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日本のネクスト・ジョブスは誰だ?【1】

「Windows Phone」か、「新・週刊フジテレビ批評」か……IT業界における次なる風雲児とは?

【プレミアサイゾーより】

──ITの台頭と一般化は、20年余りで最も革新的な出来事だった。近年に限っても、スマートフォンとソーシャルメディアの爆発的普及に伴う変化は目覚ましい。この0世界で、次に革命を起こすのは誰か? 業界のウラ側まで知り尽くした賢者たちと、今後社会にインパクトを与えそうなサービスとその立役者を探る。

現在、世界で一番めまぐるしく進化している分野といえば、ITをおいてほかにない。2011年に急逝したアップル創業者のスティーブ・ジョブズや、世界最大のSNSであるフェイスブックを創ったマーク・ザッカーバーグを代表に、社会に大きなインパクトを与えるカリスマ的なイノベーターが群雄割拠するジャンルでもある。

 だが、かつては技術大国として世界に名を馳せた日本は、この流れにイマイチ乗れていない。iPodがウォークマンに取って代わり、国産携帯電話がガラケーと呼ばれるようになった今では、グローバルな影響力を持つ日本発の製品やサービスはほとんど皆無だとまでいわれている。日本のIT業界には、本当に革命家はいないのだろうか? そこで、日米のIT業界に精通し、アップルやグーグルのイノベーション精神を知るジャーナリストの林信行氏に、日本のIT業界の最新事情と、知られざる未来の革命家について聞いた。

「今後、社会的に強烈なインパクトを与えそうな技術といえば3Dの進化、それも平面じゃなくて立体の進化ですね。僕が今注目しているのは、原雄司さんという人がやっている『ケイズデザインラボ』をハブとした多分野の活動です。いわゆる3Dプリントというとフィギュアや建築物の模型などを想像しますが、彼らは本当に何でも立体造形してしまう。

 用途としては、例えば医療の世界では3Dプリントで人体を再現する技術がどんどん進んでいます。人間の臓器を3Dモデリングしたデータから臓器や胎児の精密模型を作ったりするんですが、この分野では日本は先進的ですよ。ロボット工学で有名な大阪大学の石黒浩教授や、神戸大学の杉本真樹先生といった方たちが第一人者なんですが、こうした動きを調べると、必ず同社の名前が出てきます。ほかにも名和晃平さんという若手アーティストとコラボレーションしてものすごく複雑な造形物を作ったりと、アートの分野への影響も強くなっていくはず。そのうち国宝級の文化財なんかはすべて3Dモデリングされて、データとして保存されるようになるでしょうね。個人的には、佐賀大学の中山功一教授らが研究している、『スフェロイド』という人体に移植可能な細胞を使って人工内臓や血管などを作る”バイオ・プリンティング技術”の進化も楽しみです」

 日本の3D技術によってディスプレーの中と外が他分野でつながれば、それは確かに大きな革新になりそうではある。また、林氏は国内の先進的なクリエイターたちの”中央離れ”についても指摘する。

「正直なところ、ここ最近東京で話題になっているようなIT企業はどこもビジネス主導的すぎて、イノベーションを生み出そうという気概を感じられるサービスや人物はほとんど見当たらないです。誰もがお金にこだわりすぎていて、成功したモデルのフォローばかり。ただ、国内でも地方のIT企業は面白くなってきているなという手応えがあります。iPhoneやiPadを活用して、現実の生活や労働の中にIT技術を浸透させようとする動きが活発になっているんですよ。そうしたイノベーティブな動きは、今のところまだビジネスとしては小規模かもしれませんが、海外で紹介した時の反応は大きく、将来の展開を考えると大きな希望が持てます」(林氏)

 変化のきっかけは、iPadをはじめとするタブレットデバイスの普及だ。国内でそれをいち早くビジネスに取り入れつつあるのが、関西をはじめとする地方のIT企業だという。

 例えば、大阪にあるベンチャー企業「デジタルファッション」は、iPad上でアパレルブランドのカタログを再現し、好きなコーディネートを3DCGで確認しながら探せるといったサービスを広めつつある。飲食店向けのITソリューションを開発し、iPadを使った低コストなオーダーシステムの特許を獲得した「ファインフーズ」も大阪が本拠地。ほかにも、フェイスブックに搭載できるショッピングカートアプリを開発して話題となった「アラタナ」が宮崎県で起業したりと、中央に固執しない若い才能も目立ち始めている。その土地の有力者などパトロン的なエンジェルの投資を受けやすいという要因もあるが、これまでITが存在していなかった領域へアプローチする発想は、Webサービスで一攫千金を狙う都心のIT企業のオフィスからは生まれづらいのかもしれない。

■タブレット端末の普及でまた新たな革命が起きる

 とはいえ、我々がイメージするITの現場は、まだまだWebが中心。PCやスマートフォンを使ったWebの分野で、革命的な技術やサービスを開発している人物はいないのだろうか? 情報通信サービスの最新動向に詳しいクロサカタツヤ氏は、こう語る。

「インターネット、およびWebという分野に関しては、80年代に活躍したレジェンド的な技術者たちの背中が大きすぎて、それを超える人物というのは……ちょっと難しい部分はありますね。”日本のインターネットの父”と呼ばれる村井純先生とか、分散コンピューティングの”TRONプロジェクト”を提唱した坂村健先生とか、世界的な有名人がたくさんいるので。あとは、当時の梁山泊的な場所だったアスキー創業者の西和彦さん、古川享さん【註:共にマイクロソフトの日本での展開を支え、パソコン文化を日本に呼び込んだ2人】もやっぱり別格で、世の中を変えた人だと思います。それまで一部の技術者のものだったコンピューターをダウンサイジングしてネットワークでつなげたという衝撃は、簡単に超えられないものがありますよ」

