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ネット利用者の被害は甚大? 「児童ポルノ」ブロッキング問題とは

 なにかと注目される「児童ポルノ」の規制問題。そこで新たに話題となっているのがインターネットでのブロッキング問題だ。インターネット上での「児童ポルノ」の流通を阻止しようとする動きが、かえってネットを利用する、ごく一般の人々に損害を与えてしまう、そんなブロッキングの問題点を探った。

 インターネット上での閲覧を制限する方法としてよく利用されているのはフィルタリングだ。これは、見てよいサイト、悪いサイトを設定することによって、アダルトサイトが子どもの目に触れるのを防ぐもの。個人の自由に基づいて、サービス利用の可否を決めることが可能で、利用しない場合は自由にサイトを閲覧することができる。

 これに対して、ブロッキングとはリストアップされたサイトに誰もアクセスできないように遮断するもの。「児童ポルノ」におけるブロッキングでは、児童ポルノが掲載されているとするサイトのリストに基づいて、プロバイダがアクセスしようするユーザーの通信を遮断する手法が構想されている。


 既にいくつかの国が、「児童ポルノ」対策を実施しているが、日本では4月に原口一博総務大臣(当時)が、記者会見で導入を視野に入れていることを述べ、にわかに注目を集めた。その後、7月に政府の犯罪対策閣僚会議は、ブロッキングを柱とする「児童ポルノ排除総合対策」を決定。本年度中にも、試験運用が行われる予定だ。

 もちろん「児童ポルノ」は憎むべき犯罪なのだが、ブロッキングにはさまざまな問題が残る。一つは、憲法でも保障された通信の秘密に関わる問題だ。特定のサイトにアクセスする通信を遮断しようとすれば、プロバイダ側は当然ながらユーザーがアクセスしようとしているサイトの情報(ホスト名やIPアドレスなど)をチェックすることになる。通信の秘密を守ることは、いわば国家の大原則とも言うべきもの。日本において、通信の秘密を犯していいのは犯罪捜査の時に限られているが、それでも裁判所の令状等、いくつもの手続きが必要となる。そもそも、犯罪捜査が名目とは言え、「盗聴」を容認することの是非も議論が分かれるところだ。

 そして、最大の問題はオーバーブロッキング。すなわち、「児童ポルノ」が存在しないサイトまでもがブロッキングの対象となってしまうこと。ブロッキングを行うシステムはいくつか存在するが、システムによっては起こりえる問題だ。また、ブロッキングの対象となるリストは、「アドレスリスト作成管理団体」という民間組織が設置され、インターネット上の違法情報の通報先であるインターネット・ホットラインセンター(IHC)や警察からの情報によってリストを作成するとしている。これはあくまで人間が行う作業。そもそもなにが「児童ポルノ」にあたるのかを正確に把握できるのか不安が残る。

 試験運用前に、9月10日に開催された社団法人日本インターネットプロバイダー協会(JAIPA)の行政法律部会主催の「インターネット上のブロッキングを考える緊急公開勉強会」では、ブロッキングのシステムや法律との兼ね合いについて、専門家からの講義が行われた。この催しが画期的だったのは、ブロッキングに慎重な姿勢を取る人から積極的な導入を唱える人までさまざまな意見交換が行われたこと。

 JAIPA行政法律部会副会長の野口尚志氏は、全国民の通信の秘密を侵害することになるブロッキングの導入に慎重な姿勢を示し、「(通信の秘密に)例外を作れば侵害する範囲が広がっていく。児童ポルノのブロッキングが(児童への被害を防ぐ)緊急避難的な措置になり得るのか」と意見を表明。

 これに対して、警察庁生活安全局情報技術犯罪対策課の齋藤正憲氏は「オーバーブロッキングはあってはならない」とした上で、「児童ポルノ」サイトの判定にあたっては医師や弁護士を交えて厳格な判断を行うとして、導入に理解を求めた。

 さて、こうした議論の中で注目をすべきは、(財)日本ユニセフ協会の中井裕真広報室長の発言である。ブロッキングによる「児童ポルノ」被害の減少を期待するという中井氏は、「一定の隠語で検索すれば誰もが容易に児童ポルノにアクセスできる」と主張。一般公開の勉強会のため見せることはできないが、ネット上に流通するさまざまな「児童ポルノ」を目撃していることを述べ、かつて「児童ポルノ」に出演させられ今でもネット上に自分の画像が流通していることに恐怖する被害者の声を紹介した。別段揶揄するわけではないが、ユニセフ協会の説明では、いつも「一定の隠語」で容易に検索が可能だとされるが、その隠語は明かされず外部の人間は誰も実証した人間はいない。

 こうしたさまざまな立場が入り乱れる中で、既にブロッキングを行っている海外の事例を紹介したのが多摩大学講師の中川譲氏だ。中川氏によれば、昨年3月にウィキリークスに流出したノルウェーのブロック対象リストを精査したところ、明らかに「児童ポルノ」を扱っていたサイトは3%未満だったという。また、イギリスではウィキペディアの画像が「児童ポルノ」だと判断されてブロック対象になった事例を取り上げ「該当性をどう判断するか。法的根拠のない中でなにをブロックするか」といった問題を提起した。

 既に諸外国では、問題が噴出している中で実施されようとしている「児童ポルノ」のブロッキング。日本の場合、問題をややこしくしているのが、既に10数年に渡って議論が行われている「所持そのものを禁じるか」「マンガは児童ポルノに含まれるか」といった点だろう。少なくとも、実際の児童を被写体にしたものは犯罪であることは明白だ。この集会ではブロッキングに積極的か慎重かで意見に相違のある中井氏と中川氏が「児童ポルノ」という用語が焦点を狂わせるとしてCAM(Child Abuse Material 児童虐待製造物)といった用語を使うべきという点では一致していたのが、もっとも印象的であった。
(取材・文=昼間たかし)

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最終更新:2010/09/24 18:00

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