いったいどうなる!? 「まわしを巻いた暴力団」横綱・朝青龍の暴行事件
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
●第30回(1月26日~2月1日発売号より)
第1位
「水商売男性の鼻骨を叩き折った『朝青龍』」(「週刊新潮」2月4日号)
第2位
「有名人権派弁護士の『家庭内人権問題』」(「週刊現代」2月13日号)
第3位
「編集後記 本誌・山口一臣」(「週刊朝日」2月12日号)
永田町もマスメディアも緊張感が張り詰め、”その日”を息を殺して待っている。2月4日に、小沢一郎幹事長の元秘書で衆議院議員の石川知裕容疑者の拘留期限を迎えるからだ。小沢一郎幹事長の「在宅起訴」、または「逮捕」まであるのか。
そうした中で週刊誌は、小沢「逮捕決定的」派と検察批判派とに別れ、特に、「週刊現代」と「週刊朝日」の「代理戦争」がすこぶるおもしろい。
「現代」は、検察が、小沢幹事長の住んでいる深沢の自宅のガサ入れと逮捕があると読み、永田町から小沢は退場するとしている。中でも「伝説の特捜検事が明かす 堀田力『検察は知っている』」で、堀田氏は、なぜ小沢氏はあのような豪邸に住め、現金を貯め込むことができたのかという国民の疑問に答えるために検察は、「土地代金に充てられた4億円の原資」「不記載の動機は何なのか」という疑惑の全容を解明するために、淡々と捜査に取り組んでいて、民主党の議員たちの「検察のリークを調べる」などという脅しに「絶対に怯むことはありません」と言い切る。
4億円の不記載があったことは間違いないが、それを小沢氏が「隠しておけよ」と言っていないと共犯には問えないし、元秘書たちは「言われていない」と言い張るだろうが、そんなことも検察側は織り込み済みであると語っている。ここから読み取れるのは、今回は、検察の「正義」が勝つということだ。
さあどうする「朝日」。巻頭で、検察批判の旗頭・鈴木宗男衆院議員を鼎談に登場させ、検察のやり方に「頭の中で自分たちのストーリーをつくって、追い込んで都合のいい証言を当てはめる」と大批判。ジャーナリストの上杉隆氏に、検察は、石川容疑者の小さな子どもがいる女性秘書まで「ウソ」をついて呼び出し、10時間近くにわたり「監禁」して、虚偽の証言を強要したと怒りの告発をしている。
だが、雑誌は編集長のもの。今週の「朝日」のいちばんの読み物は、山口編集長の「編集後記」である。「(中略)検察がいよいよ青年将校化してきたように感じます。編集部へもさまざまなルートでプレッシャーがかかるようになってきました。味方はあまりいません。『日刊ゲンダイ』くらいでしょうか(爆)。毎週、胃が痛む思いです。しかし、世の中がひとつの方向に流れそうなとき、あえて別の視点を提供するのが週刊誌の役割だと思っています。読者の支持がある限り、大本営発表に抗する誌面をつくっていくつもりです(後略)」。この姿勢こそ、週刊誌のあるべき姿だと拍手したい。様々なルートの中には、親会社の朝日新聞も入っているんだろうが、大変だね。
私の考えは、以前から書いているように、堀田力説に近くて、検察やや有利。小沢氏が長年やってきたゼネコン支配・金権政治から脱却しなければ、鳩山首相の言う「コンクリートから人へ」など絵に描いた餅になってしまうからだ。
第2位は、週刊誌編集長時代、何度も名誉毀損で訴えられた私としては、いまでも人権派弁護士と聞くと体に震えがくるのだが、有名人権派弁護士(なのだそうだ)飯田正剛氏の身内とのトラブルの話しである。
昨年12月8日、過去7年間で3,000万円の所得隠しがあると報じられ、人権派とは思えない悪質さが暴露された飯田氏だが、別居している夫人からも「家族の人権を踏みにじる、卑劣としか言いようのない人間です」と批判されている。
生活費の増額や次男の大学の学費を払ってほしいといっても、「カネがない」と拒否しながら、好きな女性には大盤振る舞い。
飯田氏が一方的に家を出て行った後、自宅を追い出された家族は、夫人の母親のところに身を寄せている。法科大学院への進学が決まっていた長男は、家族を養うために働きに出ている。その長男は大学時代に3度司法試験に落ちたそうだが、そんな彼に飯田氏は、「自分のような偉大な弁護士になってみろ。年に5,000万円も稼ぐようなやり手の弁護士になってみろ」といったという。
次男から、大学入学時にスーツを買ってほしいと頼まれると、「おカネがなくて買えません、と大学側に手紙を書いてやる」といって追い出した。
「父は以前(芥川賞作家の)柳美里さんが書いた『石に泳ぐ魚』のモデルとされた女性が、名誉を傷つけられたと出版差し止めを求めた訴訟で、原告側弁護団の一員となりました。そのとき、柳さんに『あなたは人の心の痛みがわかりますか』と言った。しかし、父にそんな偉そうなことを言える資格があるのでしょうか」(次男)
また飯田氏は、親しくしている女性とのメールをファイルしており、その中には「そこが、タイヘンなヘンタイおじさんの性愛の本質です」などと、自分のことを書いてあるそうだ。
弁護士が人権を守るのは当たり前のこと。ことさら人権派などと名乗る弁護士の中には、家族の人権も守れない人間がいるようだ。
今週のグランプリは間違いなくこれ。初場所中にもかかわらず大酒を呑み、路上で知人を殴った朝青龍の「事件」は、最初、「フライデー」がスクープした。その際、朝青龍の個人マネジャーが、殴られたのは私だと名乗り出たと書いたが、それが違っていて、殴られたのは六本木のクラブ「F」の実質的な責任者だったと「週刊新潮」がスクープした。
この記事が出てからの経緯は、新聞テレビで報じられているから、ここでは詳しく書かない。いまの関心は、相撲協会が、どういう罰を朝青龍に下すかに移っている。推測するに、あわてた朝青龍は、被害者に謝り、おそらく多額の示談金を払って事件にしないよう頼み込んだに違いない。警察は朝青龍からも事情を聞きたいといっているようだが、書類送検になるのかどうかは、いまのところ定かではない。
「新潮」は「まわしを巻いた暴力団」と書いているが、もはや横綱の品格云々の問題ではない。もはやこれまでと、朝青龍に引退勧告することが、日本の国技・大相撲の地に落ちかかった品格を保つ唯一の道である。私はそう考えるのだが、読者諸氏はいかがだろうか。
(文=元木昌彦)
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
日出づる国の国技です。
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