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文壇の異端児・新堂冬樹ロングインタビュー

“偽善家が大キライ”な新堂冬樹が放つリアルなスプラッター映画『虫皇帝』

mushikotei_main.jpg夏休みの最後を飾る衝撃のドキュメンタリー映画『虫皇帝』。スプラッター映画が
かわいく思えるほど、凄惨なバトルが繰り広げられる。「国産カブトムシvs.ダイオウ
サソリ」の試合内容には新堂氏もショックを受けたという。
(c)2009彩プロ/新堂プロ

 ”地獄のファーブル博士”と呼ばせてもらおう。『毒蟲vs.溝鼠』(徳間書店)などのバイオレンス小説で知られるベストセラー作家・新堂冬樹氏が初監督を務めた映画『虫皇帝』が8月29日(土)から新宿K’s cinemaで公開される。

 国産カブトムシ、タガメ、カマキリといった昆虫たちと、サソリ、ムカデ、毒グモなどの毒蟲たちが、文字通り”食うか食われるか”のリアルファイトを繰り広げるドキュメンタリー映像だ。タンザニア産のサソリをヘッドロック状態で締め上げた国産タガメが血を吸う様子、東南アジア生まれの巨大クワガタのアゴに挟まれたアフリカ産タランチュラから体液が飛び出す瞬間など、凄惨を極めた全24戦が次々とスクリーンに映し出される。フィクションであるスプラッター映画を遥かに上回る生々しさだ。映倫の審査はまったくのスルーだったそうだが、劇場公開にあたり波紋を呼ぶのは必至。全身から黒いオーラを放つ、サングラス姿の新堂冬樹氏の本音に迫った。

mushikotei_shindoh.jpgドキュメンタリー映画『虫皇帝』で監督デビューを果たした新堂冬樹氏。昼は芸能プロの
マネージメント、夜は小説の執筆という過密スケジュールの中、問題作を完成させた。
睡眠をとるのは3日に1度だという。

──子どもの頃からの虫好きだったそうですね。

新堂 えぇ、子どもなら誰しもカブトムシやクワガタが好きだったはずです。ただオレの場合は、カブトムシやクワガタも好きだけど、石を引っくり返してムカデやオサムシを見つけて喜ぶ少年だったんです。ムカデと虫を戦わせて遊んでいました。虫は何でも好きなんです。虫に限らず動物も好き。犬や猫だけでなく、モモンガやヘビなんかも好きなんです。

──変わった動物の生態に興味がある?

新堂 もちろんそれもありますが、何でもNo.1を決めたくなってしまう性格なんです(笑)。例えば、フルーツの中で一番人気のあるのはどれだろう? コーヒーと紅茶はどちらがより多くの人に愛されているんだろう? 日本人全員にアンケートしたくなるんです。強い弱いだけじゃなくて、どっちがよりメジャーかどうかを考えるのも好きなんです。それに本宮ひろ志さんの漫画で言えば、『硬派銀次郎』(集英社)の銀ちゃんと『男一匹ガキ大将』(集英社)の万吉が戦ったら、一体どっちが勝つんだろう? そんな、あり得ない対戦を想像するのも好きでした。

──新堂作品は”善と悪の二元論”の世界ではなく、『毒蟲vs.溝鼠』のようにどちらが強いか弱いか、芸能界を舞台にした『枕女優』(河出書房新社)のように売れるか売れないかといった”力の二元論”の世界。子どもの頃から虫を戦わせていたということですが、虫バトルは新堂作品の源流とも言えそうですね。

新堂 それはあるでしょうね。オレの小説には凄いキャラクターが次々と出てきて、その中で誰が勝ち残るのかという展開がけっこうあるんです。逆に強いヤツ同士が戦って最強王者を決めるんじゃなくて、小心者たちを集めて誰がいちばんケツの穴が小さいのか競い合うというのを小説として書いてみても面白いかもしれませんね(笑)。最強ヒーロー決定戦じゃなくて、ダメ男No.1決定戦です。

──しかし、劇場公開される『虫皇帝』の捕食シーンは波紋を呼びそうです。

新堂 試写会にはお子さんも来てたよね。ショックを受けるかもしれない。『ムシキング』の延長のつもりで観にくると大変なことになっちゃうよ。むしろ平気で虫を殺しちゃう子どもよりも、大人のほうがキツく感じるかもしれないね。

──映倫(映画倫理委員会)からは何のおとがめもなかった?

新堂 うん、映倫の審査は通っちゃった。ノーカットで、モザイクもなし。オレが驚いてるくらいですよ(笑)。これが哺乳類だとアウトだったんじゃないかな。

──動物愛護協会がうるさい米国では絶対に上映できない内容ですね。『ショーシャンクの空に』(94)では鳥にミールワームを食べさせるシーンにさえクレームが付いたそうですから。

mushikotei_sub2.jpgタランチュラ、ヘラクレス、カマキリ……まったく
未体験の激闘が続く。

新堂 米国じゃダメでしょうね。でも、そんなクレーム付ける人は完璧なベジタリアンじゃなきゃいけないよね。牛肉、豚肉、鶏肉を食べてる人は文句を言えないよ。

──『虫皇帝』は生態系の違うアジアの昆虫とアフリカの砂漠に棲むサソリが戦う。自然界ではありえない対戦にモラルを問う人もいるかと思いますが、その点はどう考えます?

