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“夢とロマン”を追及して一攫千金 今、「財宝引き揚げビジネス」が熱い!?【2】

zaiho02.jpg海洋考古学や海底発掘のノウハウを知り尽くした
熟練ダイバーだけが長期間にわたり採用される。
それだけにコストも莫大だ。(写真提供/RST社)

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魑魅魍魎が蠢く世界 コイン1枚が1億円にも

 サルベージを行ううえで最初にすべき仕事について、山本社長は「その海域で合法的に引き揚げ作業を行うための権利及び許可を、関係国と交渉のうえ取得することです」と説明する。それにより浮かび上がってくる利害関係のポイントは、①引き揚げを行う会社(国)②沈没船の所有者(国)③引き揚げ作業を行う海域、の3点。前述の「南海一号」の事例では、①「中国」が、②「中国籍の船」を、③「中国海域」で引き揚げたためにスムーズに事が運んだが、仮にこれが外国船であったなら、所有権は複雑となっただろう。

 また、作業をする現場が公海上でない特定国の海域なら、当然その国も権利主張に参戦してくる。実際、一例目に挙げた米海底探査会社・オデッセイ社(以下、オ社)によるスペイン船引き揚げについては、財宝が民間の商船ではなくスペイン軍の船から発見されたこと、さらに作業現場がスペイン領海内だったとして(オ社は「公海上だった」と主張)、財宝の所有権はスペインに帰属するという申し立てを、同国政府がフロリダ州連邦地方裁判所に提起。スペイン政府はその後米政府に対し、考古学的遺産を積んだ同国の難破船に対して国家主権を保護するよう要請するなど、民間会社によるサルベージ・ビジネスは国家間の問題にまで発展している。

 裁判は継続中だが、連邦地裁はオ社の家宅捜索を命じるなど、事実関係の究明に厳しい態度で挑んでおり、関係筋によればオ社の勝ち目は薄いという見方が一般的だ。それどころかオ社は、まだ係争中であるにもかかわらず、今回引き揚げた財宝の一部をすでに換金し、莫大な裁判費用に充当しているとの情報もあり、今後敗訴が確定した時点で財宝がどれだけ残っているかが心配される事態となっている。

「こうした事態を避けるためにも、作業を行う前に、現地の腕利き弁護士を雇用し、関係国との間で、作業を行なう権利や引き揚げた場合の分配率などを綿密に話し合い、これに基づく複雑な契約をしっかり結ぶ必要があるのです」と山本社長は話す。ちなみに分配率は、国宝級の財宝は関係国へ無償提供し、残った財宝をその国と折半するのが通例だそうだ。

 如才ない悪徳弁護士やアンダーテーブル(賄賂)を求める現地役人に、金だけ吸い取られるという事態も珍しくない魑魅魍魎が蠢く世界。こうした費用に5000~6000万円かかることもあり、実際に「2億円かかった事例もある」とのこと。オ社がリスクを負ってまで法的手続きを無視した事実は、時間とコストと高度な専門性が求められるこの作業が、それほど面倒な仕事であるという証左ともいえるだろう。

 契約を交わして権利を取得した後、現地法人を設置し、そこを基地として調査が開始される。RST社の今回の現場では、「セブン・シーズサーチ&サルベージ」という現地法人を設置し、約半年前から現地スタッフを常駐させている。5月中には、1~2名の邦人スタッフを出向させる予定だ。

 現地スタッフの大まかな内訳は、サルベージを行うための膨大な情報とノウハウを持つ世界的な海洋考古学者や専門家、複数の潜水調査専門ダイバー、さらには清掃員や料理人など。山本社長によれば、こうしたスタッフをこれまで半年間雇用してきた人件費と、前述の弁護士費用に約1200万円、現地法人の設置には300万円、調査費用に1600万円ほど投資しているという。

「それでも今回は安く済んだほうです。中南米など治安の不安定な国ではセキュリティにも多額の費用がかかります。ある国では自動小銃で武装した10名程度からなる私設軍隊並みの組織で、現地法人を警護しましたから、これの何倍もの費用がかかりました」

 引き揚げ作業に入る前に、そのサルベージ案件が事業として採算が取れるかどうかを調べる作業も必要となる。例えば沈没船の存在が確認できたとしても、発見された財宝の価値が低かったり、イリーガルなトレジャーハンターたちに盗掘されていたりする可能性もある。また、自然現象で流出してしまっていることもあるという。それらを調べるための潜水調査に、専門のダイバーらを6カ月間雇用するなどして、前述の調査費用とは別に3000万円が費やされた。

 調査や引き揚げ作業には最新の機器も必要となり、当然これらのリース料も莫大な金額となる。実は今回の現場では、機器のリース及び購入費用に最も多くの予算が計上されている。引き揚げ作業に必要な一般的な機器といえば、マグネット・メーター、サイドスキャン水中音波探知機、GPS、音波地層探知器、金属探知器、遠隔無人操作潜水艦、地理情報ソフトなどが挙げられるが、これ以外にも機器を設置する大型の台船や船舶も、現場によっては必要となる。今回はこれらすべてを使用したわけではないが、それでも必要となる機器のリースや購入費用に3億円を支出している。

 そしてついに、この5月から本格引き揚げ作業が始まったわけだが、今後の見通しとして「月2000~3000万円かかる見込み。仮に半年ほどで作業が完了すると仮定して、1億2000万~1億8000万円はかかるでしょう」とのこと。これらをトータルすると、軽く5億円を超えることがわかる。より水深が深い現場や治安の悪い海域、自然現象が厳しい場合には、さらにこの10倍以上かかることも珍しくない。

 無事引き揚げが完了し、関係諸国と分配した後に獲得したお宝はオークションなどで換金される。コインの売買価格は保存状態や製造時期、製造場所などによりさまざまだが、銀貨の場合は1枚数百ドルから4000ドル(約40万円)前後、場合によってはコイン1枚に1億円の値がつくことも。ちなみに今回のお宝の見込み額は「調査結果によると、50億~500億円」。まさに宝探しだ。

 莫大な投資により実現するサルベージ・ビジネスだが、資金調達の方法は各企業によりさまざまだ。RST社の場合は、文化遺産サルベージファンドを創設し、主に個人投資家を対象に出資を募る方法を取っている。いわばサルベージ事業の証券化で、引き揚げられた財宝の売却により得られた利益が配当の原資となる仕組みだ。

 大航海時代のお宝が、数百年という時を超え、海底に眠る財宝として現代人の前に現れたと考えれば、なんとも夢のある話ではある。

【3】へ続く/文=浮島さとし/「サイゾー」6月号より)

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最終更新:2009/06/22 12:09
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