行 が手にした「毒舌の免罪符」

【関連記事】  鳥居みゆき激白「人が死ぬコントは”生への願望”なんです」
【関連記事】 「誰も知らなかった『R-1』ファイナリスト」鬼頭真也の素顔に迫る!
【関連記事】 キングオブコメディ 今すべての『誤解』を解く!?

世にも奇妙な物語 DVDの特別編

これもまた看板はタモリ。

amazon_associate_logo.jpg

最終更新:2013/02/07 12:58
こんな記事も読まれています

アコムCM出演で失望? タモリの既存イメージと「タモリ的なるもの」のページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

絶対的満足度の至宝店

すべて見る

サイゾーレビューすべて見る

集団左遷!!

TBS/日曜21:00~

銀行員・福山雅治が支店の立て直しに奮闘!

あなたの番です

日本テレビ/日曜22:30~

田中圭&原田知世が交換殺人に巻き込まれる!?

ラジエーションハウス

フジテレビ/月曜21:00~

月9初主演の窪田正孝が天才放射線技師に!

パーフェクトワールド

フジテレビ/火曜21:00~

松坂桃李と山本美月がおくる“王道”ラブストーリー

わたし、定時で帰ります。

TBS/火曜22:00~

吉高由里子が「働き方新時代」のニューヒロインに!

白衣の戦士!

日本テレビ/水曜22:00~

中条あやみ&水川あさみがW主演!

ストロベリーナイト・サーガ

フジテレビ/木曜22:00~

二階堂ふみ&亀梨和也コンビで人気作をリメイク

執事 西園寺の名推理2

TBS/金曜20:00~

 “完璧すぎる執事”上川隆也が帰ってきた!

インハンド

TBS/金曜22:00~

山Pが義手&ドSの天才科学者に!

きのう何食べた?

テレビ東京/金曜0:12~

西島秀俊&内野聖陽のオトナBL・節約グルメドラマ

俺のスカート、どこ行った?

日本テレビ/土曜22:00~

古田新太扮する女装家高校教師が嵐を巻き起こす!?

イチオシ企画

【キング・オブ・アウトロー】瓜田純士、かく語りき

“キング・オブ・アウトロー”こと瓜田純士が森羅万象を斬る不定期連載
写真
特集

ジャニー喜多川”危篤報道”の真偽

ジャニーさんが都内の総合病院へ緊急搬送!気になる容体は…?
写真
人気連載

宮迫博之『アメトーーク』終了

今週の注目記事・第1位「堀尾アナが<ビビット>...…
写真
ドラマレビュー

『集団左遷』三上博史が福山を上回る

  平成から令和をまたいだ、福山雅治初のサラリーマンもの『集団左遷!!』(TBS系)...…
写真