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【元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第40回】

「勃たなくてもいいから日本!」週刊誌が提唱する老いとセックスの幸せな未来

asahi0413.jpg「週刊朝日」4月23日号

●第40回(4月6日~4月13日発売号より)

第1位
「『週刊現代』SEX特集のイカせ度」(「週刊朝日」4月23日号)

第2位
「「ツイッターを疑え!」(「週刊ポスト」4月23日号)

第3位
「『原発バブル』と民主党」(「AERA」4月19日号)

 軍産複合体という概念がある。「軍需産業を中心とした私企業と軍隊(及び国防総省の様な軍官僚)と政府が形成する政治的・経済的・軍事的な勢力の連合体」(Wikipediaより)である。

 いまは、軍産複合体ももちろん存在するが、それより勢力を強めているのは、世界の先進諸国が手を結んで推進している「環産複合体」ではないかと、私は思う。

 環境のためといえば泣く子も黙り、環境を守れ、地球を温暖から救えと世界中が大合唱している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が採用した、地球温暖化のデータのねつ造疑惑が発覚しても、大手メディアを含めて話題にならないのは、ここに巨大な国策産業が育つ可能性があるからなのだろう。

 中でも脚光を浴びているのは原発である。かつて原発は、その危険性を巡って国論を二分した時期があった。批判の急先鋒だった朝日新聞も、いつからか、原発容認派へ転向した感があり、必要悪として、いまのところは受け入れざるをえないという世論が形成されていったが、原発の安全性が証明されたわけではない。

 しかし、民主党の鳩山由紀夫氏や菅直人氏らは「過渡的エネルギー」と位置づけていた原発を、06年から「基幹エネルギー」に格上げし、政権を取ったら、鳩山首相自らが「原発の商人」となって、世界に売り込みに行くと発言する熱の入れ方である。

 その背景には、20年までに温室効果ガスを90年比で25%削減する目標を達成するためという大義名分があり、「供給安定と経済性に優れた純国産エネルギー」としての原発を、30年までに十数基建設する方針を打ち出す構えだという。

 また、「経産省の試算では、これから2025年までの15年間で、世界中で100万キロワット級の原発480基余りが建設される。荒っぽく言うと原発は1基4,000億円。すでに現在建設中のプラントを除いても、市場規模は170兆円余りに膨らむ計算だ。経産省が言うような『原子力ルネサンス』どころか、原発市場の炸裂である」(AERA)

 原発だけでこれだけの需要があるのだから、産業界には堪えられないおいしい話しだろう。それゆえか、このビジネスに目をつけた米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏が東芝と組んで、次世代原子力炉の開発に乗り出すそうだ。

 民主党内では、慎重な意見すら出せない雰囲気になっている。それは、「原発業界の出身議員は衆参計10人近くに上り、声高に推進を主張する」(AERA)からだ。

「脱原発」を掲げていた社民党も、原発推進を掲げた「地球温暖化対策基本法案」を了承してしまった。民主党内で少ない慎重派の大島九州男参院議員はこう語っている。

「まず安全性を考えるべきだ。いまだ確立していない放射性廃棄物の処理まで含めると、経済性という理由も成り立たないでしょう」

 さまざまな不安や疑問が払拭されていないのに、闇雲に鳩山民主党は推進しようとしているのだ。民主党の危うさは、ここにも出ている。

 第2位は、「ツイッター」が世界を変えるとばかり、煽りまくるメディアとツイッターフリークたちに冷水を浴びせる「ポスト」の記事。

 WEBプランナーの中川淳一郎氏は、「ツイッター」のエバンジェリスト(伝道者)たちが発信する書籍や記事は、似たり寄ったりで、「ちなみにオバマ大統領は就任後になって、自分がツイッターをやっていなかったことを告白したんだけど(事務所スタッフが書き込んでいた)、そのことには誰も触れません。(中略)かつては、ツイッター同様に『セカンドライフ』を絶賛していました。今、セカンドライフを話題にする人なんていない(笑)」と話している。

 そうそう、セカンドライフなんてありましたな。私がいた「オーマイニュース」でも、新しい物好きな人間が、いち早くあそこに出店したけど、いまはどうなっているんだろう?

 よくツイッターをマーケティングに利用して成功した例として、パソコン通販の米デルのケースが取りあげられる。ツイッター経由で2年間で300万ドル(約2.8億円)を売り上げたというものだが、ITコンサルタントの宮脇睦氏は、少し冷静になれとこういっている。

「まずデルの08年度と09年度の通期売り上げの合計は約1,222億ドルもあります。ツイッターによる売り上げ比はわずか0.002%。(中略)果たして『成功』といえるのでしょうか。(中略)今のところ、ツイッターの市場訴求力はメルマガ程度に過ぎないと私は見ます」

 慶應大学大学院教授の岸博幸氏は、ネットにある、さらに大きな問題点を指摘する。

「米国の巨大ネット企業が『情報はタダ』という所業を容認するばかりか、強力に推進していることです。例えばグーグルの『ブック検索』には、全世界の書籍を手中に収めて収益を増やそうという思惑が透けて見えます。しかも米国政府は、ネット企業を法律や規則面で優遇してきました。米国が、『情報支配』『ソフトパワー強化』『ネット広告市場制覇』を狙っているのは明らか。(中略)日本も、米国の”下僕”に成り果てたくなければ、ネット鎖国とまではいかなくとも、自国でネット環境を整えることに目を向けるべきです」

 iPadの発売は、さらにアメリカの日本支配を強めることになるのか。でも、欲しいよなiPad。

 今週の第1位は、他人のフンドシで相撲を取る典型的な企画に捧げる。

 「現代」は、新編集長になって10万部も部数が伸びたそうだが、その原動力となっているのが、中高年だけではない、高齢者をも含めたセックス講座特集であることは間違いない。

 何しろ「80歳からのSEX 生涯現役の秘密」というものまであるのだから。

 ちなみに、今週の特集は「男たちの恐怖『中折れ』に勝つ」である。

 コラムニストの北原みのりさんは、「現代」を、「ペニスじゃないよ、体力じゃないよ、勃起がままならない熟年層に新しい道を提示したのである」と評価する。

「セクハラオヤジそのものだったころの『週刊現代』を知る者としては、勃起しなくなったぐらいで、人生観やセックス観まで変わってしまう男の人生って、いったい何なのか……ペニスとはいったい男にとってどのような存在なのか、思わず思いを馳せたくなる」と、私が編集長をやっていた頃の「現代」に思いをいたし、「一昔前って、『セックスを家庭に持ち込まない』と公言する人、やたら多かったと思うけど」と鋭い突っ込みを入れる。

 そうなのだ。「現代」が提唱するセックスのお相手は、風俗嬢ではなく、誰あろう「慣れ親しんだ妻」なのだ。

 現代は「もう長年コルクを開けていないワインが、あなたの傍にもないだろうか」と書き、さらには「衰えすら愛おしい。そう思えたら、これほどの幸せはないだろう」と、私などは、口が裂けてもいえなかったことをサラッといってのけるのだ。

 北原さんの結びの文章は絶品である。私は腹を抱えて笑った。

「要は、『たちあがれ日本』なんて、恥ずかしい政党をつくっている場合じゃないってこと。勃たなくたって、自分を豊にする道を、女の声に耳を澄ましながら、アロマを焚いて考えれば答えは出てくる! セクハラ男も生まれ変わる時代。勃たなくてもいいから日本!」
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

週刊 ダイヤモンド 2010年 1/23号

乗せられてる感は否めない。

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最終更新:2010/04/13 15:36
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