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アイドル映画専門映画監督・梶野竜太郎の【アイドル映画評】第25幕

すべてが中途半端! だがそれが美学!!『後ろから前から』

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アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。

●今回のお題
『後ろから前から』
監督:増本庄一郎
女性主演:宮内知美、琴乃、街田しおん、木下ほうか

 いやいや、ものすごく久しぶりで申し訳ございません。

 10月22日から上映される自分の監督作品『魚介類 山岡マイコ』の準備で、他のアイドル映画を見る時間が失われてしまいました。

『後ろから前から』
営業成績がまったく振るわないタクシ
ー運転手の桃子(宮内知美)は同僚の
乱子(琴乃)と女の武器を使う秘策を
一計! 成績をグングン上げていくが、
会社にバレてクビに。売春容疑で警察
に追われタクシーで逃走する桃子は、
最後の客・怪しい町田(金橋良樹)を
拾う。ガス欠になったタクシーを捨て
道中を行き自然に求め合う2人。驚愕
の過去が2人を結びつけているのも知
らずに……。(Amazonより引用)
DVD発売中/3,990円(税込)/
販売元:Happinet

 といってもアイドル映画好きな私としては、そんなに長い時間見ないと体が悪い方向へトランスフォームしてしまうので、「ひさびさに見るんだ! 元気が出まくる作品にしよう!」といって選んだのが、今回の作品『後ろから前から』です。あぁ、昭和……いや、昭和を再現したかった平成が作った妄想昭和……。

 なぜかセクシーな運転手ばかりのタクシー会社のドライバー桃子。売り上げはいつも最下位。このままではマズいと思い、売り上げを増やすために、女の武器を使う作戦を思いついたのであった。

 おかげで営業成績はうなぎ上りだったが、会社に思いっきりバレて辞めさせられてしまう。その上、売春容疑で警察に追われ、もういいところ無し。最後の客として迎えた男、石田。この男もタダでは済まない過去を持っていて、2人で逃避行するハメになってしまう……。

 いうまでもなく、1980年のにっかつの堂々たる正月映画! 畑中葉子さん主演の『後から前から』のリメークです。

 ♪後から前から~どうぞ~♪ ってメッチャクチャ流行ったんですよ。当時16歳だった私にはハチ切れそうなインパクトで、さらに歌詞からしてゴールデンタイムで流れるわけがないので、深夜番組でしか聞けないところにも魅力がありました。

 そのリメークを? 誰だれ? 平成の畑中葉子を狙ってるのは誰!? 宮内知美! 前作から脱いでますね!

 で、その宮内知美ちゃん。映画の中では脱いでいるというものの、必要最小限で、まーこんな感じですかねっていうレベルで終始進む。レズなシーンはキレイだけど、これって内容もちゃんと『後前』なの???

 だいたいね、元々のお話は暴走族の話だし、脱ぐわ脱ぐわキャバレーやるわ、パンティーの雨あられのシーンがあるわ、もうハチャメチャエロだったんですよ!

 それが、背景、世界観、時代、そして主人公・宮内知美。すべてにおいて昭和のにおいもない、かといって平成の新しさもない。

 あえていうなら、どこの時代でもない中途半端な世界観がここには存在する。中途半端。このフレーズは一生懸命やってることに関しては、ものすごく失礼な言葉だけど、もし、「中途半端を売りにした映画です」と割り切ってみたら、それはそれで武器になるかもしれない。

 オープニングは謎の……いや、ものすごく無理のある3人プレーから始まる。テーマソング中のPV的演出から、逃亡者・石田のキャラから、宮内知美の何ともいえないうまくはないセリフから、そして、エンディングのオチから、すべてが中途半端!

 だいたい、ちゃんと脱いでないことがすべてもの中途半端! しかし! しかしですよ!

 一つ一つが確立してて、「ここだけが中途半端~」というより、「もう全部中途半端です~~!!」という今作、そう思って映像を見ていると、宮内知美がどんどんかわいく見えてくる! 琴乃とのレズ的なシーンも、真剣に見ていた時よりも色っぽく感じる! 不思議でしょ! それは何故か!? 中途半端な世界観で、どっちつかずのセリフを話しまくる宮内知美! 彼女の行動すべてが原因である。

 普通の映画であれだけベッタベタな演出もしくは、自でしゃべった場合、白々し過ぎて私ならテイクを重ねるだろう。

 そして後で気づく。「あ……中途半端な方が映画としてまとまってたのか……」

 なんともいえないセリフの羅列の宮内知美だからこそ、いい頃合いの中途半端な名作が生まれたと言えよう。

 まーでも、真の『後から前から』ファンには、全然話が違うので、お勧めしない。しかし、ここまで確立された”THE 中途半端”、もうこうなったら『桃尻娘』とかも、このテイストで見たいっす~~~!!
(文=梶野竜太郎)

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●かじの・りゅうたろう
映画監督・マルチプランナー。1964年東京生まれ。
短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。第2回したまちコメディ映画祭 in 台東にて、新作『魚介類 山岡マイコ』を上映。2010年に長編版として劇場上映が予定されている。現在、ニコニコ動画チャンネル『魚介類TV』(毎週日曜日20時~)に出演中。
詳しくは→http://mentaiman.com/
ブログは→http://ameblo.jp/mentaiman1964/

後ろから前から

このタクシー乗りたい。

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●アイドル映画監督梶野竜太郎の【アイドル映画評】INDEX
【第24回】なんでこの娘が主演なんだ? 田代さやか、徹底追求!『18倫』
【第23回】覗きを越えた見せたがる演出『Oh!透明人間』
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【第21回】『巨乳ドラゴン 温泉ゾンビ VS ストリッパー5』思い切りさらけ出す演出と”AV女優”の必然
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【第19回】男装女子から漏れる少女の可愛さ『1999年の夏休み』
【第18回】無気力露出系マニア必見! ペ・ドゥナをとことん味わう『空気人形』
【第17回】ヴァーチャル監督視線体験ムービー『テレビばかり見てると馬鹿になる』
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【第3回】『リンダ リンダ リンダ』──王道的傑作に潜む”多角的フェチズム”
【第2回】『妄想少女オタク系』──初心者歓迎!? BLの世界へご案内
【第1回】『すんドめ』──オナニー禁止とチラリズムの限界点

最終更新:2011/11/11 18:09
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