新堂 その手の質問はよく受けるよ。自分のやっていることを正当化する気はないんだ。ただ、文句を付ける人には、ペットとして飼われているアナコンダやワニ用の餌として食用マウスやウサギが売買されていて、産業として成り立っている現実はどうなんですかと問い返したいですね。牛や豚や鶏もそうですよ。餌として育てられたものだから殺していいって考えは、人間の身勝手な考えですよ。彼らだって、生きているんです。餌である彼らは死ぬ運命しかない。でも、この虫バトルではフィフティ・フィフティで生き残る可能性はあるわけです。

──”弱肉強食”は世の習いとして歴然と存在する、と。

新堂 そう。他にも、「フォアグラ、美味しい」とか言って食べてる人がいるわけでしょ。オレがやってることは決して特別なことじゃないよ、ということです。人を2人殺したら殺人犯で死刑になるけど、戦争で大量殺戮した人は英雄として讃えられる。人を殺してることは同じなのに、扱いが違うのはなぜ? と問いたいですね。

──偽善論では現実の世界を見渡すことはできないということですか?

新堂 うん、オレ、偽善的なものが大キライ。「君のことを心配して、忠告してあげたんだよ」とか言うけど、「お前の行動が気にくわない」とストレートに言えよって思いますよ。いちいち理由を探して、クレームを付ける。もちろん、中にはベジタリアンで、虫一匹も殺さないマザー・テレサみたいな人もいるでしょう。そういう人から言われれば、オレ、素直に従いますよ。でもベジタリアンの人でも、台所にゴキブリが出てきたら殺虫剤を吹き付けて殺すんですよ。ゴキブリが病原菌を運ぶなんて言われているけど、実際はそうでもないんです。結局、生理的な嫌悪感で決めつけているだけなんです。それにね、法律は犯してなくても、人を傷つけている人はたくさんいますよ。ワイドショーでは実情をわかってないコメンテーターたちが渦中の人をバンバン叩いてるじゃないですか。「虫たちが……」と言う前に、人間たちがどれだけ酷いことをしているか認識したほうがいいよね。ま、小説の中では偽善的なものに対する問い掛けは何度もしていますが、『虫皇帝』は純粋なバトルですよ。

──ちなみにファイトマネーは、どのくらいに?

新堂 仕入れ代金ね。けっこー、高いよ(笑)。アフリカやブラジルの虫は斡旋料も払わなくちゃいけないんで、高いのは1匹で20万円くらいする。ダイオウサソリはカメラに映っているのは1匹だけですが、実際は10匹いるダイオウサソリ同士で地区予選させて、勝ち残ったものが出場しているんです。国産カブトムシも40~50匹の中で一番強いヤツ。その分、今回の映画にはずいぶんとお金がかかっています。アフリカ産カマキリであるパラドゥクスマンティスは一匹5万円もするんだけど、ネットオークションで100円にならないようなトビズムカデに一瞬にして仕留められてしまった(苦笑)。

──あぁ、虫の値段と命の重さは、まったく無関係なんですね。

新堂 えぇ、まったく関係ありません。虫の値段は人間が勝手に付けたものですから。

──凄惨な戦いの連続に背筋が凍る一方、国産カブトムシが自分より大きなダイオウサソリに何度も立ち向かっていく闘争心には心が動かされました。また、海外の虫より国産の虫を応援している自分がいることに気付き、驚きました。

新堂 国産カブトムシは、すごい闘争心だよね。角が折れて、足が取れても立ち向かっていく。オレも1000試合くらい虫バトルを観ているけど、今回の「国産カブトムシvs.ダイオウサソリ」の一戦ほどショッキングな試合は観たことがないよ。オレがショックを受けたくらいだから、お子さんが観てトラウマにならないか心配。国産カブトムシって、それこそ日本人にとっては国民的ヒーローでしょ。プロレスでいえば力道山やアントニオ猪木にあたる存在なのに、知らない外国人レスラーに腕を折られ、顔の皮を引きはがされ、パンツを脱がされて、引きづり回されているようなもの。自分たちにとってのヒーローがとんでもない目に遭っていることには胸が痛みましたよ。

──戦いが終わった後のファイターたちの処遇は……?

新堂 死んじゃった虫たちは葬るしかないです。可燃物扱いではなく、他の虫たちに餌としてあげることが多いですね。

──最後にもう一度お聞きしますが、虫が好きなんですよね?

新堂 本当に好きですよ(笑)。虐待しているつもりはありません。純粋に今までありえなかった虫たちのバトルをプロデュースしているだけです。小説も自分が書いたものを装丁からいろいろ打ち合わせて出版するのが好きだし、2年前に芸能プロダクションを立ち上げたのもタレントを1からプロデュースしてみたかったから。お金儲けが目的じゃないんです、プロデュースするの好きなんですよ。
(取材・文=長野辰次)

新堂冬樹(しんどう・ふゆき)
1966年生まれ。金融会社勤務を経験後、経営コンサルタントに。98年に闇金融の世界を舞台にした『血塗られた神話』(講談社)でメフィスト賞を受賞し、作家デビュー。07年には芸能プロダクション「新堂プロ」を設立。”昆虫格闘技プロデューサー”として、人気DVDシリーズ『世界最強虫王決定戦』を監修。9月25日には『虫皇帝POISON 毒蟲vs.毒蟲』がGPミュージアムよりリリースされる。

『虫皇帝 昆虫軍vs毒蟲軍~プライドをかけた全面戦争~』
監督・解説/新堂冬樹
実況/あんべあつし
出演/大海エリカ、若木萌
配給/彩プロ
8月29日(土)より新宿K’s cinemaほか全国順次公開予定。
<http://mushikotei.jp/>

虫皇帝

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最終更新:2009/08/28 11:00

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