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妖怪小説家・田辺青蛙が突撃レポート!

京女は幽霊よりも怖い? 京言葉で綴るスプラッタ怪談『京都怪談 おじゃみ』

ojyami02.jpg第4回『幽』怪談文学賞授賞式の様子。

 ちょっと前まで肌寒かったのに、梅雨入りした途端蒸し暑くなりましたね。暑い季節といえば、アレですよ、アレ。怪談ですよ。ってことで、以前ここでもご紹介した(参照記事)「幽」怪談文学賞受賞者である、神狛しずさんにインタビューをしてみました。京都を舞台に、一人称の京言葉で綴られる『京都怪談 おじゃみ』は、上品さを感じさせる幻想的な作品ながらも、体の中からゾクっとくる怖さがあります。

 幽霊も怖いけど、京都の女性も怖いですよ~。

田辺青蛙(以下、田辺) 小説に専念しようと、お仕事を辞められたそうですが、どれくらいのペースで新人賞に応募しましたか?

神狛しず(以下、神狛) 公募ガイドの情報をもとにいろいろ。月に百枚程度は書くように心がけていました(使いものになるか否かは別として)。「おじゃみ」を書いていた頃は公募ガイド社のYA文学短編小説賞(最終候補作にとどまりました)にも出したり、やはり(仕事を)辞めたばかりなのでどんどん書いていましたが、そのうちに、専念してもダメなときは全く書けないということも思い知りましたし、開き直りました。一年間の平均で言えば、応募(童話やショートショートは除く)は二カ月に一本程度。あまり筆が早いほうではないと思います。

田辺 十分速いと思いますよ。私は短いのばかり書いているので、百枚って聞くと、うわってなってしまいます(汗)。さて、受賞の連絡を聞いた時、どう思われましたか?

神狛 一瞬ポカン、としました。「最終に残っていますよ」という連絡は昨年の7月にいただいていたのですが、発表の日とされていた11月9日にはセールスの電話ばかりかかってきて。ああ、駄目だったんだな、ともう諦めて夕食を食べ始めたところだったので。

田辺 ふむふむ、そうだったのですか。で、受賞作となった「おじゃみ」に出てくる、我が子に火を点けて清々しているようなトンデモないお母さんのモデルはいるんですか?

神狛 トンデモ母さんにモデルがいたら、それこそトンデモないはずなのですが、テレビのニュースを観ていたら、世の中には結構たくさんいました。嗚呼、トンデモない。「おじゃみ」ちゃんは、うちのシーズーの女の子の頭のかたちから(アイデアを得ました)。あんこが詰まっていそうな顔をしているんですよ。あと、我が家の壁裏に鼬が入り込んで大変だった時期があって、夜な夜なゴトゴト気味悪くて眠れなかった経験もヒントに。

田辺 イケズな京都人が作中に沢山出てきますが、実際にそのような人に会うことはありますか?

神狛 いいえ、京都の方はほんまに優しいですよ。着物も、街角で見知らぬ方が笑顔でササッ、とおはしょりを整えてくださったり、帯の歪みを直して「ひやぁ、素敵やわぁ」と褒めてくださったり。皆様、怖がらないで京都へ来てください。

 ただ、地獄耳だとキズつくこともあるかも知れません。でも、こういうことは全国共通の日常だと思いますよ? 京都(特定地域)の「聴こえよがし」が絶妙なだけで……。

田辺 そ、そうなのですか。私は生まれが大阪で育ちが京都なんですが、それゆえに京都の微妙なニュアンスっていうか、何か言葉遣いとかが肌に合わなかったんですよ。「あらぁ、安物がよぅ似あわはってええねぇ~」みたいなノリが怖い! って私の話になってしまってすみません。確かに「聴こえよがし」だけが絶妙なだけかもしれませんね……。作品を京都弁で書こうと思われた理由は何かあるんですか?

神狛 標準語で書いているつもりが方言だったり、自分のスピーチの録画を観たら、標準語で話していたつもりだったのに、イントネーションが思いきり訛っていたりして。それで、「ええい」と(放言丸出しで)地元近くの伝説の地を舞台にしたミステリーを書いたら賞をいただいたので、やはり自然体がいいのかなと思いまして。でも、京都と言っても<中の人>ではないので、普段はそんなに激しい京都弁では喋っていません。

田辺 そうなのですか。京都在住の私でも、綺麗な京言葉だなーと思って読んでいました。「虫籠窓」は京都の古い町家が舞台ですが、実際に住まれたことはありますか?

神狛 ありません。京都の田舎の山奥、築三十五年の木造日本家屋に鼬や鼠や百足と一緒に暮らしております。町家は市内に出ると、カフェやギャラリーになっているところがあって憧れますが、実際に住んでいる方のお話を聞くと、ぼっかぶり(ゴキブリ)が多くて大変だそうです。

田辺 授賞式のお着物は何か作品と関連はありますか?「前妻さん」はお着物が幽霊の正体ですが、その発想はどこからですか?

神狛 京都だし、着物で……じゃあ「おじゃみ」っぽく小豆色で……という安直な理由です(普段から着物が好きでよく着ています)。弘法さん(毎月21日)にいっぱい古着物が出ていて、こういう古い着物には前の持ち主の気持ちなんか宿っていそう……と思ったのが「前妻さん」の地になっています。25日は天神さんですが、着物では怖くて行けません。

田辺 京都人の着物を見る目は厳しいですよね。最後に、次回作についてお聞きしたいのですが、今後も京都を舞台として怪談を書かれるんですか?

神狛 そうですね、今はいただけるお仕事を精一杯こなしつつ、新たな展開も見せられたらいいなと思っています。怪談以外にも書きたいお話はたくさんありますし、怪談も、せっかく入口に立たせていただいた分野ですので、ますます深くダイブしていきたいな、と。京都には書き尽くせないほど、いい舞台がありますから。
(取材・文=田辺青蛙)

かみこま・しず
京都府京都市生まれ。現在、府下五里五里の里(城陽市)在住。同志社大学神学部卒業。図書館勤務を経て、 2008年、別名にて第6回北区内田康夫ミステリー文学賞大賞受賞。2009年、「おじゃみ」で第4回『幽』怪談文学賞短編部門大賞受賞。犬好き。愛犬は二匹のシーズー。

tanabe_prof.jpgたなべ・せいあ
「小説すばる」(集英社)「幽」(メディアファクトリー)、WEBマガジン『ポプラビーチ』などで妖怪や怪談に関する記事を担当。2008年、『生き屏風』(角川書店 )で第15回日本ホラー小説大賞を受賞。綾波レイのコスプレで授賞式に挑む。著書の『生き屏風』、共著に『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ。2冊目の書き下ろしホラー小説、『魂追い』(角川書店)も好評発売中。

『京都怪談 おじゃみ』
第4回『幽』怪談文学賞・短編部門大賞受賞の京都怪談。京都を舞台に展開される、おんなの想いがつまった6つの短編怪談。古民家に暮らす妻、由緒ある家に嫁いだ若奥様、古くからの町家で祖母・母と暮らす妙齢の女性、京都の大学生、女子高の生徒……。さまざまな「京おんな」の生きざまを描く6つの怪談物語。
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最終更新:2010/07/21 12:21
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