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元木昌彦の「週刊誌スクープ大賞」第124回

財政危機のギリシャに学べ!? これからの時代を生き抜く生活防衛の基礎知識

motok2012i0207.jpg「フライデー」2月17日号

第1位
「白昼堂々! 浅野忠信・仲里依紗『抱擁&キス!の大阪デート一部始終』」(「フライデー」2月17日号)

第2位
「下り坂『日本』を歩く 生活防衛の基礎知識」(「週刊新潮」2月9日号)

第3位
「『たかがコミック』とは言わせない」(「ニューズウィーク日本版」2月8日号)

 今年に入って、私が気になっているいくつかの言葉を紹介してみたい。

 まずは「週刊金曜日」1月13日号のインタビューでの辺見庸の言葉。

「大震災の以前から、大きなパラダイム(枠組み)の変化はすでにあったのです。震災がそれを暴いてくれた。この国のマスコミ、文芸、市民運動を含めて、戦後しばらくは、状況に対する否定的な思惟というものがありましたが、八十年代ごろから現状を倦まずに批判し疑っていくという理念の芽を打ち消してきたのです。やがて疑問を持つこと自体を封じ、肯定的な思惟を強いるようになってきた。今回の出来事はそのことを明らかにしました。(中略)関東大震災では戒厳令が敷かれ、それ自体法的にもデタラメな戒厳令ではあったのだけれど、今はどうでしょう。自分たちで『心の戒厳令』を敷いてくれている。使用言語を限定するとか、テレビCMをやめるとか。国家権力が強制したわけでもないのに、みんな整然と下からのファシズムをやっている。(中略)『おずからのファシズム』です。それに対する言い知れぬ薄気味悪さ、耐えがたさ。そうしたものが『眼の海』(詩集。第42回高見順賞を受賞した=筆者注)を執筆しているとき、心の底に流れていましたね」

 次は経済評論家の内橋克人。朝日新聞1月8日付けのインタビューより。

「米国はじめ国内外の最強の秩序形成者に抵抗する力もなく、生活に追われて政治的な難題に真正面から対峙するゆとりもない。同時に、精神のバランスを維持するために『うっぷん晴らし政治』を渇望する。政治の混乱を面白がり、自虐的に、極めて反射的に、表面的に評価して、選挙権を行使する。大阪市の橋下徹市長の『ハシズム現象』も貧困マジョリティーの心情的瞬発力に支えられている面が大きい。(中略)民主政治を基盤とする国でのヒーロー待望論ほど異常なものはない。日本古来の『頂点同調主義』に加え、異議を唱える者を排除する『熱狂的等質化現象』が一体となる。『うっぷん晴らし政治』の渇望を満たそうとすれば、1930年代の政治が繰り返される。グローバリズムが生み出した『貧困ファシズム』の培地となりかねない」

 最後は京都大学大学院教授・佐伯啓思の『反・幸福論』(新潮社)から。

「これから、かつて百年少し前に起きたのと似た様々な混乱、軋轢が生まれてくることは確実です。ロシア、中国、それからアメリカを中心とした激しい資源の争奪戦。食料の争奪戦も起きるでしょう。(中略)しかし日本が同じようなむき出しの力の争奪戦に入っても、勝てるわけがない。だとすれば、やはり日本的な価値観を掲げる以外にないのではないでしょうか。その価値観のベースになるのは、道義であり、京都学派的な言い方をすれば、『無』や『空』といった日本的精神だろうと思います。自由を極端に主張しない。自然権としての平等や人権ということも声高には主張しない。欲望の気のままな解放も主張しないし、競争というものも節度を持った枠内でしか認めない。これが本来の日本的精神です。調和を求め、節度を求め、自己を抑制することを知り、他人に配慮する。これを、今の世の中で実践するのは非常に難しいことです。しかし、これら日本的な精神に基づいた価値観を打ち出していく以外に、われわれの取るべき道はありません。それは間違いない」

