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被災地復興の光と陰

[対談]”東北学”から読み解く被災地の闇──日本の植民地たる東北で、タブーなき復興とは?

【プレミアサイゾーより】

──震災前、すでに活力を失いつつあった東日本大震災の被災地。”日本の植民地”たる東北に、描くべき未来はあるのか? 気鋭の社会学者・小熊英二氏と、震災で甚大な被害を受けた南三陸町出身の山内明美氏が、その難問に挑む。

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 東日本大震災から7カ月が過ぎた。その被害は甚大で復興にはいまだほど遠く、メディアに登場する被災地、そしてそこに生きる被災者の姿はいきおい、「かわいそうな被災者」、そして「そんなつらい現実を受け止め、懸命にがんばる人々」と、感傷的に描かれがちだ。いや、現にそうである以上、そのこと自体を非難はできまい。しかし、そのように”のみ”被災地が語られてしまうことで、覆い隠されていること─タブー─がありはしまいか?

 被災地の大部分は、震災前からすでに疲弊しきっていたのではなかったか。そうした被災地にとって、国からただ予算を引っ張るだけの、そしてその代わりに国の要求に沿う形でただ町や村を再生させるだけの「復興」に、一体いかほどの意味があるのか─。

 かような問題意識のもと、7月に緊急出版されたのが『「東北」再生』(イースト・プレス)だ。同書では、「東北学」を提唱してきた民俗学者の赤坂憲雄氏、『単一民族神話の起源―〈日本人〉の自画像の系譜』『〈民主〉と〈愛国〉―戦後日本のナショナリズムと公共性』(共に新曜社)などで日本の歴史を問い直してきた社会学者の小熊英二氏、そして、小熊氏の学問上の弟子に当たり、また今回の震災で甚大な被害を受けた町のひとつである宮城県南三陸町で生まれ育った歴史社会学者の山内明美氏が、これからの東北の、そして日本のあるべき姿を語り合っている。

 そこで今回は、東日本大震災復興構想会議の委員職を務め多忙な赤坂氏を除く2人に、「震災前の被災地」がもともと抱えていた問題と、それを踏まえた上での被災地の今後のあるべき姿を、あらためて語ってもらった。

山内明美(以下、) 陸の孤島─。私が生まれ育った宮城県南三陸町を含めた三陸沿岸の町々は、そう呼ばれてきました。以前から後継者不足に悩む漁村や農村、そして、公立病院にさえ産婦人科・小児科もないというような医療過疎の町です。2005年に旧志津川町と旧歌津町が合併して、南三陸町に名前が変わりましたが、ほぼ限界集落の寄せ集まりであることに変わりはありません。少子高齢化の進んだ町です。地元の高校を卒業しても、長男は家督を継ぐために残りますが、それ以外の者は町を出て行かざるを得ない。そもそも働き口が町役場かJAくらいしかないんです。農閑期には、出稼ぎに行く人もたくさんいました。

 私の場合は、高校卒業後、町の臨時職員になって、志津川の「民俗資料館」へ勤務しました。この民俗資料館は、80年代の国の農業構造改善事業からの出資で運営が始まったため、管轄は農林課でした。そういった経緯からか、村の大地主の民家を修復保存して公開していました。

 その後、もっと違った形での町づくりについて学びたいと、24歳の時に上京して、大学に入学したんです。

小熊英二(以下、) 公民館などの「箱モノ」が地方で盛んにつくられたのは、80年代末から90年代。日米構造協議で日本が内需拡大を求められたのと、不況対策で公共事業が増えたのとが大きな要因です。そうやって国から降ってきたお金を、地方自治体は「箱モノ」にばかり使ってしまい、国にも地方にも財政赤字だけが残ってしまった。もう少し有効な使い方ができていれば、今とは違っていたかもしれません。

 そうなんです。南三陸町の民俗資料館も、まさにそんな状態でした。80年代の国のばらまき政策で多くの箱モノを建てたはいいけれど、それにかかる莫大な維持費を、自治体の予算ではとても工面できなくなっていた。そうして累積赤字の積もった町には県の指導が入り、自分の町の予算さえ自分たちで決められないという状態に陥っていた。

──『「東北」再生』において民俗学者の赤坂憲雄氏は、東京に食料と労働力、電力を供給し続けてきた東北を「日本の植民地」と表現している。その「植民地化」の歴史についても、小熊氏が同書で解説している。以下に要約してみよう。

 本来は米作には適さない土地であった東北が「米どころ」のイメージを確立したのは、実は戦後から。朝鮮半島や台湾を失ったために困窮した食料自給を補うためだった。そのため、漁業の町である気仙沼や石巻も栄えた。

 また、一次産業以外でも同様のことが起こる。鉄鉱山があった岩手県釜石市には、鉄の需要増加を受け、日本中から労働者が集まる。農村女性をはじめとした低賃金の非正規労働者をあてにして、東北各地に下請けの部品工場などが誘致された。と同時に、集団就職や出稼ぎで、若い労働力は東京をはじめ大都市へと向かった。

 しかし、まずは一次産業が、70年前後から都市の食品供給が間に合ってきたことによる米の減反政策がきっかけとなり、立ちゆかなくなる。さらに鉱工業においては、80〜90年代の国際化の中、東北よりもさらに安価な労働力を有するアジアとの競争にさらされていく。そんな中、釜石の新日鐵釜石は、89年に製鉄をやめてしまう。

 その次にやってくるのが、地方にスキー場やゴルフ場、テーマパークなどを作るリゾート化の流れ─典型的な公共事業の時代だ。東京とリゾート地を結ぶため、公共事業で高速道路や空港がつくられ、東京の広告代理店と地方の土建業者の合作のような計画が各地で進んでいった。

 しかし、90年から2000年代以降、この流れは破綻する。地域を活性化させてくれるはずだった道路を使い、若者はどんどん都会に出ていった。駅前の商店街は、シャッター通りになった。東北の人口変動は、60年代前半をピークにして、あとは減少の一途をたどるのみ。東北に雇用などなく、補助金で地域を下支えできた時代など、震災前にとうに終わってしまっていたのだ。

 そして、そんな状況に追い打ちをかけるように、突如として震災が町を襲った──。

 三陸沿岸の町は、公共事業や補助金がふんだんに降ってきた時代の幻影をいまだに追っているように見えます。

 震災後、「これでまた公共投資が降ってくる」などと浮き足立っている首長や建設業者などは多いでしょうね。一時的にそういった流れはあるでしょうが、絶対に長くは続かない。リーダーの人たちは、まずは「夢の時代」を忘れることから始めないと。

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最終更新:2011/11/18 16:24

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