 確かに、それまでゼロだったものを1にするインパクトは大きい。そう考えると現在のWebの姿は、20年以上前にデザインされた原型から大きく変わってはいないとも言える。

「それを踏まえて、我々が今使っているWebの歴史を振り返ると、普及期に入ってからたかだか10年ちょっとしかない。さらに言えば、Webを実生活に活かしている日本人ってまだ人口の30%くらいだと思うんですよ。『楽天』の年間売り上げが5300億円でスゴイといっても、全国のデパートは6兆円とか売ってるわけで、まだまだそんな規模。その一方で、Webサービスの中でも目ぼしい分野は、すでにやり尽くされてしまった感もあります。グローバルな大手の寡占状態で、新規参入者がビッグビジネスを作るというのは、なかなか厳しいんじゃないかと。

 ただし、それは『PCとWeb』の組み合わせが主流だったこれまでの10年間の話です。”Webはスマホやタブレットで使うもの、PCなんてよくわからない”という若い世代がすでに登場していて、上にはもともとデジタルなものが苦手な高齢者層がいて、逆にPCが使えて当たり前という30~40代が特異的な世代になりつつある。その点、タブレット端末は、老人でも赤ちゃんでも使えるのが特徴。遠くない将来、一億人がタブレットを使う時代がやってきたとき、これまでのWebの前提が覆されて、いろいろリセットされる気がしています」(クロサカ氏)

 つまり、PCをベースとしたWebの世界は成熟しつつあるものの、ネットデバイスの主流がタブレットにスライドするときに、革命のチャンスがあるということか。

「今のPC中心のWebと、タブレット中心の新しいネットワークの架け橋になれる技術を開発できたら、その可能性は大きいでしょうね。OSなどの本質的な部分は難しくても、よりお茶の間的というか、例えばUI(ユーザーインターフェース)の分野でPCとタブレットをつなぐ技術なんかは狙い目だと思いますよ。そのとき誰が出てくるかはまだわかりませんが、そういう意味でタブレットも包括して家庭のIT機器のハブになりそうな『スマートテレビ』の動向には注目しています」(同)

 ハードウェアの進化がネットの形を変えていく以上、「ものづくり日本」の底力にも期待したいところだが、今の国内メーカーにグローバル市場で戦える力はあるのだろうか?

「個人的には、日本には工業デザインや建築、アートなどの分野で、優れた才能を持つ個人がたくさんいると思っています。ここに新しいIT技術を組み合わせることで、革新を起こす余地は十分あるはず。ただ、その個性を活かせる組織なり企業があまりに少ないんですよ。大手の家電メーカーは、CEATEC(毎年日本で開かれる映像・情報・通信関連の国際展示会)やCES(毎年1月に米ラスベガスで開催される家電見本市)といった、決まったタイミングのイベントに追われすぎていて余裕がない。これは日本企業の体質というか、狭い業界内でのつまらない競争に走ってしまうことの影響が大きいです。仕様書のスペックを満たすことばかりに躍起になるから、小手先のサービスの作り込みはうまいけど革新が生まれない。過去の成功体験のせいで、ハードウェアに力を注ぎすぎる傾向があるのも難点です。iPhoneが世界中に受け入れられた理由のひとつがiOSの手触りだったように、UIをはじめとするソフトウェアの研究を深めたほうがいい。本来、それは日本人の得意分野だったはずなんです」(林氏)

「ガラケーとかiモードだって今では批判されがちですけど、UIとして純粋に評価すると、決して使いづらくはない。むしろよくできてるなぁ、と感心する部分も多いんですが、日本のものづくりって伝統的にやりすぎというか、極めすぎる方向に走っちゃうところがあるんです。ハイブリッドカーだって、日本の自動車開発の精髄みたいに言われてますけど、もともとは水素エンジンとか電気自動車までの”つなぎ”の技術だったはずなのに、頑張りすぎてメインになってしまった(笑)。ガラケーの問題点もそこだったと思うので、次はうまくやってほしいです」(クロサカ氏)

 ガラケーの中でも極め付きにわかりやすいUIにこだわった富士通「らくらくホン」のスマートフォン版を、海外の高齢者向けに世界展開しようという動きが注目されつつある。ほかにも日本独特の技術の中に、グローバルな競争力がまだまだ眠っている可能性はありそうだ。

「日本において大企業の硬直化やイノベーションシップの欠落はよく指摘されますが、それを打ち破って個性を発揮できる人材、スタンドプレイができる異端児って意外といると思うんです。スマホ業界でいえば、11年のKDDIがあれだけ大掛かりにAndroidをプッシュしている時期に、あえて日本独自の『Windows Phone』をプロデュースした佐藤毅さんなんかは、大企業にいながら個性的な仕事をしていますよね。大手メディアの中にも『新・週刊フジテレビ批評』のプロデューサー・福原伸治さんみたいに、既存メディアとWebの壁をなくそうと頑張ってる人がいたり、AIST(産業技術総合研究所)の江渡浩一郎さんのように、世界的に評価されているメディアアーティストとしての知見を活かしつつ、ITによるコラボレーションの先端的な研究を手がける人もいる。Webやソーシャルを通じて人々がつながっていく中で、こういう人たちの仕事が少しずつ世の中を変えていっているんじゃないでしょうか」(同)

 ジョブズがアップルを創ってから36年、ザッカーバーグがフェイスブックを創ってから8年が経つ。ネットの常識が変わり始めたとき、次世代の革命家は姿を現すかもしれない。
(文/呉 琢磨)

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最終更新:2012/02/20 21:30

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