 今年は政治的にも経済的にも、昨年以上に厳しい混乱の時期が続くといわれている。そこで問われるのは一人一人がこの国をどうしたらいいのか、どう変えたらいいのかという確固たる「価値観」である。他人任せにしないで、おのおのの責任で考えることが一層求められることは間違いない。

 今週も各誌が大地震特集を組んでいる。それもいつ大地震が来るかという予測記事ではなく、大地震が来たときにどう生き延びることができるのかという「具体策」に踏み込んでいる。

 「4年以内に70%!『東京直下型大地震』死中の活」(週刊新潮)や「M8M9大地震 日本破滅 最悪の1週間はこうなる!」(週刊文春)が代表的である。

 大地震ものを取り上げなければと思って各誌読んでみたが、内容的にはどれも似たり寄ったりで、これはというのがない。そこで今週は、読んで陰々滅々となる大地震記事とは少し違う記事を取り上げてみた。

 まず「ニューズウィーク」の記事。バンド・デシネ(BD)ってみなさん知ってましたか? フランスやベルギーのコミックのことなんですね。

 書き出しは、昨年10月にロンドンで国際フェスティバルが開かれ、世界のコミックの有名作家が一堂に会したということから。

 フランス語圏内と英米のコミックに対する認識のどこが違うかといえば、「リスぺクトの有無」だという。BDはフランス語圏内では長い歴史を誇り、「9番目の芸術」といわれているそうだ。

 しかし、英米の意識も25年ほど前から変化した。そのきっかけになったのが、アート・スピーゲルマンの『マウスーアウシュヴィッツを生き延びた父親の物語』だそうだ。

 これは図書館や大学の蔵書になりピューリッツァー賞賞も受賞した。

 以来、批評家もコミック作家の独創性に注目せざるを得なくなって、グラフィックノベルはフィクションや歴史、個人史を伝える重要なアートになりつつあるのだそうだ。

 昨年秋には、イラン大統領選後の混乱の中、行方不明になった息子を捜す物語『ザハラの天国』(アミール)が12カ国で出版された。

 哲学者バートランド・ラッセルが数学の真理を追究する『ロジコミックス』が25カ国でベストセラーになった。

 現代ではスーパーヒーローものが衰え、女性の読者と作家が増えている。マウスのスピーゲルマンはコミックを「すべてを本質的に凝縮する」「絵による物語」と定義する。

 コミックの一コマは教会のステンドグラスの窓で、そこには物語が詰まっている。

 グラフィックノベルはアートとしても大きな可能性を秘めているが、パレスチナやボスニアの紛争ルポをアメリカで初めてコミック化したジョー・サッコが重視するのは「ドキュメンタリー機能」だという。

 コミックは軽やかに時間を遡り、絵の力によって、難民キャンプや爆撃を受けた町の様子を、読者の意識に浸透させることができるからだ。

 先ほどのアミールにとってグラフィックノベルは「究極の大衆メディア」で、「ストーリーを伝える上で最も早くて安くて便利な方法」だという。

 エジプトではコミックの出版点数が急増しているそうである。ムバラク前大統領がエジプト初のコミックの出版を禁止したことへの反動で、アラブの春の一環と捉えられているそうだ。

 文化評論家のマヤ・ヤッギはこう結んでいる。

「アートと行動主義というコミックの持つ2つの可能性が、人々に理解されるようになってきた。ブログやFacebookやTwitterと同じく、グラフィックノベルは革命を起こす武器になりそうだ」

 何と日本のマンガと違うことだろう。電子書籍で一番手っ取り早くカネになりそうなのはマンガだと、マンガを持っている出版社は期待しているようだが、日本のマンガが受け入れられるのはごくごく小さな地域だけかもしれない。

 マンガが世界的な認知を受け、広がっていくためには、漫画家の問題認識やドキュメンタリー性が必要になってくるのではないか。そうでないとマンガも「ガラパゴス化」していってしまう。

 五木寛之の『下山の思想』(幻冬舎)が売れている。謳い文句は「再び世界の経済大国をめざす道はない。敗戦から見事に登頂を果たした今こそ、実り多き『下山』を思い描くべきではないか。『下山』とは諦めの行動でなく新たな山頂に登る前のプロセスだ」というのだ。

