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シンポジウム「アニメ・マンガ文化の10年」レポート

誰がアニメを変えたのか? 世代論で切るオタク文化の10年、そして50年

meidaisimpo01.jpgこの10年のアニメ界を総括するキーワードは
やはり……

 はたしてアニメはどこから来てどこへ行くのか。名称には「10年」を掲げながら、じつは日本アニメの深層がどこにあり、そこからの50年を経て、現在にいかに影響を及ぼしているかを問うシンポジウムが、去る12月6日に明治大学駿河台キャンパスで催された。

 同大学国際日本学部准教授の森川嘉一郎氏が基調講演を行ったあと休憩を挟み、4名の著名人を加えてのパネルディスカッションという2部構成。前半は弁舌巧みな森川氏が時にブラックな笑いを喚起しつつ、世代人口が作品内容を規定する様子をコンパクトに解説。後半は主にアニメ演出家の谷口悟朗氏による暴露大会(?)の様相を呈していた。

 オタクが愛好するアニメ的なものとは、アニメ、マンガ、ゲーム、はてはライトノベルまで幅広い。森川氏はこのシンポジウムにいかなる名称を付与すべきか慎重な論議があったことを述べていたが、実際の内容はほぼアニメについて、だった。

■すべてのアニメは「厨二病」的である!?

 基調講演のメインフレームは、アニメが徐々にオタクのものになっていくその根源を探るもの。冒頭、森川氏は1996~97年の『エヴァ』ブームから始まる「セカイ系」の台頭を引き合いに出し、まず、アニメ自体が「厨二病」的であり、厨二病的資質の人、あるいはリアルに中学二年生以下の若者に向けたメディアであることを喝破する。

 そこで問題になるのが、各年代における「中二(14歳以下)人口」である。

meidaisimpo02.jpgさりとて実際の「中二」の人口は減り続けて
いるのである。

 たとえば中二人口は、団塊の世代が14歳前後にさしかかった1963年に247万人というピークを迎えるが、そのとき彼らが熱心に読みふけっていたのは、サンデー、マガジンの二大週刊少年マンガ誌だ。当時はマンガが若いメディアだったのだ。そのままマンガを読み続け、世代がスライドしていくに従い、青年向け、大人向けのマンガ誌が創刊されていったのはご存知のとおり。

 オタクメディアの成否は、いかにして14歳以下の子供たちを捉えるかにかかっていることになる。

■「少子化」がアニメの訴求対象をシフトさせた

 次の波がアニメだった。74年の『宇宙戦艦ヤマト』に始まるアニメブームは多くの若者を巻き込む。サブカル誌「OUT」が特集を組み、のちにアニメ専門誌へと変貌していくほどのパワーがあった。森川氏はこの衝撃を「STUDIO VOICEがエヴァ特集号を発行した時に似ている」と、昔を知らない人にもわかりやすく表現したが、つまり当時はまだアニメはオタクのものではなく、高感度でカッコイイ若者文化になりうる可能性があったのだ。

 ではなぜアニメがオタクのものになっていったのか。まだアニメが誰のものでもなかった時代、ちょうど『機動戦士ガンダム』本放映の頃(79年)、鉄道や模型など「オタク気質」を持った人々がアニメをプロトコル(共通言語)として、一箇所に集まってきてしまった。これが一点。

 もうひとつは少子化である。当初、大人が子供向けに作る「テレビまんが」として成立していたアニメは、『ヤマト』に影響を受けたクリエイターの流入により、80年代を「大人とオタクによる子供とオタクのためのアニメ」へと位相をずらす。

 しかし87年に団塊ジュニアが14歳を迎えたあと、子供人口は減少。90年代に入り、「オタクのオタクによるオタクのためのアニメ」として固定していく。

 本来子供が占めるべき消費者の役目を、大人にならなかった厨二病気質の大人=オタクが肩代わりすることによって延命しているのが現在のアニメなのだ。そのようにアニメを変質させたのは誰なのか、そしてリア充のものにならなかったのが、よいことなのか悪いことなのか? と問題を提起し、森川氏は基調講演を締めくくった。

meidaisimpo03.jpg後半のディスカッションにはアイドル界を代表して「きゃんち」も参加

 休憩後はプロデューサーの上田耕行氏、演出家の谷口悟朗氏、評論家の氷川竜介氏、ファン代表としてタレントの喜屋武ちあき氏が登壇してのパネルディスカッション。基調講演を受けて「この10年」を振り返った。

■2010年、アニメは半減する!?

 まず話題に上ったのはアニメのデジタル化だった。90年代から00年代にかけてアニメがデジタル制作へと移行。撮影や特殊効果の分野ではそれまでの技術が使えなくなり、店をたたむか否かを迫られた作り手も少なくなかったという。その後、色調がギラつきすぎていて画面になじまないなどの課題を克服して現在に至るが、制作コストは悩みどころらしい。

「何が大きいかといえば、レンダリングの時間コストが増大したこと。いまのテレビのクオリティを維持するのは大変です」(上田氏)

 先日、『化物語』のWeb配信が予定時刻よりも遅れたのは記憶に新しいが、仕事を切りづらいのは各分野でデジタルへ移行した際に必ず発生する問題なのではないだろうか。

 ディスカッションの後半は若干ネガティブな話題が続いた。

 ブルーレイはDVDよりも圧倒的に画質がよいがコストが高くて儲からない、ブログや2ちゃんねるの登場で守秘義務違反が起きやすくなり、人間関係に齟齬が生じやすくなった……など、環境が激変したこの10年を振り返ると、どうしても負の面が思い起こされるのだろう。

 谷口氏が強調していたのはアニメ業界の構造的な問題。世間に認められず、地位もなく先行きが不安、収入も少ない……となると、アニメ制作者は、せめて面白いものを作りたいと、自己満足に陥りがちになってしまうのだ。偶然、自己満足のベクトルがお客さんの嗜好とマッチしていればよいが、それが意図的にできない状況にあるのだという。

「パンツを脱いだら先はない。脱ぐまでをどう描くか。ただのエロじゃん、というの(と一般アニメの峻別)はどこかで判断していかないと」(谷口氏)

 上田氏はこう、危機感を口にした。

「来年はアニメは(全盛期の)半分になる。これからは面白いものを観たい。”売り”の要素だけを考えすぎて乱雑に作ってきてしまったのが、この10年間の後半だった。また、ひと皮剥けなきゃいけない時期に来ているのだと思います」

 谷口氏も「次はお客さんに”こういうものはどうですか?”と提案する時代に入っていかないといけない。そうでないと、作っている人間の背骨がなくなってくる」と決意を新たにする。

「キャッチボールの力で素晴らしくなる」と森川氏はまとめたが、はたして今後10年、作り手とファンの関係はどう変化するのか。そしてアニメ文化はさらに生き延びることができるのか。

 重大な節目に差し掛かっていることは確かなようだ。
(取材・文=後藤勝)

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最終更新:2009/12/28 18:35

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