 新たな山頂というのが何を指しているのかわからないが、もはや昔のようなバブル時代は望みようがないし、望むべきではない。

 そこでこの下山の時代をどう生きていくのかは、一人一人にとって大難問である。週刊誌にその類の記事が多くあるが、今週の新潮の記事は一番役に立ちそうである。

 第2位は「新潮」の「下り坂『日本』を歩く 生活防衛の基礎知識」。まずは「今やるべきは『資産』『ローン』『保険』の棚卸し作業」だと書かれている。

「生命保険を払いすぎている家庭が多いようですが、大黒柱が他界しても、子どもが18歳になるまで国から遺族年金が出る。夫名義の住宅ローンがあっても、たいていの家庭は団体信用生命保険に加入しているので、ローン残高は相殺される」

 だから借金は極力返して家計をスリム化しろというのだ。

 誠に真っ当な意見だ。さらにいえば、何千万の生命保険などに加入するより、その同じ額を毎月積み立てておいたほうがいい。早く死にたいなら別だが、満期になって戻ってくるカネは全額ではないのだ。

 個人的には、生命保険は詐欺集団だと思いたくなるほど酷い仕組みになっている。だが若いときは、万が一を考えてしまう。そこが生命保険会社につけ込まれるのである。ご用心を!

 メガバンクに金を預けても1年の金利は雀の涙。しかし、先日話題になった静岡銀行インターネット支店の「スーパー定期(1年もの)」なら金利は0.7%に跳ね上がる。ここは早々と目標額に達して終わってしまったが、探せば地方にはまだまだあるそうだ。

 例えば、香川銀行のインターネット支店「セルフうどん支店」では1年ものの定期預金が0.5%。愛媛銀行のネット支店「四国八十八カ所支店」でも1年ものの定期が同じ0.5%。すぐにチェックしてみたらどうか。

 インフレ対策にはコインパーキングがお奨めだそうだ。業者と組んで自宅の庭をコインパーキングにして自動販売機でも置けば、自販機1台で毎月5万円以上の利益を上げられるかもしれないというのだ。

 国際的な話としては、建築基準が厳しくてなかなか新築が許可されないイギリス・ロンドンでは不動産価格はここ30年右肩上がりだそうだ。

 廃屋をリフォームして値をつり上げて転売するのが財テクの主流だそうで、1,000万円で買って部屋を3つ増築した後、1億円で転売することも珍しくない。

 かの地は外国人が不動産を手放した際、1物件に限り売却益は非課税になるそうだ。カネがありあまっている人はやってみたらいかがか。

 金はまだまだ上がるそうである。

「過去にあった金の上昇相場では80年1月にピークを迎え、875ドルを記録しています。当時から比べると現在の物価は約2.5倍。これに合わせれば、金価格は2,200ドルまで上昇する余地がある」(ファイナンシャルプランナー深野康彦)

 まあ、私はいくら金があっても金は買わないがね。

 オフショア生保をご存じだろうか? 日本に支社や子会社を置いていないため自分から海外に行って手続きをしなくてはいけない生保なのだが、香港などで人気の元本保証の養老保険は、外資なので米ドルか香港ドルだが、月々3万円程度から始められ、5~25年の満期が設定されていて、利回りのよいものだと年利4.75%で複利運用してくれる。

 45歳のサラリーマンが月3万円ずつ積み立てると65歳になれば運用益だけで500万円近くになる。リスクがまったくないわけではないそうだが、月々3万円ならやってみてもいいかもしれない。

 ネットオークションは消費税もかからず、うまくやれば家計の足しになる。落札額で迷う人は「オークファン」というサイトがあり、楽天やヤフー、モバオクなどのネットオークションに出品されている商品の落札価格が調べられる。リスクもあるが、家計の助けになること間違いないそうだ。

 その他に「ギリシャから学ぶ国破れて山河あり」は、財政破綻したギリシャや夕張がどれほど酷いことになったかを知ることで学べ、と言っている。

「こんな赤字国なのに、世界的に高水準の生活をしているのがおかしいんです。現在の生活水準を2割落として貯蓄に回し、最低でも現在の年収分の貯蓄を作る。ギリシャの人たちのように慌てないために、いずれ来る財政破綻に備えて、今から生活水準を下げておくのです」(東京福祉大学大学院水谷研治教授)

 これからの「大変な時代」を生き抜くためには、きれいごとだけではダメで、絞った雑巾をさらに絞るような努力と知恵が必要なようである。もののあわれを感じさせる特集だ。

 今週のグランプリは「フライデー」の記事。

 浅野忠信(38)は渡辺謙に続いて世界的な俳優への道を歩き始めている。

 出演作は70本以上。主演映画『モンゴル』でアメリカアカデミー賞にノミネートされたし、この冬キアヌ・リーブスと共演した『47RONIN』が公開される。

 私生活では、95年に6歳年上のシンガー・Charaとできちゃった婚の末に入籍したが、2009年夏に子どもの親権を放棄して離婚した。

「別れる前、彼に女性の影があった。つまり、浅野の不倫が離婚の一因なんです」(テレビ局関係者)

 その彼女とも別れて16歳年下の仲里依紗(22)と交際中なのだ。仲はスウェーデン人の祖父譲りの端正なルックスで人気の若手女優。昨年は映画『モテキ』で好演し、現在はフジテレビ系の月9ドラマ『ラッキーセブン』に出演中。

 1月下旬の午後3時過ぎ。大阪の「アメリカ村」に真っ黒なサングラスを掛けたUKロック調なカップルが現れたと書いている。

 あちこちウインドショッピングを楽しんだ後、心斎橋筋の商店街を北上。カフェに入り、通りに面したソファに並んで座り1時間ほどくつろぐ。

 御堂筋のランドマーク、大丸前で信号待ち、手をつないでいた2人が見つめ合い、浅野が仲を引き寄せ、仲も両手で抱きつき、浅野が彼女の唇にチュッ! 一度顔を離すも再びチュッ!

 この後、新幹線ホームで帰る仲を送って名残を惜しむ浅野。周囲を気にせず抱き合う。

 とまあ、こうしたシーンが5枚の写真でバッチリ写っているのだ。

 すごいのは巻頭の写真。浅野と仲が、まるで記念写真を撮るかのように正面を向いて写っている。

 浅野は仲の肩に腕をまわし少し笑っている。とてもいい写真だ。これは2人も欲しがるのではないか。お見事フライデー!

 最後に気になった記事を書いておきたい。

 「週刊朝日」に吉本興業の中田カウスのインタビューが載っている。カウスがビートたけしと暴力団との本当の仲を話したとあるので期待して読んだが、まったくの期待外れだった。

 「週刊文春」でたけしがカウスにハメられて渡辺山口組五代目組長(当時)に会わされたと告白していたことについて、会わせたことは認めたが、偶然会ったので意図的ではないし、組長とは20年近く会っていないと話している。

 どちらの言い分が正しいのかはわからないが、全体がカウスの弁明で、勝手な言い分をそのまま載せただけのお粗末なインタビューである。

 吉本興業を牛耳っているといわれる怪しい芸人の「疑惑」に切り込まなければ、この男を出してくる意味がない。「朝日」よ、猛省を。

 「週刊ポスト」が東日本大震災の弔慰金(命の値段)に民と官で相当な開きがあると告発している。民間人は800万円で公務員は2660万円だそうである。なんたる格差。公務員には民間の大企業並みの見舞金や援護金が支払われ、それと別に市町村共済組合や関連公益団体から弔慰金が出るのだ。それらを合計すると、驚くほどの格差が出る。自分の命を落として中国人研修生20名を救った女川町の水産加工会社佐藤充専務にも、公的な補償は800万円なのだ。こんな官民格差があっていいはずがない。「ポスト」はいいところを指摘した。
(文=元木昌彦)

motokikinnei.jpg撮影/佃太平

●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。

【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか

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最終更新:2013/09/09 16:50
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